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211 『ツーウェイツーチョイス』

 リラがヒナにしゃべりかけた。


「確かにあの人数では厳しかったかもしれませんね」


 その声を聞いて、ヒナは思う。


 ――ふーん。小槌で小さくなっても、サイズに合わせて声も小さくなるわけじゃないのね。リラが声を落としてるのもあるし実際のところはわからないけど。


 もしサイズに合わせて機能や性能が変わらないのなら、人間のサイズを変えても打撃力は変わらないということになる。あとで検証してもいいが、小槌で大きくなって有利に戦おうという作戦にはさほど期待できないだろう。

 魔法による戦いは、相手の魔法に対する洞察と戦術立案が大事になるが、むやみに自身が大きくなってしまえば観察が行き届かなくなってしまう。腕力だけで勝てる場合ならそれでいいが、そんな相手ばかりじゃないのが現実だ。

 ヒナはここでは言葉を返す必要もないと思い、アルブレア王国騎士たちに見つからないためにもあえて返事はしない。

 リラはまた言った。


「見たところ、リラたちがこの近くにいることはバレてないと思います。さっきテディボーイが大きくなった場所からも少し離れていますし、確証があってここに来たわけではなさそうです」


 どうもそうらしい。

 まさに今、この場所にだれかがいると思っていたとすれば、もっと必死に探すはずだ。

 なのに、彼らの探し方には必死さも緊張も見えない。

 ただし。

 テディボーイのぬいぐるみを目印にこの辺りまで追いかけてきたのであれば、推理できることもある。それをヒナは察した。


 ――もしテディボーイのぬいぐるみを目印にしてここに来たのなら。空間の入れ替えが起こった際、この区画は移動していない。


 なぜなら、ヒナたちが移動したのならまったく別の離れた場所からテディボーイのぬいぐるみを見たことになり、その上で、空間の入れ替えに対応しつつこの場所まで追いかけることは限りなく不可能だからだ。

 碁盤の目状に区切られた区画が入れ替わるということは、一つの区画が接するのは四つの区画になる。このうち、ヒナたちが見た移動した区画が四つのうちの一つだとして、残る三つのどこかから彼らは来た。その可能性が極めて高い。

 つまり。

 テディボーイのぬいぐるみを目印に来たのなら。


 ――あたしたちの目の前にあった区画のほうが移動しただけということになるわ。


 だとすれば。


 ――それさえ証明できれば、このあと、あたしたちはまたジャンプして大聖堂を探す必要がなくなる。余計に目立つこともない。


 逆に。

 もし証明できなければ。


 ――証明できなければ、どっちのパターンであったかに関わらず……すなわち、ただ当てもなく歩いていただけだったにしてもそうでないしても。やり過ごしたあと、またジャンプして確認しないといけない。


 再びテディボーイのぬいぐるみを巨大化するわけだから、やり過ごしたばかりのアルブレア王国騎士たちにもまた見つかってしまうだろう。結構な時間を置いてそれを避けるか、見つからないことを願って間を置かず確かめるか。選びたくない二択に悩まされることにもなりかねない。

 前者であればどれだけ楽なことか。


 ――さて。どうなのか、観察よ。

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