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第百二十四話

各戦線の魔獣の総退却。今までの史書にも、研究されてきた習性からも予想できなかったできごと。これを好機と逃さず王国軍は魔獣の支配下に落ちていた王国の土地の保護へと動き出した。しかしどの方面の王国軍でも魔獣がいたであろう地には一匹たりとも魔獣はいなかったのである。そう、不自然ともいえるほどに。


――――――――

王直々に魔獣の侵攻は終わりを告げた日から一週間ほど。王都を始めとした王国の町全体は活気を取り戻していた。そして冒険者には新たな仕事が待っていた。

今まで立証されていた魔の歪み。これの再調査であった。『歪みは必ずしも大地の上にある』とありながら、歪みが見つかっていない東からの大量の魔獣の侵攻と消滅。いくら何でもおかしいと思った王国上層部は東に比重を置いた大規模な調査を開始したのである。すぐさま冒険者にも何らかの調査の依頼が溢れるほどに舞い込み、戦いの疲れを癒す間もなく再び稼ぎ時が現れたのである。

しかし唯一、静音のクランだけは調査などではなく普通の依頼を受けていた。

「しっかし、なんで受けたらダメなんだろうね?」

「わからん。ただあれだけ博識なエラムが拒絶したんだ。何かあるのだろう」

「だがそれだったら上に注意喚起などするはずだろ?伝手は俺があるし簡単だ。なのにただ俺たちだけがダメだなんておかしいと思うがな」

当然静音のクランにも指名で調査依頼が舞い込むほどだったのをエラムが一蹴したのである。それだけでなく、クラン全体に調査依頼受注の禁止を宣言したのである。詳しい話も無しに言われた一同は当然疑問に思ったが、戦いの疲れも癒えてないからとの静音フォローで何とかその場は収まった。

しかしやはり鋭い勘を持つ者ならば疑問に思う訳である。クラン内で一番エラムと付き合いが長い静音と

リーシャ、そしてエラムの正体がまるで見えないから一目置いているオリオンの三人がクランハウスでエラムの謎の行動に疑問を打ち明けていた。

そして事は起こった。

「静音。どこに行くんです?」

近頃何かとエラムから行動を聞かれる静音。今日は王国が管理する図書館に行くつもりであった。

「えっと、王立図書館に・・・」

「・・・ふむ。私もついて行っても?」

「うん。何か聞きたいことがあったら聞けるからモチロン」

静音は聖剣復活の際に王立の図書館の書庫に触れる権利を得て、そのままであった。それを利用して調べたいことがあったのである。どうせ調べるなら一番情報が集まっているとこでという訳だった。

「確かに、正式な許可証ですね。ご存じの通り持ち出しは禁止、複写も禁止されておりますのでご注意を」

何事もなく書庫に入ることができた二人。

「それで、一体何を調べるんですか?それがわかれば私もすぐに資料を見つけれるはずです」

「えっと、地名、というか地形というか・・・」

「・・・地名?」

「そ。ちょっと冒険者ギルドで聞き覚えのあるような地名を聞いてさ。当の人たちはそんな地名聞いたことが無いって言ってたんだけど・・・ちょっと気になってさ」

「・・・聞いたことが無い地名をなぜあなたは聞き覚えがあると?」

「え゛!?あぁ、えぇっと・・・」

静音が転移者であることはこの世界ではウィリアムとオリオンしか知らない。転移者であることが知られるのは極力避けたいのが静音である。

「えぇっと、ほら、発音の聞き間違えかも知らないからさ・・・」

「そう・・・まぁいいです。それで、聞いたという地名は?」

「ううぇいるうずだったかな?」

「・・・静音、帰りますよ」

「な、なんでさ・・・あ、エラムがもうなんか知っていたり?」

「いいえ。とにかくあなたは触れてはいけない話題です。帰りますよ」

そう言って強引に静音を連れて行こうとしたエラムの手を静音は払った。それだけでなく、エラムに向けて指を向けた。人差し指をエラムに向け、親指を上に向け、それ以外は握り。静音が知る意味のある形であった。そしてエラムが取った行動は静音の予想していた通りの行動であった。

「エラム。私はただ指を向けただけ。なのに杖を探して、戦闘態勢に入るなんて・・・エラム、この形の意味を知ってるんだね?」

「くっ・・・」

そう、静音がエラムへ向けた手の形は銃を象った一般的なもの。ただしそれは銃が存在している世界での話である。火薬の存在はある者の、銃器の存在が無いこの世界でこの意味を知る者などいないはずなのである。

「エラムも、この世界で得られないはずの知識を持っているよね?以前炎を吐く羊と戦った時だってそう。こんな世界で空気の存在を気体なんて表す言葉なんて周知されてないんだよ。それなのにエラムは

気化と言った。エラム・・・私はね「私はあなたが別の世界から来たことを知っています」え?」

「当然あなたから見れば私に違和感を持つでしょう。ですが、私はもとよりこの世界の生まれです。断言できます」

「じゃぁ・・・どうして気化、銃の事を?」

「静音。少し早いですが本当のことを話す必要があるようですね。ですが先にあなたに選択肢を出します。この話を聞いたらあなたは定めに従って行動しなければなりません。」

「定め?それって?」

「それも話せません。要は覚悟の問題です。・・・全てを犠牲にしてでもあなたは私の話を聞きますか?」

静音をじっと見つめたエラムの目。一瞬戸惑うが、それでも静音の覚悟は変わらなかった。

「私はエラムの話を聞きたい。どんな犠牲が必要なのかはわからないからどれだけの覚悟が必要かなんてわからない。だけど、絶対に聞かないと後悔する。そう思える。エラムのそんな悲しそうな眼を見たらね」

「そう・・・ですか」

そうしてエラムは話し始めた。自分の体験談を・・・。

お待ちしていた方へ。非常にお待たせしてすみません。これからもペースが崩れるでしょうが、どうかご容赦ください

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