第三十一話
朝、起きて朝食を食べる。そして先日依頼をこなしたばかりなので私とエラムは魔法学校にいくことにした。
私自身、≪妖精の祝福≫を試してみたい気持ちもあった。ヘルプには『魔力の扱いに補正がかかる』とあった。これは魔法の扱いが上手くなるという解釈でいいのだろうか?ともかく試してみなければわからなかった。
とりあえず講師の先生の講義は耳半分に聞き流して実技の時間になった。私はコップの水を目標に空間冷却の魔法を使おうとした。すると・・・。
「シズネ!!コップの水が!!」
ついにコップの水が凍り始めていたのである。ふと見ればコップの周囲を透明な水色の立方体が覆っていた。これは玉鋼を作った時に見たことがあった。ついでに少し大きくしようと意識してみるとそれに応えるように立方体の大きさも大きくなった。
「よし、これで習得できたかな?」
その後も時間いっぱい練習を続けてコツを得ることができた。これで自分一人でも玉鋼を作ることができるようになれた。今日の帰り道はかなり気分良く歩くことができた。その後は夕食を食べてすぐに寝た。
そして次の日の朝。私は以前レオ王子から貰ったリストを手に鉱石を扱っている店を訪れた。
「あのー、ここって鉄鉱石を扱ってるんですよね?」
「あぁ、あるぜ。しかし嬢ちゃん、何に使うんだ?」
「えぇっと、これでも鍛冶師なんです」
「嬢ちゃんが?こりゃ驚いた。んでどれだけ必要だ?」
とりあえず以前玉鋼を作った時と同じ量を注文した。店の店主さんは驚いていたけどすぐに手配してくれることになった。届くまでに三日ほどかかるらしい。
次に木炭を扱っている店でも同じように注文した。それから粘土を扱っている店でも炉に必要な粘土を購入した。これらは全て私の工房に届けてもらえるようにしてもらったのでちょっと値が張ってしまったがしかたがない。とりあえず必要な物は全て購入し、これで自家製玉鋼を作る準備が整った。後は材料が届くのを待つばかりであった。
そして次の日。木炭が到着するまでに五日はかかるそうなのでそれまでは時間が空いてしまった。三人で相談した結果、依頼を受けることにした。そんなわけで冒険者ギルドを訪れたわけだ。
「ふむ・・・ちょうどいい依頼というのは中々見つからないものだな」
「ランクが高かったり、報酬が少なかったりと色々ありますからね」
「うーん。王都は人の出入りが多いから依頼も当然多いけど色々あるなー」
結果絞りに絞った結果、三つの依頼が残った。
「まずは恒例のゴブリン討伐。それから街道近くに現れたというウィールドマンムト」
「ウィールドマンムト?」
「象によく似た大型の装飾動物ですね。気性は温厚で体も大きいので並みの肉食動物では歯が立ちません。ですが繁殖期になると縄張り意識が強くなり人や動物を襲うようになるんです。おおよそこの依頼のウィールドマンムトも繁殖期に入っているのでしょう」
「図体がでかい相手か・・・私たちだけじゃ火力足りないんじゃないかな?」
「確かにそうだな。聞いたところじゃ大抵6.7人で討伐するのが通例らしいから半分の私たちでは無理な話だな」
「後はオークの討伐ですね」
「オーク・・・オークかぁ・・・」
「数は2,3体ほど。これなら私たちでも倒せそうだな」
「強さでは岩熊よりも弱いと聞くので大丈夫でしょう」
「じゃぁ、オーク討伐で決まりだね」
依頼を決めた私たちは数日分の食糧を買って、明日に備えた。
次の日。私たちはまた馬車での旅をしていた。王都には王国中からいろんな依頼が集まるわけで王国の端っこから依頼が来ることもあるそうだ。
取り合えず今回は近い場所なのでそれほど辛くは無さそうだった。
一日半、馬車に揺られて私たちは依頼を出した村に到着した。村長から話を聞いてオークの数は三体だとわかった。とりあえず今日は空き家に泊まらせてもらって明日討伐に行くことにした。
次の日。私たちは村を出て森を歩いていた。オークはゴブリン同様肉食で主に草食動物を狩り、時には肉食動物すら狩るという。ただ、魔獣の中では珍しく現れる個体数が少ないという点がある。これはどういった理屈なのかはわからないが戦う側としてはありがたいものである。
「地面に大きな足跡があるな。大きさからして人型。だが人間にしては大きすぎる。間違いなくオークだな」
私たちは地面にあった足跡を頼りに森を歩いていく。そして歩くこと少し。少しずづではるが何かの足音が聞こえるようになってきた。
「これは近いぞ」
唸り声が聞こえた私たちはこっそりと茂みから覗いてみた。するとそこには緑色の肌をした大きな人型が三体いた。
「見つけたぞ」
「うわぁ・・・結構大きいね」
「私とエラムで二体引き付けるから一体をシズネ、頼む」
「OK」
「行くぞ!!」
私たちはリーシャさんの号令の下、茂みから飛び出した。それに気づいたオークが咆哮を上げて武器を振り回しズシンズシンと歩み寄ってくる。
私は二人から離れつつ、一体に向けて『アイスアロー』を放ち注意を引いた。一体が武器を振り回して歩み寄ってくる。他の二体はリーシャさんめがけて進んでいた。
身長は3mほどあるだろうか。とりあえず私はオークの木でできているであろうこん棒の大ぶりな一振りをを避けて、そのまま肉薄。膝の裏を切り裂いてオークの態勢を崩す。膝をついたオークの頭がちょうど目の前に来て、そのまま私はオークの首をはねた。
そして一体のオークを倒した私はそのままリーシャさんを襲うオークの一体に狙いを定める。同じように膝の裏を切り裂いて態勢を崩させ、下りてきた首を突き刺し、切り裂いた。残りの一体も同じようにして倒した。
「これで片付いたな。」
「リーシャさん大丈夫?かなり大きな音がしてたけど・・・」
オークのこん棒の一振りがリーシャさんの盾に当たるたびにすごい音を出していたのだ。
「あぁ、結構腕に響いたぞ。まぁ、それでも問題はなかったな」
私たちはオークの魔石を拾ってその場を後にした。村に帰ってきた私たちは村長から依頼達成の印を押してもらい、一泊してから王都に戻るのであった。
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