第二十一話
リザードマン討伐を終えて王都に帰ってきた私たちはまず冒険者ギルドを訪れた。
「依頼を完了したので手続きをお願いします。それから魔石の換金もお願いします
「では依頼書の提出をお願いします。魔石の換金はあちらでお願いします」
手続きを終えて私たちの手には依頼報酬金1万ゴールドと、リザードマンの魔石18匹分の魔石を換金して
1万2800ゴールドの合計2万2800ゴールドが手に入った。これを三等分にして分け合って、私たちは各々の宿に戻った。
私は考えていた。今まではただ依頼だから、生活のためだからと魔獣を狩っていたが、今回のリザードマンを見て思った。魔獣にも彼らなりの生活があり、仲間がいる。最後まで弱い個体をかばっていたリザードマンの表情は忘れられなかった。それが脳にびっしりと張り付いていて眠れなかった。
「ひどい顔をしているね。失礼。女性には言うべき言葉ではないとわかっているのだが、あまりにも・・・」
朝、私の顔に気づいたのかウィリアムさんが心配してくれた。私は胸の内を明かしてみた。
「なるほど・・・確かに魔獣にも我々のような生活があるだろう。だが肉食動物が草食動物などを餌にするように、我ら人間も何かを犠牲にして生きるしか方法が無いのだ。それに魔獣は古来より魔王が生み出したものだとされている。多少の罪悪感を持つのはいいが、過敏すぎるとかえって足元をすくわれかねない」
正論だった。とにかく私は何か別のことを考えようとした。あ、そう言えば買ったばかりのゲームのPV面白そうだったな・・・。あ、そう言えばあのお菓子おいしかったなぁ・・・また食べたい・・・。
「へへ・・・」
「うーん。今度はまた別の意味でだらしない顔をしているな・・・」
多少おかしい部分があったような気がするが良しとする。とりあえず私は冒険者ギルドに行こうとしたのだがウィリアムさんに呼び止められた。
「シズネ。昨日王から呼び出しがあった。宰相から件の鋼の製造について話があるそうだ。昨日あたりに帰るだろうと伝えていたからすぐに行った方がいいだろう」
「あ、わかりました。パーティーメンバーに伝えてから行きますね」
私は冒険者ギルドに行き、二人に多少話をぼかして伝えた。そして私はそのまま王級へと向かった。
王宮には名前を言えば通れるようなもので、宰相さんの部屋に案内された。
「急な呼び出しに来てくれて感謝する。私は宰相のハインと言います。これから長い付き合いになるでしょう」
「よ、よろしくお願いします」
第一印象は『ぜってー何か腹に一物も二物も抱えているだろオメー』だった。だって顔がそうだもん。是たち会った人の十割がそう思ったはず。
「してあなたが発案した鋼の生産体制のための指導準備が整いましてね。王国から希望する鍛冶師を招集し、選別し、選び抜かれた者たちを集めました」
「その人たちに私の鋼の製法を教えればいいんですね?」
「はい。ぜひともお願いいたします。鋼の性能は聞いております。件の鋼を使えば三流でも二流の作品を作れるとか」
そういう評価なんだ・・・。まぁ玉鋼にはそれだけの評価だけじゃない。真の使い方ってのがあるんだけどね・・・。
「では使いの者に案内させます」
そうして私たちは選び抜かれたという鍛冶師の人たちに会うことになった。
「ここで皆さまがお待ちしております」
入ってみるとそこはいやーまったく・・・むさくるしい!!男臭い!!
おっと、顔に出してはいけない・・・。
「なんでぇ。娘っ子じゃねぇか。コイツが新しい鋼を生み出したのは本当かよ」
「宰相様の言を信じないので??」
「いや。ソイツは違ぇ。ただなぁ・・・」
どうやら鍛冶師は男性が普通で女性は稀、珍しいようだ。
「ではシズネ様。指導をお願いします」
そして私は鍛冶師の人たちの前に立って色々と説明した。鉧押し法をしっかりと教え込んだ。鍛冶師の人たちは三日三晩寝ずに作業するということに驚きをしめしていた。鉧押し法は甘いもんじゃないんだぞと、口酸っぱく教えた。とりあえずやってみようということになったので、後日炉の準備が整うまで講義は中止となった。さて、玉鋼の真の使い道に気づく者はいるのであろうか・・・
ありがとうございました。コメントで意見や感想を頂けるとと幸いです