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234 『ビジッターエクスペクテーション』

 ナズナが絶体絶命の旧知に陥ってしまった、その少し前――

 ヴィアケルサス広場。

 ここからちょっと離れた場所で、身を潜めていたアシュリーとスモモは二人で話していた。


「サツキくんたち、大丈夫かな?」

「どうかなー」

「あのスコットさんとカーメロさんがついていけるのも、広場までだし、大聖堂の中に罠があったら……」

「心配しても仕方ないよ」


 スモモはやけにあっさりしている。

 それが心配で気が気でないアシュリーには不満だった。


「でも、もしなにかあったらどうするんですか」

「どうなるか。それによって、どうするかは変わるからねえ」

「ミナトくんとは昔の友だちなのに、よくそんなこと言えますね」


 アシュリーから不審の目を向けられて、スモモは手紙を書く手を止めた。


「わたしが心配しない理由は主に二つある。まず一つ目、わたしはミナトくんの実力に圧倒的な信頼を置いているから。次に二つ目、そのうち助けが来るから」

「助け?」

「うちのひーさんから手紙が来たんだけどね。今、リョウメイさんっていう……ええと、鷹不二のライバルの人と戦ってるんだって。でも、すぐに駆けつけるって言ってるんだよ」

「戦いの最中に、手紙を書けるんですか?」


 不思議そうにするアシュリーに、スモモは笑いかけた。


「まあ、ひーさんって変わってるから。いつでもどこでも、なにかあれば書いて返送するよ。もったいないからってあんまり返送してくれないミツキくんに比べて、ひーさんは遠慮なく使うんだ。それに相手のリョウメイさんもくせ者の変わり者だし、書いてる隙も多少はあったのかもね。まあ、文章の途中で返送されたから状況がいいかは微妙だけど」

「じゃあ、そのひーさんが助けに来てくれるんですね」

「たぶんね。ただ相手はリョウメイさんだし、どうなるかは読めないかな。あとはほかのだれかが来てくれるのに期待」


 と、スモモは片目を閉じた。


 ――そう、ほかのだれかが。そのだれかは、鷹不二とは限らない。


 なんせ手紙には、


 VSリョウメイ

 足止め中

 碓氷氏に協力者あり

 誰かが大聖堂へ助けに行くらしいが、それが誰なのかは分からない。リラくんはヒナくんといっしょに向かっている途中だから最終決戦には間に合うものと思わ


 と書いてあったのだ。


 ――碓氷氏の協力者が……そのだれかが助けに来てくれる。最終決戦には間に合うものと思われる……と。


 そこまでわかっている。


 ――鷹不二としてはそのだれかの到着は望ましくないし、ちょうどここにいるわたしが止めるのが鷹不二のためってわかるけど……ミナトくんたちのピンチに邪魔するのは友だちのすることじゃないよね、お兄ちゃん。


 スモモはミナトのこともよく知っているが、同じ学び舎で共に過ごした兄・オウシはミナトをとても大事な友人だと思っている。だから、そんな兄なら自分たちの利益よりもミナトの安全を優先するだろうとわかる。

 ただ、ミナトが大事でもミナトは強すぎる。危機に瀕する未来が見えない。

 ならばライバルの碓氷氏からの助っ人を邪魔してもいいような気もする。

 そうすれば、ここでの鷹不二氏の貢献は碓氷氏に勝り、将来的にミナトを要する士衛組が鷹不二氏の味方になってくれる可能性が高まるからだ。

 しかし、それはあくまでミナト一人を考えた結果であって、士衛組のほかのメンバーがどこかで苦戦して、スモモが碓氷氏からの助っ人を邪魔立てしたせいで士衛組のだれかが傷つくこともあり得る。

 だったらいっそ、ミナトの今を考えて、碓氷氏の助っ人くらい通してやるのが人情に適い、自分自身も納得しやすい。

 そう結論づけたとき、スモモとアシュリーの前には、予期していた碓氷氏の助っ人と思われる二人が現れた。

 真っ先に、アシュリーが驚く。


「あ、あなたたちは……!」


 スモモはにこりと微笑み挨拶する。


「やあ、来ると思ってたよ。わたしは(たか)()()()()()。広場はオリンピオ騎士団長やスコットさんたちが守ってる。士衛組だけが大聖堂に入っていった。助けに行くなら大聖堂に行くといいんじゃない?」

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