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第三話

私は冒険者ギルドの依頼掲示板を見ることにした。依頼掲示板はランクごとに用意されているようで私はとりあえずFランクの依頼を見ることにした。その中には特定の魔石を何個取ってきてほしいというのが多かった。どうにも魔石というのは用途が様々らしく、魔力を込めて魔力のストックを作ることができたり、燃料として優秀であったりとあるらしい。当然モンスターのランクが上がればそれだけ効果も大きくなるようだ。しかしその中で私の興味を惹く依頼があった。

『鍛冶師の雑用係募集』

鍛冶師、つまり私の転移スキル。≪材料さえあれば好きな武器を作ることができる≫を活かせるチャンスだと思った。私は依頼紙を取って受付に行った。

「それでは依頼紙を持って書かれているところを訪れてください。詳しい話は依頼主の方から聞いてください」

私は依頼紙に書かれているところへ向かった。それにしてもこの町は賑やかだ。市も開かれているようだし、ぶつかることはなくてもたまに避けるくらいには人通りが多い。そして少し迷いながら私は依頼主の店へとたどり着いた。そこは炭の臭いがしていかにも火を扱っていると思われる様子だった。私は扉をノックして入った。

「ごめんくださーい。冒険者ギルドで依頼を受けに来たのですがー・・・」

一番部屋の奥、そこに一人の男性と思われる人が座っていた。

「なんだ。来たのは娘っ子か」

開口一番はそれだった。

「で、依頼を受けに来たんだってな。仕事内容は簡単だ。このバッグと採掘道具を持って山から鉄鉱石を取ってくるだけだ。娘っ子にはキツイだろうがな」

何か試すような視線を送ってくる男性。想像していた仕事内容ではなかったが鍛冶に携われる可能性が潰えたわけでないと思う。だから私はこう答えた。

「わかりました。道具とバッグをください。それから山の地図はありますか?」

その返答に少し目を丸くした男性。

「驚いた。娘っ子は華やかな仕事を好むもんだと思っていたが、まさかこんな仕事を受ける奴がいるなんてんな」

男性は店のカウンターらしきテーブルに必要な道具を置いてくれた。

「そう言えば名前を伺っていませんでした。私は石川静音と言います。まぁシズネと呼んでください」

「俺はケミルだ。ケミル武器屋の店主だ。んじゃ頼んだぜ。シズネ」

私は道具をバッグにしまってそのバッグを背負い、地図を確認してケミル武器店を出た。山は町からかなり離れたところにあるらしい。ケミルさんに聞いた限りだとその山には成人している人基準で半日で着くそうだ。だから行きかえりだけで一日。採掘のことも考えると二日三日はかかるとのことだった。依頼内容はバッグ一杯の鉄鉱石を持ち帰ること。私はとりあえずスライムの魔石を換金して得たなけなしの400ゴールドを元手に日数分の携帯食料の干し肉と硬いパン、それから水筒を買った。それらをバッグにしまって私は町を出発した。最初は風も気持ちよく順調な旅路であった。都会で育った私からすれば大自然を歩くというのは貴重な体験だった。しかしそれか続いたのも一、二時間ほどで飽きてしまった。変わらない景色。近づいているのかさえ分からない山。そうして何時間歩いただろうか。何とか山の入り口らしき場所にたどりついた。特に管理人はおらず、自由に採掘していいと聞いていたのでそのまま山道を歩いていく。山道は色々な大きさの石が点在していて非常に歩きづらかった。ここまで歩いてきた途中でこの世界の資源情勢についてメニューのヘルプを見てみるとどうやら山や森ごとに資源グループがあり、一日に一定量の資源を取ることができ、そして一定量が一日ほど時間をかけて同じ資源グループの中の別の場所に出現するという仕組みになっており、資源の枯渇というのは稀らしい。なので気にせず掘ることができるようだ。ケミルさんから聞いた話では鉄鉱石などの鉱石は今いる山だと岩肌や大きな岩にできた亀裂をツルハシなどでこじあけ、鉱石が現れたらハンマーとタガネを使い鉱石を割りだす方法なのだとか。

だから私は岩肌や大きな岩を重点的に見ていった。

「あ、これかな?」

どうやらお目当ての鉱脈と言えばいいのだろうか?その場所を見つけた。私はまず聞いた通りに亀裂めがけてツルハシを振り下ろした。そして手には硬い物を叩いた間隔が伝わる。そして何度もツルハシを叩きつけているとゴロっと岩が崩れ落ちた。そして灰色をした岩の中から角ばって光沢を出す部分が現れた。メニューで見てみるとそれがお目当ての鉄鉱石らしい。私はバッグからハンマーとタガネを取り出して鉄鉱石の割り出しを始めた。鉄鉱石近くにタガネを合わせてハンマーでタガネを叩く。それを鉄鉱石の周囲で何度繰り返したか。数えていないがかなりの数叩いたとき、鉄鉱石が崩れ落ちた。やっとゲットである。時間にして30分ほどか。私の拳三つ分くらいの大きさの鉄鉱石を入手することができた。私は喜び勇んでそれを拾い眺めた。それは本当に鉄の臭いがするものだった。私は大切に掘り出した鉄鉱石をバッグにしまい、また別の鉱脈?を探し始めた。

