表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1071/1271

245 『アンデッドアーティスト』

 サツキとミナトは三階に辿り着くと、二人の人物を発見した。

 一人はサヴェッリ・ファミリーのボス・マルチャーノ。

 もう一人は芸術家のカルミネッロ。

 二人の存在を把握し、サツキが足を止めると、ミナトも立ち止まった。


「敵は二人、だね」

「うむ。行くぞ」


 ミナトにアイコンタクトもして、二人は歩き出した。




 問笛螺徒駈峰路モンフェルラート・カルミネッロ

 天才芸術家。

 イストリア人。

 主にこのマノーラを拠点にして活動していた。

 サツキがリラと訪れたカルミネッロ広場も、名前の通り彼の作品になる。

 カルミネッロは『万能の芸術家』や『空間の魔術師』などと呼ばれたほど高い評価を得た。

 が、それはずっと昔の話。

 もう彼はいない。

 死んでいる。

 それでも、会ったこともない彼の顔をサツキは知っていた。

 リラと共にバラクロフ美術館を巡っていたとき、カルミネッロの肖像画を見たからである。そこで知った。

 そんなカルミネッロがなぜマルチャーノの横にいるのか。


 ――そうか。


 なるほど思い当たることがないでもない。


 ――きっと、マルチャーノさんの術によるもの。


 マルチャーノは手に骸骨を持っているのだが、この骸骨について、サツキはリディオとラファエルからすでに情報は得ていた。

 曰く、


「ボスのマルチャーノには、『屍術楽団クロス・ネクロマンサー』って異名がある。これはマルチャーノが持っている骸骨に由来する。その骸骨を使って、マルチャーノはある魔法を使うんだ」


 とのこと。

 ()(じゅつ)とは読んで字の如く、(しかばね)に関する術である。

 死体を操る術を指すものだが、マルチャーノもそうした魔法の所有者であった。

 つまり、死者を操る術を、マルチャーノは持っている。


 ――確か、魔法名は《屍術歌劇(アンデッドオペラ)》。


 魔法の性質は。


 ――死者の肉体さえ残っていれば、その肉体を操作することができる。ただし、能力だけが肉体には宿り、人格は失われている。


 いわば、ただの操り人形である。


 ――その手にある骸骨に魂を降臨させ、人格だけを骸骨に留め、能力を肉体へと移す。だったか。


 魂と人格の在り方など、詳しいことはわからない。

 この手のことに通じている『大陰陽師』リョウメイにでも聞けば、魂と魔法と肉体の関係性も理解できるだろう。

 しかし、今はそれを気にする時じゃない。

 今気にするべきは、マルチャーノの魔法がどんなものなのか、そしてなぜカルミネッロが支配(コントロール)下にあるのか、だ。


 ――国宝級の天才芸術家・カルミネッロの死体は国によって管理されるはず。それを奪ったか。いや、カルミネッロはこのヴィアケルサス大聖堂の中に描かれた宗教画なども手がけたらしい。その関係で、偉人であるカルミネッロを宗教側で保管していた可能性もあるな。そうなれば、裏で手を組んでいた宗教側とサヴェッリ・ファミリーには交渉の余地がある。この裏での交流は、死体の譲渡も可能となるばかりか、ここ大聖堂を拠点に戦いを仕掛けたことにつながる。そんなところか。


 概ね、サツキの推察通りである。

 だとすると、サツキにはおもしろくないこともあった。


 ――だとすると、まだ姿を見せていないだけで、ここにはほかにも有力な魔法を持ったアンデッドがいるかもしれないな。


 この三階エリアの中でも、マルチャーノがいるそこは眺望がきく大きな窓が後ろにあり、いくつかの彫刻作品が並んでいるが、カルミネッロの周囲にはキャンバスがあるのみ。マルチャーノ自身は椅子に腰を下ろしている。

 そのどこに隠してあってもおかしくはない。

 マルチャーノとの距離が近づいていって。

 サツキが歩みを止める。


「士衛組局長、(しろ)()(さつき)です。決着をつけにきました」

「同じく士衛組壱番隊隊長、(いざな)()(みなと)。推参」


 ミナトも名乗り出て、マルチャーノが椅子から立ち上がった。


「来ると思っていたぞ。しかし、士衛組だけか。『ASTRA(アストラ)』の始末もしたかったが、よかろう。この佐部吏丸千夜埜サヴェッリ・マルチャーノが相手になってやる」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