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201 『マッチポンプ』

 実は、リョウメイは玄内の拘束については予測できていた。

 玄内の馬車が狙われることはあらかじめ予想できていたし、その上であえて馬車を守らなかった。

 まだ士衛組とマノーラで再会する前だったのもあるが、そのほうが都合がよかったからだ。

 つまり、あまりに万能な玄内が出てくれば事件解決のためにリョウメイたち碓氷氏にできることが少なくなり、士衛組に恩を売れなくなる。将来的に味方につけるためには、玄内には引っ込んでもらっておいたほうがよかったのである。

 その玄内をついさっきリラと共に解放したのは、まったく偶然で馬車の近くに移動できたことによる幸運だった。

 リョウメイはヒサシにその点を突っつかれて、わざと驚いた顔をした。


「ほんまどすか? うち、そんなことよう思いつかんわあ。ヒサシはんって想像力が豊かなんどすなあ」

「え! ボクもそんなこと思いつくってことは、ボクも同じこと考えてあえて玄内さんが拘束されるのを待ってたんじゃないかって? ちょっとやめてよ。たまたま閃いちゃっただけ。だってさ、マノーラ騎士団の人に聞いた話じゃあ、キミってちょっと前にサヴェッリ・ファミリーをやっつけて、玄内さんを解放してあげたんでしょ? そんなマッチポンプじみた真似、ボクにはできないよ」

「かなんな。うちを悪者みたいに言わんとおくれやす」

「計算され尽くした正義の味方だもんねえ。表向きにやったことは。あーあ、その場に居合わせたのがボクだったらよかったのになあ」

「こればっかしは巡り合わせやからなあ」

「へえ、運良く辿り着けたってことか。まあ確かにさっさと解決されなければそれでいいもんね。さらに解放して恩を売っておくことまでしなくても、成果は充分。だけど、やっぱりうらやましいよ。あの『万能の天才』に恩を売れるなんてさ」

「そな商いみたいに言うて」

「さて。そっちの勘定もあるようだけど、話も一旦終わりにしてさ。さっさと勝負しようよ。これ以上おしゃべりしてたら、追いつけなくなっちゃうからね」

「まあそう言わんと。うちはもう少しおしゃべりしたいわあ。くつろいでくれたらええのに」

「ボクとの舌戦なんて真っ平ごめんで口も利きたくないけど、そろそろ動きたいって? 悪いけど、ボクもキミを行かせるわけにはいかないからさ。やり合おうって話。そんなわけで、足止めされてる暇はないの」


 ほーん、とリョウメイはうなずく。


「やっぱりお互い、考えとることは手に取るようにわかってるんやね。避けては通れへんか。やり合うよりこの人とのおしゃべりのほうがまだマシやったけど、待ってくれるわけないもんな」


 独り言だから、その声はヒサシには届かなかった。


「声が小さくて聞こえないよ。やっと決心がついてやろうって思った?」

「そんなところどす。その前に、今の話で気になったとこ、書かせてもらえますやろか。スサノオはんに報告もしたいさかい」


 リョウメイは日記帳のようなものを取り出した。

 これこそがリョウメイの隠している魔法の道具であり、《鍵付日記帳(ロックダイアリー)》という。開くとスラスラ書き始めた。

 しかし、ヒサシもそれを怪しいと思ったのか、もうすぅーっと静かに歩き出していた。不思議とその足は速く、右手に持っていた杖を左手でパンと受けて音を鳴らし、ニヤリとした。


「えー。待てないよ。じゃあ、ボクがそっちに行くまでね」

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