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242 『センゴクライバルリー』

 (たか)()()氏と(うす)()氏。

 両家は(せい)()(おう)(こく)の中でもライバル同士だった。


 (そう)(れき)一五七二年現在――晴和王国は新戦国時代となっており、各国が凌ぎを削り天下を狙っていた。

 各国、というのは現代風に言えば日本での都道府県のような区分であり、その前の時代の封建制における『藩』に近く、さらに幕藩体制前の『国』の概念にもっとも近い。

 この『国』が晴和王国では三十三国ある。

 それら三十三国はそれぞれ武将たちが治めている。

 また、王制国家ゆえに当然国王をいただいており、『王都』(あま)()(みや)に現国王が住まい、上皇が『()()(らく)西(せい)(みや)に住まう。この二つの『宮』だけが『国』という分類になく、特別な区域とされている。

 これらを合わせて、

 ()(ぐう)(さん)(じゅう)(さん)(ごく)

 それが現在の晴和王国の構成になる。

 新戦国時代と呼ばれるにふさわしく、三十三国は『国』によって法も異なり、領土争いもしている。


 つまり――

 鷹不二氏と碓氷氏はその領土争いのライバルなのだ。

 もちろん、両家のほかに有力な『国』はいくつもあるし、それらを無視できるほど鷹不二氏と碓氷氏は群を抜くような強さじゃない。

 むしろ、この両家は若い当主に引き継がれたばかりの新興勢力とも言える。


 碓氷氏を継いだのは、『魔王』(うす)()(すさ)(のお)

 全身を深紅の着物で包み、恐ろしいほどに整った顔立ちで、その強さも折り紙付きときている。スサノオの活躍はめざましく、()()(たの)(おろち)退治はあまりに有名で、スサノオ個人の人気も抜群、碓氷氏は将来を嘱望されているのである。


 対して。

 鷹不二氏を継いだのは、『波動使い』(たか)()()(おう)()

 赤いスサノオと対比を成すように、オウシはウルトラマリンのような青いマントを羽織っており、『大うつけ』とも言われ奇行も目立った頃に比べて落ち着いてきているとも噂される。

 だがオウシ率いる鷹不二氏は目立った成果もなく、まだまだ甘く見られているものの、本当に少しずつ着実に成長している途中だった。


 そんな両家には、因縁がある。

 スサノオとオウシという若いトップがいる点が共通していて、その二人は年も同じ、互いを意識しており、双方共に『時代の寵児』と呼ばれ、当主の座を継ぐまでは道場の試合で剣を交えたこともあった。

 その際にはオウシが勝ったということで、以来スサノオはオウシを特別ライバル視していた。

 スサノオがライバル視しているという噂はあるが、これを不思議に思う者も多い。

 実力や知名度、評価では、同じ『時代の寵児』でも圧倒的にスサノオのはずなのに、スサノオからオウシへのライバル意識のほうがオウシからスサノオへの感情よりも強いのは、そうした理由からであった。


 そして。


 リョウメイの占いでは、このマノーラで両者がぶつかり合うと出ていた。

 ただし、両家の本格的な決戦が始まるかといえばそうではない。

 あくまでスサノオとオウシの個人的な戦いであり、昔に行った剣の試合の延長とも言える。

 だからリョウメイはそこで展開される戦いに深い意味を考えない。

 本来ならばそれだけの話だが……。

 ここはマノーラ。


 さらに――

 このマノーラでは現在、二人の共通の友人であるミナトが大きな戦いの中にある。

 そのミナトを助けることは二人にとっても大事なことだ。

 が。

 碓氷氏も鷹不二氏も、士衛組を将来的には仲間にしたいと考えているし、そうなるとライバルでこれを取り合う構造になる。

 もし二人がこのマノーラで出会っても、協力することはない。

 いかに士衛組に恩を売ることができるか、それを競い合うことになってゆく。


 ゆえに。

 スサノオはオウシとの邂逅を果たすと。

 ライバルを前に、胸を弾ませ一つ詠む。


「あの傷を、照りつける青、胸焦がす。されど吹く風、地獄の港へ」

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