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30 『ライブラリーリサーチ』

 (みょう)()図書館。

 ここに保管されている新聞は二十種類ほどある。


 ――……ふーん。やっぱり晴和王国ではそんなに盛んに報道されていないみたいね。海外のこととして関心が薄いのもある。でも、地動説を唱えたのが晴和人のお父さんだから、記事にもなってる。


 それによると。


 ――こっちは、お父さんが地動説を唱えたことで、マノーラではまた異端審問が行われるかもしれない、としか情報もなくて……。こっちは、浮橋教授は近年ずっと別の研究をしており、最近も異なる分野での研究が続いている。そのため地動説を今になって持ち出したことに、どんな意味があるのか。浮橋教授の声明がない現在、我らが晴和王国の天才科学者である彼を見守るしかない。……そっか、それくらいか。でも、悪意が絡んでない。あるのは、こっちか。


 イストリア王国から刊行された新聞ほどではないにしても、悪意ある印象操作がある新聞は数社。

 維新を叫んで失敗した、(ちょう)(はん)ノ国。

 これと協力関係にあった()(しま)ノ国。

 その他。


「論点をずらしたり、人権に絡めたり、やり方はあっちの新聞といっしょね」


 晴和王国では、二百年以上の平和な時代を終わらせた維新運動の影に、長斑ノ国を武器や資金の支援をした国があった。それがアルブレア王国である。

 しかしアルブレア王国も一枚岩ではなく、ある大臣らの勢力だという噂をヒナは聞いていた。

 実際のところはわからないが、最近も国王は体調を崩しているようで、国内の勢力図も変化し始めているという話もある。

 そもそも、アルブレア王国はここ何代かは晴和王国と友好的で、現国王の祖父が晴和人。彼が王家に加わってからはアルブレア王国による植民地支配もなくなっていったという。

 しかも、現国王は晴和王国とは特に友好的で、現王妃までも晴和人なのだ。

 そんな国王派が晴和王国の平和な時代を壊す活動を裏でしていたとは考えにくい。


 ――今もアルブレア王国から支援を受けてるのかしら……? て、そうに決まってるわよね。今は新戦国時代、それぞれが天下統一を目指してる。支援をして長斑ノ国か南島ノ国を勝たせれば、晴和王国がそっくりそのまま手に入るんだから。


 だからこそ、こんな記事を書くのだ。

 アサヒを非難して、晴和王国まで非難する……そんな勢力と同じやり方をしているのだ。

 国家を乗っ取りとき、必ず内側からの攻略が要る。

 それを長斑ノ国の志士たちはしていたが、諸外国との調和を目指した幕府を、


「外国にへつらい、自国を弱らせる。それを賊と呼ぶ」


 などと、中でも指導者の一人は批判したものである。

 自分たち長斑ノ国がしていたことを幕府がしていることだと印象操作し、イメージをすり替えた。

 近年の黎之国の周囲でよく使われる手だ。

 他者から作物や文化を盗み、相手が反論したところで「盗っ人」と呼ぶ。あとは何度も相手を非難し続ける。


 ――王家の手前、表立って植民地支配ができなくなった今、アルブレア王国内にいる一部勢力は、内側からの侵略を狙っている。こいつらはイストリア王国のマノーラに根を張る宗教側とつながっている。晴和王国中を旅するつもりだったけど、長斑ノ国と南島ノ国は避けるのが無難ね。他にも調略の手は伸びている可能性もあるし、注意して回らないと。


 新聞を畳む。


「その前に、家に帰ろう。一度帰って、裁判がいつ始まるか様子を見ながら、晴和王国を回って天体観測しつつ研究もして、情報を集める」


 翌日、ヒナは列車に乗った。

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