291 『コロッセオファインドアウト』
士衛組が事件を解決した。
それがコロッセオでも伝えられた。
しかし、『司会者』クロノが宣伝しても、反応は薄かった。
わーっという歓声は少し小さい。
むしろ、そんなことが起きていたのかとざわざわしている。
それが解決したと言われてもピンとこないのが普通だ。
事情がまだ飲み込めきれない人たちのほうが多いくらいである。
士衛組を知らない人もいることだろう。
だが、
「お、あのサツキとミナトの」
「あれか! 『ゴールデンバディーズ杯』優勝コンビ!」
「そうそう!」
「すげーな、あいつら!」
「サヴェッリ・ファミリーっていたら、かなりヤバイやつらだって話だぜ!?」
と。
しゃべり合う人たちもいた。
「士衛組は、昨日『ゴールデンバディーズ杯』で優勝した城那皐選手と誘神湊選手の組織です! リーダーがサツキ選手で、なんと二人はこの『ゴールデンバディーズ杯』創設のきっかけにもなった最強バディーズ、レオーネ選手とロメオ選手ともご友人! 『ASTRA』とも同盟を結び、『ASTRA』のトップであられる、かのヴァレンさんが士衛組に加入したと言われています!」
クロノの説明を受け、思い出す人々もいる。
「なんか、噂で聞いたぞ!」
「ヴァレン様が士衛組に入ったって、何日か前にも騒ぎになってたよな」
「それが士衛組か!」
「名前までハッキリ覚えてなかったけど、今覚えたぜ!」
続けて、クロノは宣伝するように言った。
「この士衛組が、『ASTRA』とマノーラ騎士団と協力してサヴェッリ・ファミリーらと戦い勝利したのです! なんと喜ばしいことでしょうか! 我らがマノーラを救ってくれたのです!」
これを聞くと、よそ者に解決されたわけではないと安堵するマノーラ市民も喜びを口にし出した。
「つまり、ヴァレン様を要する士衛組がマノーラを守ったんだ!」
「もちろん『ASTRA』とも協力してな!」
「さすがは『ゴールデンバディーズ杯』優勝者だぜ! おれ、昨日試合見られてホントよかったわ!」
「あのミナトの強さはハンパじゃなかったもんな!」
「マノーラの救世主にまでなっちまったのか! あの二人!」
今度はクロノがロメオにマイクを向ける。
丸い貝殻の形状になったマイクは、クロノの魔法で拡声装置になったものである。
「ロメオ選手、士衛組の活躍、いかがですか? 仲間として、感想をお願いします!」
「はい。士衛組局長、サツキさんとは修業もする間柄です。彼はどんな巨大な敵にも屈しない強い精神があります。この勝利も、彼らの信念が貫いた結果でしょう」
「ありがとうございます! 実は、ロメオ選手はこの事件が起きたことを知り、人の集まるこのコロッセオで混乱が起きないよう……」
クロノが観客たちに事情を話し出す。
そんな中、ロメオはサツキに想いを馳せた。
――おめでとうございます、サツキさん。サヴェッリ・ファミリーは一筋縄ではいかない強敵だったはず。よく彼らを相手に勝ってくれました。次は、裁判ですね。




