8-5 なろうが流行したから我が国も同じジャンルで儲けようでは遅い
8-5. なろうが流行したから我が国も同じジャンルで儲けようでは遅い
進化論、地政学を学んでいくと「なぜなろう小説が日本で流行したか」の考察ができる。
イギリスと対極をなすユーラシア大陸の適度に離れた孤島であり、大陸文化を程よく受け入れ、凶暴な遊牧民の破壊を免れた奇跡の島だ。この2つの島の決定的な違いは、豊富な土壌と天災の多さにある。
産業革命をしたイギリスと鎖国をした日本はともに封建制であり、君主に従う地方の従士に権力を持たせて分散し、ツリー上に上下関係がある仕組みである。ロシアや中国の君主制(独裁政治)は一人の権力者に集中する事で、多くの違った民族を束ね、迅速な判断を下すことができる。これはメリットでもあり、デメリットもである。君主が時代に合わない価値観で政治や軍事を行うことで、破滅と下剋上で易姓革命が繰り返されるのだ。
中国はアメリカと日本が「豊かになれば自然と独裁から民主制になるだろう」と経団連などと組んで安い単価で工場と労働力を買った結果、ODA等の発展途上国の有利税制、為替操作、独裁政治によるグレートファイヤーウォール(内部障壁)を使ってきた。結果、日米よりも輸出にガン有利な展開をずっと続ける事ができた。日本の1ドル360円のプラザ合意を持って輸出に超有利だった固定為替が崩壊したように、中国も共産党の崩壊とともに、自由相場、関税障壁なしの日米対等の取引に移行するはずである。
さて、日本がなろうのような転生が流行する根本は、災害の多さから人モノ虫自然、すべてに魂が宿り、呪いがあると考えられてきたことである。西欧は比較的に天災は少ないが、ペストなどの感染症によって宗教が分離したりと文化にも大きく違いがある。アメリカ大陸に行って黒人貿易ができたのも、キリスト教の「人はみな平等であるが、白人のみ適用する」という考えから、黒人や黄色人が平等より下として扱われたためである。
アメリカ大陸にはハリケーンや洪水の影響が多いが、それでも自然や機械に魂という考えは生まれず、すでに定着していたキリスト教の考えそのものから価値観を変わる事は難しくなっている。
一方の日本は悪い事すれば雷や洪水、地震で自然が怒り、恨んで殺せば自分も呪いで死ぬなど、呪いという見えない恐怖が可視化された(呪怨、リングなど)。
江戸時代による鎖国により、そういった「見えない魂の文化」が花開き、それを絵などに記すことで文化継承された。それが現代の漫画文化につながっている。柔軟な妄想力は、宗教に縛られなかった奇跡の島だからこそできるものである。
「日本のなろうが流行したから我が国も同じジャンルで儲けよう」では遅いのである。