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45 『リメンバーネーム』

 尾行を開始したヒナだったが。

 しばらくして。

 またクコが突然振り返った。


「あ!」


 ――しまった!


 ヒナは木に隠れるが、クコは構わず話しかける。


「やっぱり! あなたはさっきの神社でお会いした方ですね。なにか御用でしょうか」


 気さくというか、分け隔てないというか、なんだかやりにくい相手だ。


 ――ここまでハッキリ見られてしゃべりかけられたら仕方ないわね。


 諦めて、ヒナは二人の前に出ていった。


「べ、別に。勘違いしないでよね! たまたま行く方角がいっしょだっただけよ。そ、そうよ。(そう)(きゆう)(てい)(えん)(てん)(ぼう)(だい)に来たかっただけ!」

「そうでしたか。サツキ様を見ておられたようなので」

「サツキ……?」


 ――やっぱり、こいつの名前はサツキっていうのね!


 じぃっとサツキを観察する。


 ――名前も異世界人っぽさは感じない。見た目も普通。いや、なんかちょっと普通の人とは違う気もするんだけど……。


 すると、クコはにっこり微笑んでサツキに言った。


「ふふ。サツキ様。気に入られてしまったようですね」


 ヒナは予想外の言葉に仰天した。


「ハァ!? ななな、なんでそうなるのよ」


 顔が少し熱い。もしかしたらクコに変な誤解をされたかもしれない。そんなの冗談じゃない。

 ビシッと。

 サツキに人差し指を向けた。


「あんたなんて大っ嫌いよ!」

「まあ」


 クコは驚いて目を丸くした。

 それに比べて、当のサツキは無表情にぼんやり突っ立っているだけである。元来無表情なたちなのか、なんの変化も見せない。


 ――うぅ! なんか反応しなさいよ! くぅっ!


 ヒナはこれ以上なんと言っていいかわからず、急いできびすを返す。

 だが、振り返った先には木があった。

 バン、と木の幹に顔をぶつけた。

 目には涙が溜まる。


「ふんっ、覚えてなさいっ!」


 返す言葉も見つからず、捨てゼリフを吐いて逃げ出す。


 ――もう、なにやってんのよあたし! 本当は、もっといろいろしゃべりたいのに! 嫌いとか、思ってもないこと言っちゃうし! 木にぶつかって痛いし! 覚えてなさい、サツキ!




 バッチリ覚えた名前――サツキ。

 帽子をかぶった少年。

 彼のことが頭から離れないまま、ヒナは()()()(がわ)(おん)(せん)(じん)(じや)を訪れた。


 ――こっちもお参りしておこうかな。


 さっきの(たて)(うま)()()()(ひめ)(じん)(じや)は、祠のような社殿があるのみの小さな神社だった。

 しかし紀努衣川温泉神社は大きな神社で、鳥居の先を彩る桜が行燈と提灯の光に照らされて華やかだ。

 さらに、隣には()()()(がわ)()(こく)(じん)(じや)もある。

 お守りなどが売っている売店もあり、順番にお参りをして、お守りも買ってみた。


「今日は久しぶりにたくさんお参りしちゃった。だからついお守りも買っちゃったわ」


 売店などもなかった楯馬紀努衣姫神社のためか、三社すべてのお守りも売っていた。

 観光案内所でも御朱印などがもらえるそうで、ここの売店では最近になって楯馬紀努衣姫神社のお守りも扱うようになったそうだ。

 加えて、三社すべてを巡った人用なのか、三社の御利益が集まったお守りもあり、せっかくだからヒナはそのお守りにした。

 持っていた紐でお守りを吊るし、首から下げて服の内側にしまう。


「さて。ロープウェイに乗って、(そう)(きゆう)(てい)(えん)(てん)(ぼう)(だい)へGO」




 展望台の前まで来てから、階段を見やる。


「この上にも、神社があるんだっけ? 紀努衣川温泉神社の……ここまで来たんだし、そっちの社殿も行ってみよう」


 そう思って、ヒナは階段をのぼった。

 千本鳥居をくぐりながら、いつまでも終わらないようなたくさんの鳥居の中を歩き続け、頂上にたどり着く。

 二匹の龍が左右から玉を持ち、門になっている。

 そこをくぐって、祈った。


 ――地動説を証明して、お父さんを守れますように。


 この日最後の祈りをして。

 ヒナは千本鳥居を抜けて降りて行った。

 蒼穹庭園展望台まで戻ってくる。


「ここからなら星もよく見えそう……!」


 天体望遠鏡を取り出して、天体観測を始める。

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