6話
ユリウスと話した後、俺は冒険者組合に行くために城を出て、用意された馬車に乗った。
「こう見ると本当にフリオンと変わったな、まあそうか少なくとも10年は立ってるんだもんな。」
馬車に揺られながら、窓越しから見る街並みを見て言う。そうして、景色を楽しみながら、冒険者組合の近くに来た。
ふと、目線を下げてみるとみすぼらしい格好をした人が何人も座り込んでいた。よく見てみると、老若男女色々でみな明るい大通りから外れた。薄暗い路地裏に集まっていた。
「なあ、ああいうやつは多いのか?」
手網を引いている使用人に聞いてみる。
「はい、大戦により、家を失い、職を失い、家族を失ったもの達です。悔しいですが、私たちにできることはありません。ですが、我らが王は、彼らを王宮に務めるメイドや執事として雇ったりし、助けようとしていらっしゃいます。そうして、なんとか助けていますが、数は一向に減りません。さすがに雇いすぎると財政が持ちませんから」
大戦の犠牲者か......これほどまでに人々の生活に影響を与える大戦だったとは、この過ちは二度と侵さないようにしないとな。
「ここでいい、止めてくれ。」
俺は冒険者組合の少し手前で馬車を降りた。
なぜなら、俺は朝飯を食っていない。ていうか、この世界に来てから何も食べていない空腹なのだ。なので、運良く見つけた飲食店で済ませようと思う。
店の名前は、リズの料理店 外装はシンプルで看板が立っており、入りやすい雰囲気だった。
「いらっしゃいませ!」
店に入ると元気な声が聞こえた。空いてる席に座ってメニューを見る。
おお!このフランスパンとシチューセット美味しそうだ。そういえば、会社に勤めていた時は、働き詰めで全く自炊せずコンビニで済ませていたからな。これは、久しぶりのまともな食事だ。
俺は店員にさっきのシチューセットを頼むんだ。
そういえば、メニューもそうだが、フランスパンやシチューってあるんだな。フリオンでは、こんなメニューは無く。飯も体力を回復させる手段でしか無かったし、ポーションで十分回復できたからな。こう見ると本当に現実なんだな。
そうこう考えているうちに料理が出来たみたいで店員さんが運んできてくれた。
見た目は普通のクリームシチューだ。それにフランスパンとサラダとコーヒーが付いている。
まずは、シチューから食べてみよう。匂いは、甘く食欲をそそってくる匂いだ。1口食べてみると、衝撃がした。バランスの良い味付けとクリームの美味しさと肉類と野菜の旨みが凝縮された味がした。
これは!美味すぎる!
さらにフランスパンを切った物をつけて食べるとパンの中はカリッとしていて、そこにシチューの旨みがプラスされ、美味しすぎて思わず足をばたつかせてしまった。周りから変な目でみられていないだろうか?
そして、このサラダだ。食べてみると、パリッとしていて、とても歯応えがありみずみずしく、また、この世界特有のドレッシングがいい具合に酸味と塩味を与えていてとても、美味しかった。
そして、このコーヒーだ。香しい香りまた、深い味わいとキリッとした苦味、そして窓から見える景色。最高にマッチしている。
とても、美味しかった。さて、会計は
「960Gです。」
良かった。フリオンと同じ通貨だ。まあ、違ったら違ったでユリウスに頼めばいいしな。
お代を払って店を出た。元の世界の料理が完全に再現されていて凄かったし、何より満足する味だった。久しぶりにまともな食事が出来て良かった。また来よう。




