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292 『サポートアチーブメント』

 コロッセオにて、『バトルマスター』ロメオが戦いの終焉を知った頃。

 レオーネもまた、リディオからの報せを受けてそれを知った。

 隣にいるミツキにも伝える。


「終わったらしい。マルチャーノはサツキとミナトが倒した」

「そうですか。では、我々は撤収ですね」


 ミツキはメガネを中指で抑えた。

 鷹不二氏の『少年軍師』(おか)(もり)(みつ)()は、鷹不二水軍の一軍艦に属し、まだ十七歳の少年ながらオウシの参謀役として鷹不二氏の中核にいる。

 この世界ではサツキの世界より早くから社会に出て働き、寿命も短いため、サツキの世界の年齢感覚で言えば十七歳のミツキは二十代前半くらいと思っていい。オウシに見出された早成の才子なのである。

 対してレオーネは、組織のブレーンとして実質的に『ASTRA(アストラ)』を統べる。

 互いに意識し合うライバル同士でもある二人だが、この日はたまたま空間の入れ替えが起こってバッタリ出くわし、それから共に行動していた。

 なんの感情も見せずに撤収を決めたミツキに、レオーネは尋ねた。


「いいのかい? まだできることはあると思うけど」

「構いませんよ。おそらく、うちの大将は士衛組を将来的な味方にする布石を打ちたくてわざわざ事件に首を突っ込んだに過ぎません。士衛組への協力は充分にした。今からやれることと言えば、士衛組の負傷者の治療かマノーラ騎士団の手伝いくらいのもの。マノーラ騎士団に恩を売っても仕方ないですしね」

「あとは、『ASTRA(アストラ)』に恩を売ることもできるぜ」

「いいえ。その必要はありません。私がレオーネさんに同行し、協力した。逆に、碓氷氏の人間に『ASTRA(アストラ)』と行動した者はない。その差もあります」


 淡々と告げるミツキに、レオーネは肩をすくめる。


「つれないね、ミツキは。ていうか、オレがキミに恩を感じたと思ってる?」


 ずっとレオーネの顔さえ見なかったミツキだったが、ここでチラと一瞥する。


「あなたのことですから。恩など、感じていないでしょうね。『ASTRA(アストラ)』の方々がそう思っていればいいのです」

「そう」


 レオーネは薄く微笑む。


「?」


 冷笑というより、どこかほくそ笑むような笑いに見えて、ミツキは頭に疑問符を浮かべる。

 だが、ミツキはもう話は終わったと思った。歩き出す。


「では。私はこれで失礼します」

「送ってあげようか? オウシさんの元まで」

「結構です」


 淡白に断ったミツキの背中に、レオーネはしゃべりかける。


「今回、士衛組はよくやった。『ASTRA(アストラ)』とマノーラ騎士団はその補佐役としてほどほどにやれた。鷹不二氏と碓氷氏も良い勝負だった。敵陣営もそれなりによく戦っただろう。その中でもミツキは、だれの働きが大きかったと思う?」


 つと足を止め、ミツキは前を向いたまま答える。


「どうでしょうね。今回は空間の入れ替えという不測の事態で、だれがどこに移動するのかもわからなかった。その答えを出すには、運が大きな要素を占めることになる。であれば、常にリラさんと行動できたリョウメイさんはその後の戦いも含めて素晴らしい働きをしたのではないかと。うちのヒサシさんも頑張っていましたが、あれこれ手を着けてリョウメイさんを御しきれなかった。まあその代わり、お嬢を通して情報を流してくれた。その価値が大きかったのも事実。あとは、お嬢もクコさんのサポートをした功績は大きいです。もしトウリさんがいてくだされば、リョウメイさんを抑えて鷹不二の圧勝だったんですけど」

「ヒヨクとツキヒという駒もあったのがよかったね」

「ええ。あの二人の参戦は予測できたことですが、タイミングのコントロールも見事でした」


 あそこで参戦させるためには、敵の場所を特定する必要がある。それさえもして送り込んで間に合わせたのだ。リョウメイの手際は実に見事だった。


「士衛組は?」

「士衛組?」

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