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285 『シットダウン』

 ミナトに支えられ、サツキは顔を上げた。


「ありがとう。ミナト」

「僕たちの勝ちだ」


 それからミナトは、その場にサツキを座らせ、マルチャーノの元へと歩いてゆく。そこで膝を突き、マルチャーノが完全に意識を失っているのを確認する。


「フウサイさん」

「はっ」


 どこからともなく、フウサイが姿を現す。

 忍者のフウサイは常にサツキの影の中に存在し、《影分身ノ術》でいくつもの分身体も方々へ散り、情報収集や士衛組を見守っている。

 それをミナトは知っているので、フウサイを呼んだのだ。


「マルチャーノさんを捕縛してもらえますか」

「御意。他にも、まだ戦闘可能な肉体を持つ死体も捕縛しておくでござる」

「ありがとうございます」


 フウサイは手際よくマルチャーノの手足を縛り、肉体的損傷の少ないアンデッドも動けないよう縛った。


「しかし、ミナト殿」

「なんです?」

「かなりの強敵ではござった。それでも、ジェラルド殿のほうが切り崩すのが難しい真の実力者。ミナト殿ならば、どこかでマルチャーノ殿を斬れたのではござるまいか?」


 非難、ではないのだろう。

 おそらくフウサイなりの疑問であり、ミナトの実力を知るがゆえの不思議なのだと思われる。

 ミナトは小さく笑った。


「いやだなァ。それを言うなら、だれに対してもそうです。でも、どこでなにをされるかわからない相手は厄介なものでして。これを、サツキといっしょに攻略したかったってところですかねえ」

「なるほど」

「サツキには強くなってもらわなくちゃァならない。すでにものすごい速度で成長しているけど、一国を賭けて戦うには頭脳だけじゃァいけない。僕の相棒なら、もっと強くなってもらわないとねえ」

「得心したでござる」


 ミナトは少し真面目な顔でそんなことを言ったが、また柔らかな笑顔を見せて聞いた。


「下の階のみなさんはどうなりました?」

「影分身で観察したところ、そろそろ一階も二階も戦いを終え、この三階に上がってくる頃でござる」

「そうですか。ありがとうございます。では、マルチャーノさんを倒したことをスモモさんに報告していただけますか?」

「サツキ殿の指示を仰がなくてよろしいのでござるか」

「みんなに情報が回るのは速い方が良いと思いましたが、まあサツキに聞いてからでも十秒しか変わらない。そうしましょう」


 フウサイが影に隠れ、サツキの前に現れる。それと変わらぬ速さで、ミナトは《瞬間移動》でサツキの横に来た。


「マルチャーノさんを倒した報告を、スモモさんにしてもらっていいかな?」


 スモモは鷹不二氏の『運び屋』。

 情報局の役割を担い、魔法で手紙を転送することによって鷹不二氏の内部に情報を回して集積することができる。

 当然、スモモに頼めば鷹不二氏以外の人間にも手紙を転送して情報を送ることができてしまうのだ。

 だから、居場所がわかっていてこちらからも連絡ができるスモモにそれを頼もうというのがミナトの考えだが、サツキは首を横に振った。


「いや。リディオからの通信を待つ。それからでも遅くない。スモモさんがその情報を全方面に流すことは、あたかも鷹不二氏の手柄のように見えるからな。それはまた借りにもなる」


 戦闘終了から幾ばくもなく、疲弊しきっているのに、そんなことまで考えるサツキはやっぱり普通じゃないとミナトは思った。


「了解。下の階のみんなもそろそろ来るって、フウサイさんが言ってたよ」

「うむ」


 力を使い果たしたサツキはもはやいつ眠りに落ちてもおかしくない疲れようだった。もう座っていなくてもいいのに大丈夫なフリをして片膝を立てて座っているのは、また急な戦いが始まっても動けるようにするためなのか、みんながここに来ても平気なフリをできるようにするためか。それともただの強がりか。ミナトにはわからなかった。

 サツキは口を開く。


「リディオか」


 どうやら、リディオから通信が来たらしい。

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