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282 『ジーニアス』

 マルチャーノの少し手前。

 そこまで《瞬間移動》してサツキを連れてきたミナトだったが、サツキの手を離した。

 サツキをマルチャーノの元へと送り出したのである。

 ミナト自身はまた《瞬間移動》をする。

 狙いは、護衛のアンデッド。

 一度はこのアンデッドに攻撃を防がれた。《瞬間移動》を交えてマルチャーノへと向けた刃を、防いでみせた腕。それはかなりの使い手である証拠であり、ゆえにミナトはマルチャーノに不意打ちできなかった。不意打ちを避けてきた。

 だが、もう戦いは最終局面。

 残るはマルチャーノと護衛のアンデッドだけ。

 警戒する時期は終わった。

 そして、マルチャーノはサツキが倒す。

 となれば、ミナトはこのアンデッドの相手をするのが最後の仕事になる。


 ――一つ目。


 抜刀。

 突き。


「《天一神(なかがみ)》」


 アンデッドの前に現れると同時の一撃。

 しかしこれを、アンデッドは剣で受けた。


 ――やるなァ。


 にやりとして、ミナトは二の太刀を繰り出す。


 ――二つ目。


 ほんのわずかな位置の移動にも《瞬間移動》を使って、位置の修正をし、下から剣を振る。


「《()(てん)(なぎ)》」

「……」


 またしても、アンデッドは受ける。

 残像ができるほどの速さと細かな位置修正の剣は、不意打ちと呼ぶには充分な鋭さでアンデッドを襲ったはずだった。それなのに、アンデッドはものともしない。


 ――これは何者だろうか。


 楽しくなってきた、とミナトは思った。


 ――三つ目。


 また《瞬間移動》。

 からの居合い。


「《居合い・(てん)(らい)》」


 上空からの居合いなど、空間を自在に行き来できるミナトでもないと成立しない荒技だ。

 が。

 アンデッドの反射はこれさえも受けてしまった。

 しかし受けられても攻勢には転じ得ない。

 ここまでの三連撃を、目でも追えない速さで繰り返し繰り出してきた。

 だからここに至って、マルチャーノはやっと口を開けた。


「まことの天才か! この玩具はオレの最高傑作、三百年前の最高の剣士だったというのに!」


 そうしゃべっている間にも、ミナトは五回、六回、七回とアタックを仕掛けて、ついに十回目――。

 ミナトは目を大きく開き、ニッと笑った。


「《(さん)(てん)(づき)》」


 得意の三段突きである。

 これが最速で放たれ、アンデッドを突いた。

 一段目は受けられるが、二段目と三段目でアンデッドの右肩と腹部を突き、そのまま突き飛ばした。

 アンデッドは防御できずに後方へと飛ばされてしまったのだった。


「良い勝負でした。ありがとうございました」


 カッと刀を鞘に戻して、小さく一礼する。

 このとき、ミナトにはアンデッドから気配という気配が消え去っていることがわかった。


 ――もう動かないようだ。つまり、《屍術歌劇(アンデッドオペラ)》は解除された。サツキ、あとは頼んだぜ。

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