第二十話
エラムとリーシャさんとパーティーを組んだ私たちは依頼を受けに冒険者ギルドに戻ってきていた。
「さて、Eランクに上がったわけだけど、何を受ければいいんだろ・・・」
「すまないが、私はとある事情でランクが上がっていたから頼りになる情報は持ち合わせていない・・・すいまない」
「私はライトのパーティーに加わる前は色んなパーティーに混じって依頼を受けていましたので。それの受け売りでいいのなら・・・」
「うん。それでお願い」
「では・・・効率がいいのはFランクと同じでゴブリン退治。巣の探索は前回痛い目を見たのでこれは除外しましょう。なら次に上げるべきはリザードマンでしょうか?」
「リザードマン?」
「トカゲのように鱗を持つ人型の魔獣です。ゴブリンよりも機敏に動き、石などでできたこん棒。また発達した個体は盾なども装備しています」
「なるほど。ゴブリンみたいに簡単にはいかないという訳か・・・」
「ですがリザードマンの魔石は一戸800ゴールドで換金してもらえます。依頼報酬金と合わせれば良い収入にはなるでしょう。ちょうど沼地にリザードマンが出現したようです。リザードマンは放っておくと集落のようなものを作るので早期討伐が求められます。これは比較的新しい依頼のようなので受けてみても良いでしょう」
「よし、じゃぁこれを受けてみよう」
私は掲示板から件の依頼の紙をはがして受付に持って行った。どうやら見つけた人は沼地に生える薬草を取りに行ったときに見つけたとのこと。そして魔獣の繁栄を良しとしない冒険者ギルドが依頼を出したという経緯らしい。とりあえず私たちは食糧などの補給品を買い足した後、それぞれの宿に戻った。
「ふむ。リザードマンか」
私は今日までにあったことをウィリアムさんに話した。
「奴らはゴブリンと違い、レベルが低くとも戦闘経験があると臨んだ方がいい。武器も太い木の棒に石をくくりつけたこん棒だからゴブリンのように斬り折るということはできないだろう」
ふむ。と一息ついてウィリアムさんは続けた。
「最初のパーティーであんな目にあったというのに恐れずにパーティーを組むとは・・・度胸があると評すればいいのか、意見が分かれるところだな。とりあえず信じることができる者たちならばいいだろう。ただ、信頼するのであれば仲間は必ず守らなければならない。これは鉄則だ」
念を押すようにウィリアムさんはそう言った。そして私も部屋に戻って私は夜を越した。
朝。待ち合わせの場所に着いた。一番乗りはリーシャさんだった。
「早いな。まぁ、一番に来ていた私が言うのもなんだが・・・」
相変わらずリーシャさんは全身に鎧を着こんでいた。
「あ、遅れてしまいましたか?」
そしてパタパタと慌てるようにエラムがやってきた。
「ううん。私たちが早く来すぎただけだから。とりあえず揃ったし行くとしますか」
私たちは沼地近くの村への馬車に乗り王都を発った、
馬車に揺られること数時間。私たちは沼地近くの村に到着した。
「では私が村長と話してこよう」
リーシャさんが率先して偉い人との話を付けに言ってくれた。少ししてからリーシャさんが戻ってきた。
「討伐までの間は村の空き家を使っていいそうだ」
とりあえずテントでの生活じゃなくてほっとした、
「それから沼地まではここから二時間ほどらしい。リザードマンは最初に見たきりで観察はしてないらしい。まずは様子を探るのが良いだろう」
「私もそれがいいと思います」
「しかしこのパーティーには偵察系の人間がいないな・・・」
「今度パーティー募集でそのことを書いておきましょう」
「その方がいいかもね」
「ではできるだけ静かに行くとしよう」
そうして私たちは沼地に向かって進み始めた。そして休憩を挟みながら二時間ほど歩くと地面が水気を帯びた物に変わっていた。
