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第九話

王様から大仕事もとい、試験を言い渡されて私は文官の人に大量の木炭と土、それから小さいサイズの鉄鉱石を頼んだ。本当は砂鉄が良かったけどこの世界の文明じゃ効率的に砂鉄を採る方法が確立されていないようだった。後は触媒として聖剣と同じように呪いがかけられた剣が選ばれた。いきさつは不明だがかけられている呪いは鍛造で祓うことが可能なの事はわかっていた。

そして三日後にすべての準備が終わったとの報告を貰った私はすぐに現場に赴いた。事前に渡していた設計図通りの炉とふいごが作られていて材料も全てそろっており準備万端だった。これから三日間不眠不休で働くことになる。

私は炉に火を入れ玉鋼の製造に入った。まずは木炭を入れて炉の温度を高める。そして少し時間が経ったら上に口を開けている構造の炉の中に木炭と鉄鉱石を交互に入れる。そして数時間が経つと事前に炉の下の部分に開けていた口から溶けた鉄以外の鉱物が溶けた液体が出てくる。一応触らないように注意を促す。

そうしているうちに日が暮れてきた。私は作業を続行する。適時にふいごで風を送り炉の温度を上げていく。ここらへんで監督役の人が何人か離脱した。夜通し木炭と鉄鉱石を投入して炉の温度を上げていく。そうしていると段々と空が白くなり夜明けが近くなった。

そして炉の温度を表すかのように炎の色も変わってくる。私は片手間に水と食事を済ませ作業を続ける。ただ炉を見守りながら鉄鉱石を投入する単調な作業をしていたら一日が終わった。私は時間が過ぎていくのを確認して鉄鉱石の投入間隔を短くしていった。熱い炎に当たられながら私は作業を続行する。

炉から出ている炎の色が変わり赤紫の色をしてきた。ここからが一番長い。立ち上る炎が大きくなり、安易に近づくことはできなくなった。後は炉の中に設置してある木炭が燃え尽きるのを待つだけだ。しかしこれが長い。炎が弱まるでに夜が訪れ朝日が昇り、さらに夜を迎えた。立ち上る炎が弱まったのをみて私は柄の長い鋤で炉を崩し始める。未だに炎は消えていないが炉を全て崩す。そして炎が完全に消えるのを待った。炎が消えるのを待って一日。煌々と光を放つ鉧を見て監督役の人たちから驚きの声が上がる。そしてようやく作業が終わった。後はできた鉧を冷やすだけだ。私の世界では炉のあったばしょから運び出して空冷させる必要があるのだが、流石は異世界。魔法によってこの作業を簡略化させることがでいるというのだ。氷系統の『フィールドフリーズ』という魔法を使い、鉧付近の温度を調節し、常温になるべく近づけることができるというのだ。空冷を早めるために鉧の下にある地面に穴を掘り、一番熱が籠っている鉧と地面が接する部分を極力少なくした。

私の鍛冶スキルは鉄の温度を読み取ることが可能らしく、ようやく休みが取ることができた夜が明けたころには鉧の温度はかなり下がっていた。鉧の質を見る限り、かなり良い品質の玉鋼ができそうだった。そうしてさらに一日待つと完全に鉧の温度は触っても大丈夫なくらいに冷えていた。私はタガネを合わせ、鉧から必要な分だけの玉鋼を掘りだした。かなりの大きさを誇る鉧だったがこれだけの大きさなら盗み出すのにもかなりの人手がいるから監視の人を付けるだけで警備は整った。

続いて鍛造に入る。事前に用意されていた鍛冶場に入る。ここでも監督役の人たちが着いてくる。

まず設備を確認する。玉鋼製造の炉とは違い、原始的ではあるものの、石でできた炉があった。事前に下見をして炉とふいごなどを確認していた。

そして鉧から割り出した鋼を炉にくべて熱する。そして赤くなったのを確認して、お手伝いの人とともに熱くなった鉄を叩いて伸ばす。そして煎餅のように平たくなったら水で急冷する。そして煎餅状になった鉄を割ってみて、炭素量を把握する。すぐに割れる鋼は刀の刃となる皮鉄に、割れにくかった鋼は刀の中心となる心鉄にする。そして分別した鋼を皿状に平たくなった鉄の棒に乗せてそれを崩れないように紙で包み、炉で熱する。心鉄には用意された触媒の剣を小さく叩き割ったのを混ぜてから熱した。

熱せられ赤くなった鉄を延ばすようにして叩いていく。そして十分に延びたと思ったらタガネを当てて鋼に切り込みを入れて曲げて重ねる。そしてそれを叩く。これを何度も繰り返し、そしてそれを心鉄と皮鉄の二種類とも行う。実際に心鉄を叩くたびに何か悪い感じのするものが出ていくような感じを覚えた。

そしてできた心鉄をU字に叩いた皮鉄で覆うようにして組み合わせ、再び熱し、叩いて細く延ばしていく。切っ先を鋭くなるように叩いていく。刃の部分は段々と薄くなるように叩いていく。これがまたしんどい。スキルの補助があるものの初めてやるのは本当にしんどかった。でもさらに面倒な作業があった。

できた刀の原型に炭の粉と粘土、それから砥石の粉に水を混ぜて作った特性の土を刃には薄く、それ以外には厚く塗って、波紋を描いていく。そしてそれが終わるとさらに炉に入れ最後の火の作業に入る。そしてスキルがOKを出したら炉から出して水で急冷する。すると日本刀にある独特の反りと波紋が浮かび上がった。そして後は刃を砥石で研いだら日本刀の刃が完成する。そして柄の部分に合うように切り出した木を当てて、今回は簡単に太い紐で柄の木材を縛り柄とした。そして簡単な鍔を付けて完成する。スキルの補佐があったものの、自分で作り上げた始めての刀だった。それを王様に奉納することになる。事前に呪いの類が祓われていることを聖職者の人が確認してある。鞘は今回は作らなかった。できるだけ早めにと言われていたからね。それに実物さえあれば他人でも鞘は作れる。そして武官、文官が揃った上で王様による試し切りが行われることになった。試し切りに用意されたのは結構太い木であった。

「ふん!!」

王様が作った刀で木を切りつけると刀は滑るようにして木を切り倒した。そして次に兵士が纏う鎧が用意された。これはさすがに完全に切断とはいかなかったものの、斬撃の跡を残した。それを見て集まった人たちは驚愕の声を上げた。

「うむ。見事なできよ。呪いを祓い、そしてこれほどの切れ味は魔剣に比類するであろう。それを一人の鍛冶師が作り上げたことは称賛に値しよう」

集まった人たちも王様に同調して頷いていた。傍らで見ていたウィリアムさんが私の肩を叩く。

「よかったなシズネ」

「してシズネよ。話がある」

王様に呼ばれて個室に招かれた。そこには王様と私とウィリアムさんと数人の人だけがいた。

「実はお主の実力を見込んで頼みがある。先日見てもらった剣、あれは聖剣と言ってな、あらゆる魔を断つ聖なる剣なのじゃ。しかし先代魔王の眷属によってかなり強い呪いをかけられてしまってな。聖剣としての力を失ってしまったのじゃ。報告にあった鉄を鍛えて刃を作るお主の鍛冶技術で聖剣を作り直してほしいのじゃ」

「・・・わかりました。お引き受けしましょう」

王様の強い目つきで断ることはできなかった。それに聖剣の打ち直しという大きな仕事に関われるということにも心が躍ったからであった。

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