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246 『スペースマジシャン』

 ミナトは左手だけ腰の剣のつばに手をかけ、


「いやあ、それにしても骸骨とは悪趣味だなァ」


 と笑った。

 ここに辿り着くまでの間に、ミナトにはサツキからマルチャーノに関する情報は話してあった。広場から突撃を開始する前の作戦計画時である。

 だが、ミナトはマルチャーノの魔法のことは忘れているのか本当に趣味が悪いと思って言わずにいられなかったのか。


「あの骸骨から禍々しい魔力が出ている。気をつけろ」


 サツキが小さく告げると、ミナトはうなずいた。


「了解。あれが死者を操る道具だったね」

「ああ。そうだ」


 どうやらミナトは覚えていたらしい。

 マルチャーノは不敵に口をゆがめて、


「ほう。オレの魔法について、少しは知ってるようだな」

「知らなかったのはそこにいる人です」


 ミナトがそう言うので、サツキはマルチャーノが口を挟む前に教えておく。


「あれは、天才芸術家、『空間の魔術師』問笛螺徒駈峰路モンフェルラート・カルミネッロだ」

「へえ。サツキは知ってたんだねえ」

「ちょっとな」

「そっか、『空間の魔術師』。つまり、そのカルミネッロさんって方の魔法を利用して空間の入れ替えをしていたってことですかい? マルチャーノさん」

「そういうことだ」


 ふむ、なるほど……とサツキは思った。


 ――気づかなかったな。


 言葉のままに受け止めれば、その『空間の魔術師』の名はこの日の空間の入れ替えを連想させる。

 先にその名前だけ知っていたからこそ、すぐに結びつかなかった。

 空間の入れ替えの犯人、もとい実行犯はカルミネッロだったのだ。

 そして、真犯人とも言うべき黒幕がマルチャーノだったのである。

 目指す黒幕の存在しか考えていなかった。

 むしろ、マルチャーノの部下にそうしたことが可能な魔法の使い手がいるのかと思っていたのだが、それさえもいざ対面したら頭の外にいっていた。


「ならば話は早いな。戦いを始めよう」


 と。

 マルチャーノは右手に銃を持ち、構えた。

 戦いは、静かに始まった。

 サツキとミナトが動き出す。

 まず、銃弾の軌道から外れるよう横に行く。


 ――主な武器が銃。だとすれば、《屍術歌劇(アンデッドオペラ)》による死者操作は銃で仕留めるための囮になるのか。それとも、銃は常に狙っているぞと脅すためのポーズで、メインではアンデッドが戦うのか。


 そのどちらかで間違いはなかろう。


 ――そしてそのどちらであっても、アンデッドの存在が戦術の鍵になる。


 リディオとラファエルから聞いた情報ではわからなかったのが、アンデッドの操作性。


 ――どれほどの性能で操作できるんだ?


 少しの油断もできない。

 当然のこととして、リディオとラファエルでさえマルチャーノの《屍術歌劇(アンデッドオペラ)》がどんな魔法なのか。そのすべては把握していない。


 ――そもそも、デメリットはあるのか?


 たとえば。


 ――操作できるアンデッドの数に制限はあるのか? 


 あるいは。


 ――機動力はどれくらいになるんだ?


 そして。


 ――まず、どのアンデッドを動かすんだ?


 サツキは《緋色ノ魔眼》を開眼させ、《全景観(パノラマ)》であらゆる角度からの攻撃に備える。

 360度を視認できる《全景観(パノラマ)》ならば、いつどこに潜んでいた敵が動き出しても気づける。


 ――《全景観(パノラマ)》で見たところ、アンデッドらしき存在は数体いるが、果たして……。


 そう思っていると。

 カルミネッロが動いた。

 キャンバスにナイフを突き立てる。


 ――なにをする気だ?


 行動意図が読めずに思考を巡らせるための手がかりを探そうとしたとき、それは来た。


 ――まさか……!


 サツキの視界が一転した。

 景色が点滅するように、目の前に見えるものが入れ替わる。

 空間の入れ替えが起こったのだ。

 そして、マルチャーノが引き金を引いた。

 銃口は、避けたはずのサツキをピンポイントで捉えていた。

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