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23-17. 推し再誕ガチャ ~仮面夫婦の私が二児を求めたワケ~

23-17. 推し再誕ガチャ ~仮面夫婦の私が二児を求めたワケ~


 あらすじ: 一児の母の小林洋子こばやしようこは仮面夫婦状態だった。5才の息子は保育園に通っているが、幼いころは夜泣きが続き、彼女は鬱になった。辛い育児から、二児を望む夫と喧嘩してしまう。倦怠期が続く中、25の時にジョニーズ所属の梶原拓海カジタクの事故死のニュースを見る。思春期の頃の大ファンで、彼は絶頂期を迎えた後、24歳で結婚引退した。

 小林は悲しいニュースの広告に目が行く。亡き推しを育ててみたいですか? それは、転生を商売にするZ社の転生実験企画であった。彼女は騙されたつもりで電話し、会社に向かった。帰宅後、冷めた夫を誘惑する。「あなた、ちょっとお願いがあるんだけど」


 オチ: 予定日に無事妊娠し、次男を授かる。物わかりが良くなった1才になった時、彼女はZ社の指示通り、亡き彼の写真や遺品を選ばせた。うちわを握る赤ん坊を見て、彼女は微笑んだ。




 血族転生が2060年で証明され、実際に商売が始まった混乱期を描いた転生ストーリーである。一児の母で夫婦仮面だった小林洋子は、ときめいていた思春期でファンだったカジタクをわが子に転生でないかと模索する話だ。

 日本の2020年の出生数は約85万人。1日だと1000人ほどである。40年後の2060年もっと出生率は下がるが、わかりやすく0.1%としよう。

 この血族転生仮説が現実にあったとすると、SSR0.1%ガチャになる。

ひとりの女性が普通に埋める子は3人が良い所なので、3チケットで0.1%を狙う事ができる。もちろん引き直しはできない。

 この出産ガチャにはクールタイムがあり、10か月の準備期間と、引いた後の数カ月は母体の影響で再挑戦はできない。


 目的のヒトの死亡後、ピッタリ49日になるとは限らず、死亡した状況や本人の満足度によってズレる。理不尽で恨みを持つ死であればより早く(最短3日)、死を受け入れられない、人生の達成ができずに未練たらたらの死であれば長くなる(長いと3年)。

 カジタクの場合は事故死なので、大往生の寿命死ではない。それでも、彼が納得していれば49日前後に転生するだろう。

 彼女は、その日を狙って旦那を誘う。そもそも生理周期がほぼ決まっているため、この49日前後を狙い撃つのは難しい。前後1日、3/30日=1/10で推し再誕ガチャに挑戦できる。

 あらすじでは省いたが、彼女はZ社に応募し被験者として合格する。理由は、彼女の意思が強く出産経験があること、そして49日後ほぼぴったりで夜が狙える運があった。

 そして企業の支援のもと、彼女はイメージトレーニングと識別訓練を行う。


 冷めきった夫婦関係を打破すべく、目標の49日に向けて色々と旦那にアピールするが割愛。旦那は一切Z社の思惑と彼女の意思は知らず、復縁を受け入れる。元々は彼女は何人も子供を作りたかったが、出産の辛さや夜泣きやストレスの積み重ねで心が折れてしまい、二児を求めなくなった。旦那は結婚時に二人が望んだ三児のために励んだが、彼女が望まなかった。

 結果だけ見れば、彼女が一方的に拒んだ喧嘩である。それが、推しメンの事故死というトリガーからZ社を知り、二児目、つまり推しメンの再誕のためにやる気を出したのだ。

 確率でいうと、0.1%の一発勝負。ガチャを遊んだことがある人ならわかると思うが、1枚の無料チケットで0.1%をぶち抜くのがどれほどすごいことかわかるだろう。


 ストーリー的には、主人公補正も相まって確定演出から引いてしまうわけだが、それ以降の育児パートは誰かが書いてくれるかもしれないから任せる。


 今回のテーマで重要なのは、一般市民に転生と前世というのものが認知され普及し、それが商売として市場ができたという流れである。



 産業革命前のイギリスでは、10年後にこんな発展と労働者地獄が待っているとは想像できなかっただろう。IT革命のアメリカでは、小さな本屋がGAFAにまで化けるとは思っていなかっただろう。

 同じように、なろう転生革命は日本で起きるのだが、それを見据えたSF作家や漫画化、小説家はどれだけいただろうか?


