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34 『ヴァリアスネーム』

 ここ『王都』にはお店がたくさんあり、通りにはたくさんの人がいる。

 話を聞いて回るのには都合がよかった。


「こんにちは。あたし、人を探してるんです」

「ああ、人探しか。どんな人だい?」


 店先にいたおじさんは、この店の店主らしい。


「それが、『(せい)()(はつ)(めい)(おう)』ってあだ名の人でして」

「聞いたことはあるが、おれみたいなただの八百屋にはわからないな」

「そうですか。ありがとうございました」

「悪いね、力になれなくて。またおいで」


 また通りをちょっとだけ歩いて、今度は別の店に入る。

 そこは骨董品のお店だった。

 同じように尋ねると。


「名前はわかる?」

「名前は知らないんですけど、あだ名が『(せい)()(はつ)(めい)(おう)』です」

「なぁんだ」


 知っていそうな反応。

 期待してヒナは問う。


「知ってるんですか?」

「その人は、『(おう)()()()()(てん)(のう)』だよ」

「えぇっと、聞いたことあったような……」

「王都を守護する四人の才人ね。ほら、『王都見廻組』のヒロキさんとか」

「あっ!」


 その名前は記憶にあった。


「『王都の番人』(おお)(うつ)()(ひろ)()さん!?」

「そうそう。あとは、リョウメイさんと……だれだったかな。残り二人のどっちかがそうだったんだよ」

「えー。覚えてないんですか?」


 口先を尖らせるヒナに、おじさんは笑った。


「ごめんよ。『(おう)()()()()(てん)(のう)』は有名だから、ほかを当たればすぐだよ」

「わかりました。ありがとうございました」

「見つかるといいね」


 ヒナは店を出て、次の店に入る。

 そこでも聞いてみると。


「『(せい)()(はつ)(めい)(おう)』?」

「はい。『(おう)()()()()(てん)(のう)』でもあるようです」

「その人、『魔法学の大家』って言われてなかった?」

「……さ、さあ?」

「あれ? 違ったかな? まあ、魔法に詳しいすごい人って話だよ」

「はあ……」


 判然としない回答を得て、また次に。

 さらに今度は。

 おばさんがおかしそうに、


「なになに? 『(せい)()(はつ)(めい)(おう)』だって? そりゃあ、『総合芸術家』って話を聞いたことあるわよ」

「芸術家?」

「世界を旅して回ってこともあって、なんとかかんとかって偉い人のパーティーを演出したとか」

「それじゃあわからないよぉ」

「あっははは。実はアタシもよくはわかってないの」


 ばしん、と背中を叩かれて、ヒナは前につんのめった。

 結局、おばさんの世間話が始まって詳しいことはなにもわからずじまいだった。

 通りを歩きながら、ヒナはぼやく。


「もう、だれもなにもわかってないじゃない。ちょっと休憩」


 ちょうど茶屋があった。

 茶屋の店先の長椅子に腰を下ろして、お茶とお団子をいただく。


「いただきます」


 はむ、と一口食べて頬を抑える。


「おいしい」

「でしょ? ここのよもぎ団子は絶品なんだから」


 隣に座っていた少女二人組のうちポニーテールのほうが親しげにそう言った。


「そうなんですか」


 少女は十五、六歳ほど。

 二人共同い年くらいに見える。


「このへんの子じゃないのかな?」


 髪の短い少女に聞かれて、ヒナはうなずく。


「はい。ちょっと人探しをしてて」

「どんな人?」


 ポニーテールの少女が屈託ない笑顔なので、ヒナは自然と話していた。


「『(せい)()(はつ)(めい)(おう)』って言われている人です」

「あ、有名人」

「みたいですね」

「でも、なんでそんな歩く伝説みたいな人探してるわけ?」

「歩く伝説ぅ!?」


 またとんでもない呼ばれ方だ。


「まさか、『万能の天才』を知らないの?」

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