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29 『ノスタルジックホームランド』

 (せい)()(おう)(こく)に到着した。

 (かい)()(くに)(みょう)()(こう)

 賑やかな街に降り立ち、大きく息を吸い込んだ。


「すぅー」


 そして、吐く。


「はあーっ」


 ヒナの口元が柔らかくなる。


「懐かしい匂い。晴和王国の匂いだ」

「わたしは晴和王国は初めて。なんだか良いところだね。わたし、もう好きになったよ」


 ポレットは久しぶりの陸地に喜んでいるのか、界津ノ国が気に入ったのか、ご機嫌だった。


「晴和王国は良いところだよ。旅行、楽しんでね」

「うん。ヒナ、ありがとう」

「こちらこそ。ありがとう、ポレット」


 さようなら、と手を振るポレットと彼女の両親に手を振り返し、ヒナは街に繰り出した。

 歩き出してすぐ、ヒナは笑った。


「ふふっ」


 理由は単純だった。


 ――晴和王国は、今の新戦国時代が始まるまでは平和で明るかったって言うけど、界津ノ国は今もみんな明るくて笑顔が絶えないよ。すごいなあ。


 さっそく、声をかけられたたこ焼き屋でたこ焼きを一舟買った。

 舟の形をした容器に入れられるからそうした単位になる。

 店主のおじさんとしゃべりながらたこ焼きを食べていると、晴和王国がヒナの思っている以上に平和なことに驚く。


 ――新戦国時代なんて言うけど、さすがに晴和王国はちょっと特殊なのね。海外では侵略者による殺戮は当たり前なのに、晴和王国は皆殺しする文化はずっとなかった。ここが不可侵領域の側だからってだけじゃなく、この街の人が陽気で楽しい人たちってだけじゃなく、絶妙な駆け引きで領土争いが展開されているらしいわね。


()()(らく)西(せい)(みや)が隣にある。

 この『古都』は不可侵領域であり、晴和王国の二つの宮の片割れであり、国王の両親すなわち上皇が住まう地域となっている。

 二つの宮は不可侵領域だから各国の武将は手出しできず、平和が約束された地とも言えるのだが、その他の地域も特段荒れて治安が悪いということもないのが、晴和王国の不思議なところだった。

 昔、ヒナが晴和王国にいた頃から命の心配をすることもなく過ごせたのだから、今さらかもしれない。

 ただ、訳ありで飛び出したイストリア王国のことがあったため、平和な晴和王国を不思議な感覚で客観的に見られたとも言える。


「おじさん、すっごく美味しかったです。ごちそうさまでした」

「また来てな」


 はつらつとしたおじさんに見送られ、ヒナは図書館に向かった。

 まず、新聞は見ておきたい。

 地動説について、晴和王国ではどのような報道がされているのか。

 妙土ほどの場所には、いくつもの新聞があるはずだと思った。

 探してみれば、すぐにたくさんの新聞を見ることができた。

 図書館には日々の新聞が保管されているし、種類も豊富にあるのだ。


「ここが(みょう)()図書館……。ちょっとマノーラの神殿みたいね。まあ、これもなにかの縁か」


 建築様式も古代マノーラのものらしく、偉容のある外観だった。

 最近までマノーラにいたヒナにとってはなじみのある雰囲気だが、最初に訪れる場所にしてはなんだかできすぎているような気がしてくる。

 むろん、そこにはだれの作為もないことは明らかだ。

 新聞をたくさん借りて机に積み重ね、一つずつ調べてゆく。

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