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61 『フォーチュンテリング』

 ヒナは東海道を歩いた。

 空が暗くなってくると、天体望遠鏡を取り出して月の観察を始める。

 スケッチができると、


「……よし」


 とつぶやき、先へと歩く。


(かわ)(ぐら)大師にも行っておまいりしたし、大丈夫。信じて頑張るだけだ」


 この日、ヒナは(かわ)(ぐら)という場所に立ち寄った。

 そこには立派なお寺があり、全国から厄除けのお参りに訪れる人たちで賑わっている。

 初めて見たとき、ヒナは驚いた。


「でっかい……! なんか御利益ありそう」


 観光で来たわけではないから、丁寧にお参りだけすることにした。


「前に(たて)(うま)()()()(ひめ)(じん)(じや)に行ったら、サツキに会えたんだもん。またなにかあるかもだよね」


 その神社は縁結びの神様だった。

 だから人との縁を結んでくれたのかもしれないし、ただの偶然かもしれない。でも、あれ以来ちょっとずつなにかが動き出してる気がする。

 やるべきことはやってきた。

 それでも届かないところに行くためになら、神頼みだってありだと思った。川蔵大師は仏様だが。

 お参りが済むと、またお守りを買う気になった。

 直感で選び、お寺を出ていこうとするが。

 ふと、おみくじが目に入った。


「おみくじか……。子供の頃にやって以来かも。せっかくだし、やってみようかな」


 ここのおみくじは、筒状の入れ物の中に細い木の棒が入っており、そこに番号が書かれている。

 数字は1番から100番まであった。


 ――ちょっとドキドキする。


 むしろ、ちょっぴりウキウキするヒナであった。


「よし。これ」


 選んだ。


「えーっと……14番!」


 数字の振られた棚があり、そこから一枚取る形式になっている。

 一枚取った。


「どれどれ」


 14番。


「末吉……」


 口先をとがらせる。


「へ、へえ……。まあ、全部大吉のおみくじよりよっぽど目安になりそうね。大事なのは書いてあることよ」


 ぽつぽつ声に出して読み始める。


「誠に苦労多し。あらゆる謀を企て、わやにしようとする者共ありまするぞ。鉱脈を探り当てんため、鉱山を探し鉱石を探りなされ。急ぐなかれ。拙速するでないぞよ。求める宝石、地中深くにありますのじゃ。忍苦して時を待つべし」


 ヒナは顔を引きつらせる。


「んーと、当たってるっぽいわね」


 続きは……と読む。


「願望……始め大いに悪しかれど末は良し。末が良い。だから末吉ってことか。終わりよければすべてよしよね」


 勝手に納得してみる。


「気になるのは……交友? ……誤解を受けども焦らず伝えよ。ご、誤解……確かに」


 と、サツキのことを思い浮かべる。

 あれだけツンツンして素直になれないのだから誤解もされていることだろう。やはり真実は伝える必要がありそうだ。


「他には、勝負! これは……末に勝つべし。うんうん、悪くない気がする」


 勝負の隣の行を見て、


「ん? 訴訟? そんなのもあるのね。長引くも利あり。利? 長引くって、裁判が? どういうこと?」


 首をひねるが、答えなど出そうもない。


「あとは……待ち人……来るの遅し。な、なるほど。浦浜へ行くのは急がなくてもいいのかもね」


 内容全体を見ても、急いでいいことがあるとは書いていない。焦らないことのほうが大切みたいだ。

 チラと周囲を見て、今度はチラとおみくじに目を落とす。


「ん……」


 見ている項目は、恋愛である。

 別に周囲の人に見られているわけでもないし見られてどうこうなるものでもないが、なぜかヒナはその項目だけはコソコソ見ていた。


 ――恋愛……相互に心開きて愛を受くる。心を開けって……交友のほうでも、伝えよってあったし……。


「って! なんであいつのこと考えてんのよ!」


 赤面しながら叫んで、周囲の注目を集めると、またコソコソと縮こまって逃げるように木の近くまで歩いてゆく。


「どこに結ぼう……」


 木を見て、考え直す。


「やっぱりやめた。普通おみくじは木に結ぶけど、これは教訓に持っておこうかな」

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