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88 『サモンストーリー』

 時は(そう)(れき)一五七二年九月十一日。

 夜。

 サツキとヒナはロマンスジーノ城の屋上にいた。

 ヒナはサツキの旅について、聞いていた内容を振り返る。




 現代日本を生きていた少年・(しろ)()(さつき)は、気がつくと異世界にいた。

 (そう)(れき)一五七二年四月一日に、一つ年上の少女・(あお)()()()により召喚されたということだ。

 クコは一国の王女であり、彼女の国であるアルブレア王国はブロッキニオ大臣という悪の大臣に乗っ取られようとしているらしい。

 両親が体調を崩したところを大臣に付け入られたそうで、両親は世間には内密に幽閉されているのだ。

 だからクコが、大臣の勢力と戦う必要がある。

 そのために、クコは仲間を集めなければならなくなった。

 城を飛び出し仲間を集める旅を始めることと、異世界から勇者を召喚すること。それを家庭教師の(ふじ)()(がわ)(はか)()に助言された。

 しかし、勇者の召喚はどこでもだれにでも簡単にできるものではない。

 まず、召喚魔法はその存在すら一般には知られておらず、古代の文献と研究によって藤馬川博士が編み出したのだが、召喚するには場所を選ばなければならない。

 それはまさしく、ヒナが『王都の奥座敷』()()()(がわ)温泉街で読んだ書物と同じだった。トチカ文明の研究を物語として記した小説『(とち)()物語』に、異世界人の存在が書かれていたのである。

 作者は(あし)()(しょう)()

 藤馬川博士は葦家章治に憧れていた作家であり、ヒナの親友・チナミが好きなキャラクター『ぺんぎんぼうや』の作者でもある。

 その影響は彼の生き方にも現れていて、作家と研究者の二足のわらじになったのも、葦家章治を見習ってのことだと聞いている。

 しかし、ヒナはこの『栃花物語』に辿り着くまで大変だった。

 なんといっても、葦家章治の記したそれは、あくまでエンタメ作品だったからだ。彼はこれまでの文学作品と違ったエンタメ作家の第一人者で、『作家の神様』と呼ばれた人物である。

 そんな彼が書いた小説は、研究資料とは見なされなかった。

 だからこそ、権力者に葬り去られることはなかったのかもしれない。ヒナがこうして地動説証明のために苦難の旅をすることになったのも、地動説は宗教の教えを否定するものであり、その常識の変化は権力者たちの社会構造を壊す危険があり、既得権益に足を踏み入れているからだ。真実を含ませて物語に残すことは、葦家章治という人なりの戦略であり賭けであったのだろう。

 半分真実で半分創作。

 それは、晴和王国の神話もそうだとヒナの父が話してくれたこともあったし、これを読み解けるのは葦家章治に憧れた藤馬川博士ゆえのことだった。

 世間にほとんど知られなかったそんな小説も、葦家章治ファンの藤馬川博士は読み込み研究していたのだ。

 それによると。

 肝心の勇者召喚の条件は、魔法の力が高まる世界樹の根元で魔法陣を描くことだった。

 この世界に魔法をもたらしたとされる世界樹は、晴和王国にある。

 いくつもの国を旅して、アルブレア王国から世界樹を目指した旅をしたクコは、ついに勇者召喚に成功する。

 その勇者がサツキであり、サツキはクコと共に仲間集めをしながらアルブレア王国を目指す旅を始めた。

 旅の中で、サツキはヒナに出会った。

 サツキが結成した士衛組にヒナが加入し、今ではアルブレア王国の一歩手前のイストリア王国にまでやってきた。

 だが、ここではヒナの父の裁判がある。

 そして現在、裁判を前日に控えていたのである。

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