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187 『スペシャルインフォメーション』

 スモモは鷹不二氏の通信役にして、『運び屋』の異名を取る。

 袋に包んだものを任意の場所へ一瞬で飛ばしたり、手紙程度のものであれば包みも使わず転送できるのだが、特別な便せんを使って転送した手紙は封を開けた相手がまた封を閉じることで返信までできてしまう。

 しかも、船や馬車に乗ったまま乗り物も同乗者もいっしょにワープできる魔法も持つなど、運ぶことにおいては最上級の技術者ともいえる。

 そんなスモモには、鷹不二氏からの情報が手紙にして届く。

 そこには工夫もある。

 特別な便せんによるスモモ特有の転送術を《蜻蛉(とんぼ)(がえり)》といって、前もって相手にこれを送っておき、すぐに便せんを返送せず相手にこの便せんを持っていてもらえば、相手のタイミングでスモモへの転送が可能となる。すなわち、相手がスモモに報せたい情報を手に入れたタイミングで転送できるのだ。

 だから、こんな状況のマノーラの街でも、スモモの元へはなんの邪魔も介入せず情報が届いてくる。

 それによって。

 スモモの元に、仲間から情報が届いていたのだった。それもまだサツキたちが知らない情報である。


「とっておきその一。士衛組の玄内さんが今このマノーラに舞い戻った」

「それは心強いです!」

「ですねえ」


 クコとミナトは素直な喜びを見せる。アシュリーは玄内に会ったことがないから首をひねっているが、サツキだけは思考を巡らせていた。


 ――確かに、人命を優先する先生がこの事態に対処できるようになったとなれば、街の人、ひいては士衛組や『ASTRA(アストラ)』の仲間の安全性も高まる。そして、俺たちはサヴェッリ・ファミリーのボスを倒すことに集中できるようになるだろう。それより気になるのは、先生がマノーラにいなかったことを鷹不二氏が知っていたということ。


 玄内は士衛組の馬車を通じて、マノーラから離れていた。

 以前に玄内がルカに譲渡した魔法、《拡張扉(サイドルーム)》。

 ドアをつくり、ドアの先の空間に特殊な効果を付与するのだが、なにもない壁や地面に部屋を創ったり、別の空間をつなげたりできる。

 中でも黒いドアノブの《黒色ノ部屋(ブラックルーム)》は、距離の制限なく離れた空間とドア一枚でつなげられて、玄内はこれによって、馬車の中に自身の別荘とつながるドアノブを設置していた。建物の中同士でしか移動できないという不便さのある魔法だが、玄内はこれを使って別荘で研究をすることもしばしばある。

 要するに、玄内がマノーラにいないことを知っているということは。


 ――つまり、鷹不二氏はあの馬車のことも知っている。なぜ……? いや、気にするほどのことでもないのか……?


 もし、鷹不二氏が玄内とコンタクトを取れたのであれば、玄内が開示しただけとも思える。玄内ほどの存在ならば、この程度の情報開示は些末なことだからだ。


 ――だが、もし違うのならば。リディオとラファエルがヒサシさんには注意するよう言っていたけれど。ヒサシさんはしばらく前から士衛組を観測し、先生のことを探っていた。その過程で別空間とつながる馬車の存在を知った。


 この場合、ヒサシへの警戒レベルは引き上げる必要が出てくる。

 観測対象が士衛組ではなく玄内だったとしたら、玄内の万能を借りたいだけかもしれないし、そのために恩を売る機会を狙っていた可能性もある。

 逆に、ヒサシだけではなく鷹不二氏が複数人で士衛組や玄内を観測していたとしたら、鷹不二氏には士衛組や玄内にこだわる強い目的や用途など明確なビジョンがあることを意味する。

 いずれにしても鷹不二氏には、不必要に情報を開示すべきではないと、サツキはそう思った。


 ――むしろ、必要以上に関わるのも避けたい……かもしれない。


 と。

 サツキの警戒心は強まるが、スモモはまったく気にしていない様子だった。サツキの警戒心にだけは気づいているかもしれないが。

 スモモは続けて。


「とっておきその二。サヴェッリ・ファミリーのボス・マルチャーノの居場所が判明した」


 思わずサツキは声をあげた。


「なんだって!」

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