表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1226/1373

92 『インベンタータートル』

 サツキたち士衛組の仲間になったことで、ヒナは幼馴染みであるチナミとの再会も果たした。

 だが、ヒナにとってのつながりはそれだけではなかった。

 亀の姿をした二足歩行の存在が口を開く。


「おれは地質学も研究してた。だから天文学者の浮橋教授とも知り合いだったんだが、こうなったらおれも地動説証明に力を貸すぜ」


 ダンディーな声だった。

 なにも知らないヒナは大きな衝撃を受けていた。


「ひぃええぇ! カ、カ、カメがしゃべったああああああー!」


 こんなに驚いたことはそうそうない。尻もちまでついてしまった。


「しし、しかも、お父さんと知り合い? カメと? えぇぇぇえ?」


 サツキは頭を押さえた。


「確かに、フウサイは先生がしゃべってもノーリアクションだったけど、普通はこういう反応するよな」

「そうですね」


 あはは……、とクコも上品な顔で苦笑いを浮かべる。

 こんな姿になってしまった経緯をサツキが説明してくれる。

 かいつまんで言えば、人助けをした折に呪い型の魔法が玄内に対して発動してしまい、それが姿を変える魔法だったということだ。

 一応、この魔法世界において起こり得ないことじゃない。ヒナはふぅんと理解を示した。


「まあ、魔法だったらなんでもあり得るしね」


 だが、この姿は奇妙奇天烈だ。目をぱちぱちさせながら全身を見て、


「それに、お父さんと知り合いだったなんてびっくりよ」

「あいつも言っていたが、おれの発明した望遠鏡を持ってるそうだな?」

「お父さんが天才発明家からもらったって言ってたけど、このカメだったのーっ!?」


 天才発明家。

 それは、『晴和の発明王』と呼ばれた異能の人。

 あまりにもたくさんの異名を持つため、『万能の天才』とさえ称された。

 名前は(げん)(ない)

 何人に聞いて回っても『王都』で玄内を詳しく知る人はなく、幻のような存在だと思っていた。

 それがサツキの仲間だとわかると、ますますこの数奇な縁に驚かざるを得ない。


「先生、もしくは玄内さんと呼びなさい」


 キッとルカに鋭くにらまれて、ヒナはたじろぐ。年上だからか、背が高いからか、ちょっと怖い。腰に手をやり、胸を張って、冷静を取り繕った。


「わ、わかったわよ。で、あんたはだれ? ほかのみんなの紹介もまだじゃない?」

「私はルカよ」


 ルカがヒナにも《(ばん)(そう)(こう)》を貼ってくれた。ただし、貼り方がサツキのときのように優しくはない。ぐいぐい頬に押しつけられる。


「痛っ。で、でも、ありがとう。それで、あんたがクコだっけ?」

「はい。クコです」

「オレはバンジョー。料理バカって覚えてくれ」

「サツキ殿に仕える忍び、フウサイでござる」

「ナズナ、です」


 クコ、バンジョー、フウサイ、ナズナも順番に自己紹介した。チナミは知り合いだからいいとして、これで全員の紹介が終わった。


「オッケー。全員覚えたわ」


 ちなみに、浦浜ではまだ(いざな)()(みなと)(あお)()()()が仲間に加わっていない。二人とはこのときまでにニアミスしていたヒナだったが、それぞれ、ミナトとはガンダス共和国ゆきの船の中で出会い、リラとはタルサ共和国の港町マリノフで出会った。しかしこれはまた別の話。

 さて。

 ヒナは士衛組に加入し挨拶を済ませると、大急ぎで船のチケットを取りに行って、運良くサツキたちと同じ便の予約ができた。

 そして翌日、浦浜を出航したのだった。




 その後、ヒナはサツキと玄内と共に研究に励んだ。

 異世界人の知識を持つサツキと、天才と呼ばれる玄内の知恵。

 二人がいたおかげで、これまで進まなかった研究が進展してゆく。

 歯車が噛み合ったように動き出し、いくつもの冒険を士衛組のみんなと乗り越えて。

 再び……。

 イストリア王国の首都、『()()(みやこ)』マノーラへと舞い戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