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294 『フォーカスオン』

 サツキの評価。

 それをミツキは聞いた。

 レオーネの答えは。


「期待の新星。これからの世界を変える傑物。かな」

「なるほど」


 どうやら、本当に今回はレオーネに出し抜かれたらしい。


「一杯食わされましたね」

「ははっ。なんの話?」


 爽やかに笑ってごまかすが、レオーネにミツキの思考がわからないはずがない。

 だがそれをこれ以上追及しても意味がないこともわかっている。

 なぜなら。

 さっきの問答で、レオーネには見透かされているからだ。


「オレがキミに恩を感じたと思ってる?」


 そう聞かれたとき、ミツキは答えてしまっている。


「恩など、感じていないでしょうね」


 と。

 つまり、その段階で、レオーネはミツキの思考段階が読めてしまった。

 サツキとミナトを信じて、『二人にジェラルド騎士団長とマルチャーノを倒させる』、というレオーネの計画を、ミツキが気づけなかったと。

 あの質問には、こう答えなければならなかった。


「私が大人しくあなたの手伝いだけしてあげて、助かったでしょう?」


 そうすれば、『レオーネの狙いに気づいて、あえて我を出さずにレオーネの手伝いのみに甘んじてやった』、という恩を売ったことにできた。

 しかし実際は、サツキとミナトやレオーネのために活動を控えたのではなく、ただレオーネと共闘して目の前の敵を倒して情報収集していただけに過ぎなかったわけだ。それをレオーネにも見透かされたのである。

 ゆえに、今回は出し抜かれた。


 ――まあ、今回はそれでも構わない。情報もいろいろと得られた。それに、サツキさんとミナトさんを、大将の勘以外の理由からも着目する気になった。


 鷹不二として得られたものもあるが、気構えに影響を与えられるということは、時に単純な小さな利益以上の収穫とも言える。

 特にミツキのような頭脳に偏る人間には、得難いものだ。

 これを後日、トウリの口から言語化されて諭されることなるのだが、今のミツキは今回のことは経験だと思い自分の至らなさを顧みるのだった。

 レオーネは話題を変えるというより、話を先に進めるように、


「そういえば、ミツキはミナトを知ってるのかい?」

「噂には聞いていました。大将もたびたび口にしますから、少しは知っていました。ただ、私にはそれほどミナトさんが鷹不二に必要だとは思えなかったのですが……。どうも、もう少し情報が要るようですね」

「あれは紛れもない天才だ。情報収集に意味なんてないと思うぜ」

「サツキさんの情報も含めて、私が知りたいんですよ」


 サツキとミナトをよく知らなかった。

 この点こそが、今回ミツキがレオーネに負けた敗因なのだ。

 もっとも、この二人の勝ち負けなど、二人だけの問題で、互いが互いに貸し借りができたと感ずるだけの局所的な意味しか持たないのだが。

 それでも、互いの頭脳と魔法は互いが高く評価している。なにかあった時の協力は決して小さな力ではなく、むしろ百人力か千人力とも言えるほどで、二人にとっては大きな問題だった。


「それで、レオーネさんはどうなんです? 今回、だれの働きを評価しますか?」


 ほぼ考える間もなく、レオーネは答える。


「そうだな。オレもおおよそ同意見だよ。特に、サツキとミナトは称賛せずにはいられない。ミナトに至っては、グリエルモをサヴェッリ・ファミリーから離反させた。ミナトのおかげで、オレたち『ASTRA(アストラ)』は彼との敵対をやめることになった。逆に、付け入れば仲間にさえなってくれるかもしれない。彼の行方は気にしておくとしようかな」


『カジノ王』グリエルモは、メラキア合衆国にカジノの都・レイズデゼルトをつくった人で、組織の中でも特殊な存在感を放っていた。レオーネは彼との敵対を避けたいと思っていたので、ありがたい展開とも言える。

 ミツキは振り返った。

 そこでは、風に吹かれて上着をマントのようにたなびかせるレオーネが優雅にこちらを見ていた。


「彼の進退は、鷹不二には関係ありません。今度こそ、私はもう行きますね。また会う日まで」

「ああ。また会おう、ミツキ」

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