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39 『アートアンドオブジェ』

『光の都』(しょう)()(くに)

 ここには魔法世界を魔法世界たらしめる魔法樹がある。

 魔法樹――またの名を世界樹。

 この天にも届くと言われる大樹があるおかげで、世界中の人々が魔力の恩恵にあずかり、中でも一割の人間が特別な魔法を使うことができる。

 また、世界樹の影響なのかは不明だが、花のたくさん咲く国であるため、照花ノ国は『(せい)()(くに)』とも呼ばれた。

 さらに、照花ノ国最大の都市にして、北関東最大の都市である(こう)(ほく)(みや)は、同じく花が多いため『()()(みやこ)』として知られている。

 そんな照花ノ国だが、世界樹をこの世界の最終地として見たとき、『世界の最果て』と言う人もいた。




 故郷の(りく)(さわ)ノ村を出て三日後。

 ヒナは照花ノ国に足を踏み入れた。

 最初に目指したのは、世界樹である。

 世界樹から北東に行けば、トチカ文明に関する文献や壁画が残る『(おう)()(おく)()(しき)()()()(がわ)温泉街に行けるからだ。

 しかしながら。


「実際、世界樹にはなにもなかったわね」


 近くまで来て、付近の村に訪れた際にも、そこでなにかがあるわけではなかった。

 世界樹の近くには強いエネルギーがあるとも聞くが、だからといってヒナになにか影響があるわけでもなく。

 世界樹に関する文献を読ませてもらったり、世界樹関係の話を聞いて回っても、めぼしい情報は得られない。

 数日とどまったところで、研究は進展しなかったのだった。


「世界樹ってこの世界の始まりと共にあったのかと思って、古代文明についても知れるかと期待したけど、魔法に関することばっかりだったわね。こと古代文明においては、世界樹よりもトチカ文明が鍵を握っている……?」


 目を閉じ、腕組みして考えていたが。

 パチッと目を開く。


「よし、次。これ以上世界樹のこと考えても仕方ない。むしろ次が本命。行くわよ、『王都の奥座敷』紀努衣川温泉街」


 かくして。

 紀努衣川温泉街に辿り着いたのは、さらに三日後。

 ヒナはそこでトチカ文明の調査を始めた。




 結論から言えば。

 トチカ文明の調査は難航したが、得られるものもあった。

 フィールドワークとして、最初にトチカ文明の壁画を見に行った。

 不思議な壁画で、晴和王国だけじゃなく、世界中の文明を示した絵も残っていた。

 世界樹の神話もあるようで、それが壁画になったのか、それとも歴史を壁画として残したのか、非常に興味深いものだった。


「壁画にオブジェ。しかも晴和王国だけじゃない。世界中の文明に関するものと思われる」


 どれだけ研究しても足りない。

 このトチカ文明の研究者が未だ多くいて、彼らが未だ真実を紐解くのに苦戦しているのがよくわかる。

 謎めいた文明なのだ。


「しかも、厄介なのが遊び心ね」


 トチカ文明には、遊び心がふんだんに盛り込まれている。


「トリックアートみたいに、見方によっていろいろ変化がある。晴和王国の人たちが平和主義で楽しいことが大好きで遊び心に溢れてるせいって話だけど、おかげでわからないことが増える一方だわ」


 ヒナは口先をとがらせて。


「まあ、古代の晴和王国のそういう性質は今の晴和王国でも見られるわ。新戦国時代の前にあった泰平の時代、晴和王国の文明の花開き方は不思議だったっていうし、晴和人らしいといえばそうなんだけど……研究のし甲斐、ありすぎでしょ……」


 以前、『王都』の文房具屋で手に入れた《速記鉛筆》のおかげで、ヒナはたくさんの情報を書き出すこともできた。

 しかし、星という一点について、まだまだなにもつかめていないに等しい。


「一応……想像だけど、スターナビゲーションとか海洋民族とか、晴和王国はやっぱりそれにも通じていたっぽいように思うし、もしかしたら古代晴和人がその海洋民族だったのかな? メイルパルト王国のピラミッドとか、星の巡りを知らないとできないデザインになってるって話だし、古代文明が天文学に長じていたことは確かみたいね」


 もっと文献が残っていればよかったが、生憎、そんな都合良く知ることはできない。


「古代人とかに会えたらなぁ。いろいろ聞けるのに」

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