表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1109/1373

283 『オールカウンター』

 マルチャーノを護衛していたアンデッドからは、魔力反応が消え去っていた。

 ミナトに負けたと確信したときに、マルチャーノは《屍術歌劇(アンデッドオペラ)》を解除したということだ。

 それは、《緋色ノ魔眼》で魔力反応を視認できるサツキには見通せた。


 ――護衛を切り捨てたか。よくやってくれた、ミナト。ここまですべてお膳立てしてもらったら、最後は俺がやるしかないよな!


 サツキは突き進む。

 使い物にならなくなった左腕は痛むし邪魔くさかったが、これを切り落とすわけにはいかない。

 刀を右手だけで持って銃弾を斬るほどの余裕は、今のサツキにはない。

 だから、サツキはマルチャーノの銃撃の中を素手で突き進むしかなかった。

 よけられるものを紙一重でよけ、致命傷にならないものは受ける覚悟で捨て身の前進を試みる。


「実に見事だったぞ! (いざな)()(みなと)、貴様はすぐに、(しろ)()(さつき)を倒したらすぐに、殺してやるからな! さあ! 城那皐よ、貴様の最後を見せてくれ! どれほどの価値があるのか、オレに見せてくれ!」


 そう言いながら、マルチャーノはサツキを撃つ。

 何発も銃撃して、サツキが来るのを待つ。

 待つ間にも、《屍者憑依(アンデッドトランス)》を使用した。


 ――《屍者憑依(アンデッドトランス)》! 今度はなにが来る? 銃弾がなくなった。ここで……爆弾?


 銃弾がなくなると、マルチャーノは銃を投げ捨て、ナイフを投げた。

 おそらくこのナイフは爆弾になっている。

 ナイフ爆弾。


 ――やっぱり!


 飛んでいる途中で、サツキの目の前で爆発した。

 これを防ぐのは難しいが、捨て身のサツキにはくぐり抜けるメンタルがあった。


 ――銃撃よりもキツい!


 銃弾は五発、すでにくらっていた。

 だがその五発よりも、ナイフ爆弾の一発にはパワーがある。


 ――でも、《波動》を飛ばして弾くわけにはいかない。練り込んで、溜めてきたこの力は、拳で直接ぶつけるまでとっておかないと!


 サツキはまたパチッと目を見開く。


 ――次は!


 見た。

 マルチャーノの変化を、《緋色ノ魔眼》で見た。


 ――また別の人間を憑依した! しかも、これを俺は知らない! まとう空気がこれまでともまた違う! 今までで一番冷たい! 冷徹な目だ!


 どんな魔法を使うのだろうか。

 わからない。

 それでも進むしかない。

 二人の距離もどんどん縮まってゆく。

 そしてついに。

 五メートルを切り。

 サツキは右の拳を引いた。

 マルチャーノもまた、左の拳を振りかぶった。


「《砲桜拳》! はあああああああ!」

「だああああああ!」


 拳と拳がぶつかり合う。

 瞬間、マルチャーノは不敵に口元をゆがめた。


 ――オレは今、《オールカウンター》を使った! すべての魔法効果を倍返しできる技だ! 


 これこそが切り札。

 今、マルチャーノが《屍者憑依(アンデッドトランス)》で憑依させている死者の魔法。


 ――貴様の《打ち消す手套(マジックグローブ)》も跳ね返す! それによって貴様の使う《波動》を無効化するのだ! もし効果を倍にした《打ち消す手套(マジックグローブ)》でも《波動》を跳ね返せなくとも、《波動》を倍返しにすればそれで済む話だ!


 すべて計算ずくの一撃であり、そのための切り札だった。

 拳と拳は、マルチャーノの計算通りにぶつかり合って……。

 結果――


「はああああッ!」

「なにィッ!?」


 サツキの拳が《オールカウンター》さえも貫通して、《波動》を込めた一撃がマルチャーノの拳を砕いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