 一度、運命の扉が開かれたあとはものすごく早く発展する。SNSバリバリの現在では、ブルーオーシャンめがけて全力で企業は投資する。市場と客層と価値があるとわかれば、アタリショックを超える大混乱になるのは目に見えてわかるだろう。今回のあらすじ小説では、きれいに着地した世界線になる。

 実際は、もっとアプリと企業が乱立し、詐欺と搾取、訴訟、公害(実験による死者増加)オンパレードでそりゃもう我々が予測できる範囲を超えるだろう。

 産業革命やIT革命はまだ流通や通信が遅く、伝わるまでに数年かかったが、今は数秒であり、キャスター不要の一般人が拡散できてしまう。


 正直なところ、今生きる30代はそれを見て活用することはできないかもしれない。40年後である。令和幼児の方はおめでとう。良い過渡期に生まれた事になる。

 パソコンやスマホがなく、家に電話をかけていた時代を経験した世代と、自我ある小3のころからスマホ一つで育った世代では価値観が大きく異なる。


 同じように、前世転生が商用化される過渡期を生きる青年(20年後に生まれる世代)とそれが定着して蔓延した60年後の少年世代ではまた価値観が大きく異なる。


 「固定電話?連絡網?なにそれ、へー黒電話っていうんだ。どうやって書けるのコレ?タップは?」


 「前世転生?臨死投票?なにそれ、へー前世ってこうやって図ってたんだ。ずいぶんと原始的で非効率だね」


 こんな時代が来るのである。



 推し誕ガチャという言葉は、50年後くらいに作られるかもしれない(もっとギャル受けしそうなワードになるかもだが)。


 ニュースになるような偉人が亡くなったあと、49日後を狙って子を作るブームが起きる。最初はオカルトとしてコメンテーターに笑われることになる。それが回数が増えるにしたがって、実際に推し誕生ガチャに成功した人が現れ、2歳から3歳の前世転生公式照合試験を受けて正式に認められるとそりゃ大慌て。

 亡くなった彼の家族、親友と3歳の転生認定幼児との対話動画が2000万再生、ヤラセや陰謀説を唱える某番組や某本。遺族や転生本人にしか理解できないその貴重な経験は、言葉や文字にした時点で大きく劣化してしまう。

 彼らにしかわからないのである。それがたった1組なら誤射かもしれない。ニュース以降、オカルトとして笑ってきたコメンテーターたちが手のひらを3年後に返すのである。


 ここまでくると、Z社の前世保全依頼は無料から200万に跳ね上がる。今まで企業がお金を払って前世保全協力をお願いしてデータ動画や遺品を管理し、非公開情報をちゃんと50年保全してきた。それが、前世適応試験合格率が日本人口の0.0001%(100人)まで増えると、まず動くのが上の人たちである。


 「不老不死の薬はないが、死後に別の赤子に記憶を抹消されて転生している事実がある」


 「前世保全企業に資産や動画を残し、転生が承認された幼児に遺言継承動画と遺品遺産を残す手段がある」


 「生殖によるDNAの継承とは別に、心=意識の継承で実質不老不死を手に入れた事になる」



 お金があるお偉いさんは、この現代なろう転生ブームに乗り多額のお金を払って行列の前世保全企業に優先入会させることになる。

 アメリカの医療体制に似ている。一般では数カ月も待たされる手術も、金があれば優先して即日受ける事ができる。混乱期には、企業乱立と淘汰の繰り返しで、消費者がどれを選ぶかで悩まされる時代である。

 現代でいう充電ポート規格、ちょい前ならDVD規格、更に昔ならVHSとベータである。


 この前世保全、企業乱立するとどうなるか。競争に敗れて廃業した保全企業は他に吸収される強制法整備されるまでは抹消される。今のniftyやゲオシティのサービス終了による、個人ホームページが海の藻屑となる感じである。一生残ると思っていたページが、遂になくなるのである。


 金ある人は、前世保全とその認定者に遺産や動画を残す事になる。今のルールでは、遺産は遺書の通り分配され、それがなければ子どもたちが遺産を引き継ぐ。


 だが、前世と転生の仕組みが証明された時からは2つの遺産継承を「本人が選ぶことになる」。今でいうドナーカードのようなものであり、いざ突然死したときに臓器を提供するかの意思表示をするものである。


 それは本来国がやるべきであり、物心ついた10歳くらいの時から前世や交配生殖による継承をどうするのかを意識表示して情報化することになるだろう。

 まあ、今の我々が物心ついた時にそんなシビアなことをされたら色々悩みそうではある。


 産業革命、IT革命、そしてなろう革命、今生きる世代はなろう革命の感動と混乱を知らずに死ぬ。それは悲しいし、自分も見届けたかった。でも大丈夫。



 20年後、零細企業のZ社ができるから、そこに被験者として登録して、継承者限定公開動画に色々託せば良いのだ。ビットコインがまだ0.00001円くらいの時に買うようなものである。認知も証明もされていない道の領域に、命や金を託すのだ。普通の人ならまずしないし、誰かに話したらオカルトとしてドン引きされるだろう。


 でも自分の直感は言っている。20年後にZ社の前世保全に全力投資せよと。



 それで稼いで、自分自身も登録して87歳で大往生しよう。そして2080年以降のなろう転生革命を青年として見届ける。それが今の自分ができる不老不死と一つの目標としよう。



 妄想だから、他の人はマネしないでね。



 まとめ


①技術革命が起きるとき、大混乱が起きる


②供給が間に合わないときは、金と権力もちが独占して一般市民には回ってこない


③法整備され、供給安定されたら一般普及する。普及後に育った世代はちょっとかわいそう


④激変の時代を経験するからこそ面白い!

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