そうして私は日が暮れるまで鉱脈を見つけては掘るの繰り返しだった。そうして日が暮れる頃にはバッグの半分ほどの鉄鉱石が採れた。鉄鉱石が採れるだけバッグは重くなり、移動が辛くなった。しかしステータスには重い物を運ぶことで成長する筋力という数値があり、それは物理攻撃の威力に直結しているらしく、これも修行の一環だと私は考えることにした。そうして採掘中に見つけた少し開けた場所で貸してもらったテントを広げ、そして干し肉と硬いパンを食べ、それを水で胃に流し込んだ。どっちも味は薄く、これまで食べてきた暖かい食事が名残惜しかった。そして私はテントで休むことにした。


━━━━━━━━━


夜が明けた朝。私は空腹の胃の中に再び干し肉と硬いパンを水で流し込み、再び採掘に取り掛かった。なれれば早いことで亀裂を見つければ道具を振るい鉄鉱石を掘った。亀裂を見つけるのが手間なだけで採掘には慣れてきたという感覚だった。そうしてお腹が空くころにはバッグは鉄鉱石で一杯になっていた。私はかなりの重量のバッグを背負い山を下りてゲーンの町を目指した。風景は行きの時と変わらず、山の麓の雑木林を抜けようとしていると耳が周囲の茂みからゴソゴソという音を聞き取った。何かの鳴き声も聞こえ、私はバッグを落とすようにして降ろし、雫を抜刀した。それと同時に周囲から緑色の肌を持つ小さな人型の生物が現れた。メニューによるとゴブリンというらしい。まったくこの世界はまるでゲームのようなモンスターばかり現れるようだ。数は前に2匹、左右に1匹ずつ、背後にはいないようで逃げるのは簡単そうだったが、一日かけて掘った鉄鉱石を捨てることになる。そんなことを考えていたらゴブリンたちが襲い掛かってきた。私は後ろに飛びのいてまずゴブリンを前方に集めることにした。そして一匹ずつ仕留めることにする。

「ギャァ!!」

ゴブリンはまるで波のように時間をおいて襲い掛かってきた。だが私はその中の最後に襲い掛かってきたゴブリンをまず狙った。

「斬撃!!」

雫が光を放ち、ゴブリンの胴を真っ二つに切り裂いた。それをみて他のゴブリンの足が震えているのが見れた。今度は襲い掛かってくる様子はなく、こちらの番と私が一歩歩み寄るごとに震えながらゴブリンは後ろに下がるしかし震える足でよろよろと後ろに下がれば当然躓く可能性も出てくる。そして一匹がこけた瞬間私は距離を詰めて地面から空へ走らせるように逆袈裟斬りを放った。ゴブリンは股から頭にかけて両断された。私は緑色をした体液だろうか、それが雫に付着していてそれを雫を振るうことによって飛び散らせ、残ったゴブリンに近寄る。これが最後のチャンスとばかりに残ったゴブリンたちは武器を捨てて全力で逃走した。私は消えたゴブリンの亡骸があったところから魔石を拾い、ゴブリンが持っていた武器を拾ってみた。それは硬い木の棒に石を蔓で結び付けたもので到底価値があるようには思えなかった。私は雫を布で拭いてから鞘に戻してバッグを背負い、再び歩み始めた。

森を抜ければ草原が広がっていて草食動物らしき生物が草を食んでいるのが見えた。そして少し空が赤くなってきた頃に私はゲーンの門に到着した。ステータスプレートを見せて町に入り、ケミル武器店の扉をノックして入った。

「お、娘っ子か。よく戻ってきたな。そして見るからに重そうだな」

「はい・・・肩が痛くて痛くて・・・」

私はバッグをよっこらせと店の床に置いてケミルさんに渡した。ケミルさんは早速中身の確認を始めた。

「うんうん。全部鉄鉱石だな。かなりの大きさの物もあるしちゃんとバッグ一杯に持ってきたな。ご苦労さん。依頼はこれで完了だ。依頼書、持ってるな?」

私は自分のバッグから依頼書を出して渡した。するとケミルさんは自身の物と思われるステータスプレートを依頼書に押し当てた。すると依頼書に紋様が刻まれた。

「これで依頼達成の照明になる。後は冒険者ギルドで預けたゴールドを受け取ってくれ」

「わかりました」

「しっかしこの依頼を受けてもらえるとは思えなかった。採掘なんて貧乏人がやる仕事だし、栄達を望む冒険者ならなおのことだ。依頼を出して一か月、何人依頼を聞いて辞退しやがたことか・・・」