「沼地といってもそこまでぬかるんでいる様子はないな。これならば戦闘に支障はでないだろう」
そしてもう少し歩くと来でできた建造物が見えてきた、
「あれがリザードマンの巣です。途中の道の木が切り倒されていたからまさかとは思いましたがすでに住処を作っていましたが・・・」
「どうする?」
「うん、ちょっと待ってね・・・」
私は≪慧眼≫を使ってリザードマンのレベルを見てみた。
リザードマン ♂
レベル8
そんな感じだった。極端にレベルが高い個体というのは見受けられなかった。ただウィリアムさんが忠告してくれたように戦い慣れているということを前提に考えなければならない。私が観察している間にエラムが案を出す。
「リーシャさん。リザードマンを釣ることはできますか?」
「あぁ。数体ならできるだろう。立地のわからない住処で戦うより広いところで戦うのがいいだろう。シズネ。そっちの方はどうだ?」
「うん。こっちも終わったところ。とりあえず脅威になりそうなのはいないみたい」
「よし。では私が釣りだすからそいつらを速攻で叩く。戦闘が起きれば住処のリザードマンが押し寄せてくるだろうからな。とりあえず戦いつつ、いつでも撤退できるようにするぞ」
リーシャさんは戦い慣れているらしく、頼りがいがあった。
「よし、いくぞ!!さぁ、かかってこい!!≪アトラクト≫!!」
リーシャさんの声に合わせて大盾が白く光る。ただ、闘気とは違う雰囲気だった。
大盾の光を見てリザードマンたちが数体出てきた。
「ガァ!!ガァ!!」
彼らは遠吠えのような声を上げてから武器を掲げてそして襲い掛かってきた。
「数体は足止めする。その間に数を削れ!!」
「私が援護します。シズネは攻撃を」
「わかった!!」
私も雫を抜刀してリザードマンと対峙する。幸い出てきたリザードマンのほとんどがリーシャさんに寄っていったため、一対一で戦うことができた、リザードマンの武器は太い木の棒に石を紐か何かでくくりつけた石のこん棒。へし折るのは難しそうだった。
私は一撃を降らせた後に速歩で近づいて雫を一閃。それだけでリザードマンを倒すことができた。
「お、早いな。ならこっちの奴らも頼む」
あれだけの数を相手にしながらこちらにも目を向けているとはリーシャさんはすごい。とりあえず地面の土を掴んでリーシャさんに寄っているリザードマンに向けて投げた。これが簡単に挑発になって一匹が寄ってきた、それをまた同じように一撃で倒す。これの繰り返しで最初に出てきたリザードマンは全て倒せた。
「ふぅ・・・シズネが強いから楽ができた」
「いやぁ、それほどでも・・・」
「先のリザードマンが全てではないだろう。もう少し近づいて様子を探るぞ」
私たちはゆっくりとリザードマンの住処へと近づいた。中の様子を見るとそこには三体の武装したリザードマンと何も持っていないリザードマンが何体かいた。私は気になって≪慧眼≫で見てみることにした。
リザードマン ♀
レベル1
どうやら守られているようなリザードマンはメスの個体らしい。そして三体のリザードマンがこちらを睨み、構えていた。それを見ると一瞬躊躇してしまう。彼らにも彼らなりの仲間意識があり、生活があるのだ。そう考えると雫を持つ手が震えてしまう。
「よし、敵は小勢だ。すぐに片付けるぞ」
「・・・そうだね」
そうして私たちは抵抗するリザードマンたちを倒した後、無抵抗のリザードマンたちを殺した。
その後はあまり覚えていない。三人で住処を調べて、売れそうなものを探して私の空間領域に収納し、住処の数から数を予想して戦った数以上リザードマンはいないとし、村に帰った。そして村長といくらかを話して見届け人としての印を依頼書に刻んでもらい、私たちは一夜を村で過ごして王都へと帰った。
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