295 『レビューミーティング』
アシュリーと再会したサツキは、彼女に心配されつつも、無事で帰ったことを安心させることができた。
「大丈夫?」
と聞かれて、サツキは平然とうなずく。
「はい。この通り」
困ったように苦笑して、
「マントで見えないよ。怪我はしてない?」
お姉さん然と問いを重ねる。
「最低限の回復もしてるので」
「それって、まだまだ安静にしてないといけないんじゃないのかな」
これには、持ち前の観察力でだれよりサツキのダメージに気づいているチナミが言う。
「そうですね。本当は歩かせたくもありません」
「大げさだな」
「じー……」
チナミに無言でじーっと見られると、サツキも弱い。
「もう無理はしないよ。ここからはマノーラ騎士団の手伝いでたいして身体も動かさないし、チナミもついているしな」
「はい」
それには即答するチナミだった。
「みんなにも心配かけてたんだね。もう、サツキくん。お手伝いならわたしもやるし、無茶はしないでよ?」
「協力までしてもらって、すみません」
アシュリーはまた苦笑いを浮かべて、
――謝られるより、ありがとうって言われたいけど、とにかく、サツキくんがこうして笑っていられて、無事でいられて、本当によかった。
サツキとチナミとアシュリーがそうやって話している横では、クコがスモモにお礼を述べていた。
「今回は本当にありがとうございました。なんとお礼をしていいのか」
「気にしないでいいよ。でも、もしなにかしたいっていうなら仲良くしてくれると嬉しいな」
「もちろんです!」
「リラちゃんはトウリくんとお手紙のやり取りしてるみたいだし、クコちゃんはわたしとペンフレンドになっちゃう?」
「はい! ぜひ」
スモモはもう話すこともなくなったのか、最後にサツキに言った。
「そうだ。サツキくん。鷹不二氏の言葉を告げておくよ。わたしたち鷹不二氏は、これからの士衛組の戦いへの協力は惜しまない。なんでも言ってね。わたし個人としては士衛組に見返りなんて求めない。ただ、鷹不二氏の全員がそうじゃない。お兄ちゃんやひーさん、それにミツキくんなんかは、打算もあると思う。悪いようにはしないからそこは安心していいけど、一応、気をつけてね」
「はい。ご忠告、ありがとうございます」
少し真面目な顔をしたかと思うと、スモモはまたニコッと笑って手を振った。
「またね」
マノーラ騎士団のオリンピオ騎士団長と新人隊士のエルメーテ、コロッセオの魔法戦士のシンジに兄を探す少女・アシュリーの四人と共に、士衛組とルーチェはこの日の戦いの事後処理に当たっていた。
そこで最初にするのは、マノーラ騎士団の基地へと向かいながら、敵と味方を見つけ次第合流して基地へと連れて行くことである。
そんな中、移動を開始して十分もしないうちに、玄内と出会えた。
玄内といっしょにいたのは、ルカとマノーラ騎士団の数人。
ルカはサツキを見つけると、一目散に駆けつけた。
「サツキ、勝ったんですってね。おめでとう。普通に歩けている、とは言い難いわね。大丈夫なの?」
医者を志すルカには、一発で見破られてしまった。腕の負傷があるせいで、歩き方にも影響が出ていたらしい。
「うむ。おおよそは《賢者ノ石》で治った」
「おおよそ……? あなた、もしかして、《賢者ノ石》を使い切ったの?」
「よくわかったな」
目をそらしてそう言うと、ルカは仏頂面で、
「わかるわよ。その言い方を聞けば」
「ルカさん。さっき私が心配する身にもなるよう言いました。アシュリーさんにも無茶はしないよう言われていました」
「……わかったわ。私からはこれ以上言わない。でも、あとでどんな戦い方をしたのか聞いて、もっとうまく戦えるように反省会……いえ、研究会をしましょう」
「私も参加します」
将棋好きなチナミも、研究会への参加に興味がないはずがなかった。こっそりとリラも顔を出して、
「リラもお願いしますね」
という話になってしまった。
「そういえばルカさん、ヤエさんはいっしょではなかったんですか?」
「さっきまではね。でも、あなたたちが来るほんの少し前に去って行ったわ。リラによろしくと言っていたわよ」
「そうでしたか」
リラは晴和王国で体調を崩したとき、ヤエに診てもらったことがある。その縁でヤエとは仲良しなのだ。
「また近いうちに会いたいですね」