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227 『インクリースレパートリー』

「お! 来たぞ、士衛組だ!」

「やつらがそうか!」

「ボスの元へは行かせるな!」

「うおおお!」


 サヴェッリ・ファミリーの手下たちは、サツキたち士衛組の侵入を知り息巻いた。




 ついに、サツキたち士衛組はヴィアケルサス大聖堂に侵入した。

 だが、内部に詳しい者はほとんどいない。

 唯一、ヒナが知っているだけだ。

 ヒナはマノーラに住んでいた時期があり、このヴィアケルサス大聖堂にも訪れたことがあった。

 宗教的な理由ではなく、単なる観光であり、もっと言えば幼いヒナがなんにも考えずにも散歩した先がたまたまヴィアケルサス大聖堂だったことがあっただけである。

 だからなんとなく内部もわかっている。

 わかっているのが自分だけだから、ヒナは案内役を買って出た。

 先頭のミナトよりは前に出ないが、クコに並ぶ。

 すると、ミナトがクコを振り返って、


「僕はちょっといろいろ動き回るので、クコさんはヒナの護衛をお願いします」

「はい!」


 クコのきびきびした返事を聞き、ヒナが抗議する。


「あのね、あたしはクコなんかに護衛されるほどやわじゃないの! 先生に鍛えられてるんだから」

「そうだ。ヒナも戦ってくれ」

「そうだそうだ。ヒナさんも戦ってください」


 最後尾からサツキがそんな指示を出し、チナミもそれに乗っかる形で言った。


「ちょっとチナミちゃんまでー」


 少し複雑そうにヒナはほっぺたを膨らませるが、敵が迫ると身体は動き出していた。


「でも、戦うから安心していいわ」


 剣を抜いたヒナ。

 その剣が手下の一人を斬ると、


「ぐああ! て、斬れてない」

「そうよ」

「だったらなんも恐れることは……ぐがああ」


 と。

 斬られた手下は眠ってしまった。


「《まどろみ》。眠らせる魔法だからね。あたしの逆刃刀でするのは眠らせるだけ」

「だが、触れられなきゃあいい! ただ眠らせるだけの剣なんざ怖かねえぜ!」

「本当にそれだけのわけっ……ないでしょ!」


 ヒナはグッと踏ん張り、びょーんと跳んだ。

 柱を跳ね返り。

 相手の背後へ。

 勢いよく投げたゴムボールが跳ね返るように高速で移動し、ヒナはその相手の頭を剣でゴーンと叩いた。


「ぐへっ!」


 今度は地面に両手で着地してから両足でその手下の背中を蹴る。押し出すように蹴った。

 バネのように跳ね返ることができるのは、ヒナの《跳ね月》の特徴だが、これを相手を吹き飛ばすことにも応用できる。むろん、相手が自らの意志で踏ん張ってしまっては吹き飛ばせないが、気絶した相手を吹き飛ばすくらいは造作もない。

 これによって、気絶した手下はびょーんと吹き飛ばされて、彼の後方にいる数人にぶつかっていった。


「おふ」

「あい」

「うお」


 ヒナは得意顔で胸をそらす。


「どんなもんよ」

「よそ見厳禁。調子に乗らないでください」


 チナミの手裏剣が敵の銃を弾き、腕を刺して、「おああ」と悲鳴が上がる。ヒナの隙を狙っていた手下は逆に不意を突かれた。


「《(やみ)(しゅ)()(けん)(この)()(ずく)》」

「あ、ありがとうチナミちゃんっ」


 闇に紛れるようにそっと忍び寄る手裏剣が、《(やみ)(しゅ)()(けん)(この)()(ずく)》である。


 ――フウサイさんに教わった技もレパートリーが増えてきた。おかげで、これまでよりもみんなをサポートできる幅が広がってるかも。


 チナミはフウサイに師事し、忍術を学んでいた。

 元々素養があったことも手伝って、チナミの忍術は日々成長している。


「《(どく)()(まだら)(ちょう)》」


 毒はしびれ薬。これがぬられた針を吹き矢にして、敵の首を狙った。

 的中。

 動けなくなった相手は放置し、チナミは次の扇子を広げて舞った。


「《(おに)()(ばえ)》」


 ふわぁっと。

 鬼火のように火の玉がゆらゆらと浮かび、数人の敵の周りを漂う。

 そして、火の玉は蠅のように動きを速くして素早くくるくる巡るよう飛んだ。


「あちっ、あちっ」

「熱っ!」


 そこに、チナミはまた扇子で風を送る。

 舞いの名は。


「《()(りゅう)(えん)()》」

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