どうやらこの依頼は一か月誰も依頼を聞いて受けようと言う人はいなかったらしい。

「鉄鉱石ならどこかで買えないんですか?」

「確かに買えるがな、値段は張るし質もあまり選べん。注文した後に質の悪い物ばかり回されることも多いからな。だが直接頼めばこうして山から質の良い物を持ってきてもらえるからな」

「質の悪い?」

「あぁ。小さいものばっかりなのが多くてな。まぁ溶かせばあんまり変わらないんだがな。そうだ。依頼を受けて貰った礼と言っちゃなんだが格安でお前さんの武器を作ってやろうか?」

「あ、武器ならありますよ」

ケミルさんには腰に帯びた雫が目に入っていなかったようで、私は腰に帯びた雫を見せる。

「うん?鉄の棒がおまえさんの武器なのか?」

「いいえ、ほら」

私は雫を抜刀して見せた。するとケミルさんの目が目に見えて見開かれた。

「なんちゅうもんだ・・・。一目見てわかる。そいつぁタダモンじゃねぇ。至高の一品だ。そんなもの持ってるのにこんな依頼を受けたのか?」

「えぇっと・・・」

私はこの世界の人間ではない。どうやら最底辺の依頼しか受けれない私が最上の武器を持っていることに疑問を持たれてしまったらしい。そう言えば私を転移させた天使が言っていたっけ。

『もし出自を怪しまれたら≪滅んだ部族出身≫と言えば大抵はごまかせます。あなたの場合向こうの世界だと転移者という部族の出自になりますがそれは存在しないので滅んだということになり、真偽看破のスキルもごまかせます』って。

「ええっと私は滅んだ一族の末裔でして、これは代々伝わるものというか・・・」

「そうか。お前さんの一族は鍛冶師か何かだったのか?」

「はい。一応一族秘伝の鍛冶方法は受け継いでいますが」

「そうか。なら早いとこかねをためて自分の店を作った方がいいな。そいつぁ武器としても一級品だが美術品でも売れる。これは断言できる」

少し興奮した様子で話すケミルさん。どうやら武器のことになると興奮するのは鍛冶師の性というところだろうか?

「それとお前さん、鎧も早めにあつらえたほうがいい。魔石狩りには防具も必要だからな」

そう言えば私はこの世界にアレンジされたような洋服一枚だった。

「まずは革鎧だな。金属鎧はステータスが低いうちは重りにしかならないからな。馴染みの防具屋に紹介状を書いてやろう。そうすれば革防具ぐらいなら今回の依頼金で売ってくれるはずだ」

そう言ってケミルさんは紙に羽根ペン?を走らせて一枚の紹介状を書いてくれた。思わぬ収穫を得ることができた。

「んじゃ、今回はありがとな。しっかしやっぱ鉄は買う方が手っ取り早いと感じたよ。いや、依頼受けてくれてありがとな。武器が必要になったら是非ウチによってくれ」

その言葉を最後に私は店を後にした。そして冒険者ギルドに向かった。

「依頼の受付ですか?それとも魔石の換金ですか?」

「えぇっと依頼を完遂で来たのでその報告と魔石の換金をお願いします」

「依頼を完了したとのことですね?依頼書の提出をお願いします」

私は受付の人に依頼書を出した。

「確認が終わりました。これが依頼金の二千ゴールドとなります。それから魔石の換金でしたね」

私はゴブリンから得た魔石を提出した。

「ゴブリンの魔石ですね。一個200ゴールド。二つですので400ゴールドですね」

私は依頼金の二千ゴールドと魔石代の400ゴールドを受け取った、そう言えば山では借りたテントで休んでいたが町では宿を探さないといけない。そう思い私は格安の宿を受付の人から聞くことができた。とりあえず風呂は町の浴場がタダで使えるそうなのでそこで一風呂浸かることができたそしてすきっ腹のお腹を満たすため店を見回ることにした。そしてちょうどよく屋台でベーコンと野菜を挟んだサンドイッチを70ゴールドで買い、お腹を満たして格安という宿に向かった。そこは確かに格安の雰囲気だった。受付の人に宿代の300ゴールドを払い、部屋の鍵を貰い部屋へ向かった。

一応部屋は綺麗な方で寝るには問題なかった。私はすぐに数日ぶりのベッドに入り、すぐに眠りについた。

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