第五話
ゴブリン討伐を開始した私はまず九体のゴブリンを屠った。そして魔石を回収して森の奥深くへと進んだ。メニューのヘルプには森の奥へ進めば進むほどレベルの高いモンスターに出会うとあった。私は少しだけ森の奥へ進むことを躊躇した。よって私は奥へと進むのを中断し。水平に移動することにした。そうすれば今の私でも勝てるレベルのモンスター=魔獣が出てくるはずだ。
「ギッギッ」
ゴブリンの鳴き声が聞こえたのでそこへ行ってみるとそこには異様なモノがいた。
体格、その他は今まで見てきたゴブリンと同じなのだが、目つきの鋭さ、そして持っている武器が違った。
ゴブリンが鉄でできたと思われる武器を持っていたのだ。そのゴブリンを中心に六体のゴブリンがくつろいでいた。私しは静かに雫を抜いて突撃の態勢を整えた。できれば一回の攻撃で二体は仕留めたいところ。
そして地を蹴って私はゴブリンたちに襲い掛かった。突然の襲撃で混乱するゴブリン。しかしその中で一体だけ冷静なゴブリンがいた。鉄の武器を持ったゴブリンだった。何か鳴き声を発して私を指さす。その間に私は一番近いゴブリンを両断する。そしてもう一体近くにいたゴブリンに斬りかかり、これを仕留めた。残り四体。残ったゴブリンは私が二体を仕留めている間に態勢を整えていた。鉄の武器を持ったリーダーらしきゴブリンが吠えるとゴブリンたちが一斉に襲い掛かってきた。私はそれをするりと躱しながら隙を窺った。すると一体が攻撃の波から外れたのに気が付き後ろから一閃、仕留めた。残り三体。リーダーゴブリンの指示で再びゴブリンが攻撃しようとしているがその中には戸惑いのようなものが見てとれた。
「ギィ!!」
怒鳴るような声を上げたリーダーゴブリン。それを聞いてか襲い掛かってくる二体のゴブリン。しかし先ほどの攻撃のような連携は無かった。なので一体ずつしっかりと仕留めた。そして残るは鉄の武器を持ったゴブリンだけとなった。するとゴブリンがこちらを見据えてきた。そして一喝。
「ギィアアアアア!!」
するとゴブリンの剣が放った声に応えるようにして光りだした。
「何かのスキル!?」
そしてとびかかるようにゴブリンが襲い掛かってきた。木でできた武器を持った他のゴブリンと違いこのゴブリンは人を簡単に殺せる武器を持っている。そう思うと雫を持った手が震える。殺気を含んだ鋭い剣閃が私を襲う。ゴブリンの身長は私の胸ほどの大きさ。体格が違うので攻撃は捌き辛い。雫で受けようにも相手は私の心臓部分ばかり狙ってきてそれも突きばかりだった。懸命に横によけたり後ろに大きく飛ぶことでなんとか攻撃を避けていた。しかし段々とゴブリンの動きがわかるようになってきて雫で相手の武器を弾こうという余裕が生まれてきた。そしてゴブリンの斬撃を雫で受け、払おうとすると・・・。
「ギィ!?」
弾くのではなく、そのまま武器を斬ってしまった。刀身が半分以下になってしまった自分の武器を見つめてしまうゴブリン。その隙を逃さず私は雫を振るった。ゴブリンは頭から両断され亡骸は消え失せた。私は雫に付いた体液を払ってから鞘におさめ、魔石を拾った。しかしその足は震えていて動きづらかった。先ほどのゴブリンとの戦の余波が来ているのだろう。実際怖かった。死なないと言われているけど痛いのは当然嫌だ。そう思いながら魔石を拾っているとリーダーゴブリンの魔石の名前が違った。
「≪ゴブリンウォーリアー≫?」
どうやら別の個体だったらしい。そして二回戦っただけで私の体力は底を尽き始めていたので渋々町に帰ることにした。合計十五個の魔石という戦果はあったので私は少し浮ついた気分で町へと向かった。
━━━━━━━━━━━━
「はい。魔石の換金ですね。おや、ゴブリンウォーリアーを倒されたのですか?」
「えぇっと。はい。」
「お一人で、それも登録なさってからまだ日が浅いというのにすごいですね。前は傭兵か何かなさっていたのですか?」
「えぇっと、まあそんな感じです」
「ゴブリンの魔石が14個で2800ゴールド。ゴブリンウォーリアーの魔石が一個600ゴールドですので合計3400ゴールドになります」
私はゴールドを受け取って冒険者ギルドを出ようとした・・・扉を開ける前に誰かに肩を掴まれた。
「おい、嬢ちゃん。良さそうな稼ぎじゃねぇか。うん?」
振り返るといかにも悪そうな顔をした男性・・・おっさんが立っていたそしてその後ろに子分のようなのが数人。
「ひょろっとしているようでその実、実力はある。前歴は知らねぇが最低でもFランクで留まるような強さじゃねぇ・・・っとなるとその武器だな」
実際私が戦えているのは雫があるからこそだ。それを何というか見抜かれているようだ。
「んじゃ失礼させてもらうぜ」
そう言っておっさんは雫に手を伸ばしたが触れる寸前で稲光のようなものが発生して手が弾かれた。
「っつてぇ!!なんなんだ!!」
思い通りにならなかったのが不満なのか怒りがあらわになる。
「残念ですがこの剣は私の一族で代々受け継がれてきた代物。私の許しが無い人は触れることはできません」
「んじゃさっさと許可を出せ。痛い目にはあいたくないだろう?」
「ちょっといいですか?冒険者同士の争いは初期契約によって禁止されています。もめ事を大きくするのなら権利剥奪も辞さないですよ?」
ここで受付の女性が割り込んできてくれた。さすがのおっさんでも権利剥奪は怖いのか何かボソボソと言いながら去っていった。私も受付の女性にお礼を言って冒険者ギルドを後にした。そして疲れた体を大浴場でお湯につかることで癒し、お腹をおいしい料理で満たし、ボロ宿のベッドに潜ることで眠りについた。
ありがとうございました。コメントで意見や感想を頂けるとと幸いです