4話
「ふあぁ、よく寝た」
周りを見てみると、そこはユリウスに借りた王宮の部屋だった。
「やっぱ、現実なんか………………はあ」
なんか、ここに来るまであんまり考えなかったけど本当に違う世界なんだな。となると、元の世界にも戻りたいしどうしよ。とにかく、ユリウスに詳しく聞くか。
俺は着ていた服からいつも着ていた服に着替えて部屋を出た。
あいつどこにいるんだ? 広すぎてわからん。てか、3年前にこの世界に来たということは3年間もこの城にいたってことかよ。うらやましい。
などと考えてるとメイドがいたのであユリウスの居場所を聞いてみた。
「陛下なら多分、執務室で仕事に取り掛かっていると思います。場所はここの廊下の突き当りを右に曲がったところです。」
「ありがとう。あとでお礼をするよ。名前は?」
「ルナです!ここでメイド長をしています。ところで、つかぬことをお伺いしますが、あなた様は七大英雄のおひとり神殺しのキル様ですか?」
上目づかいで聞いてくる。かわいくて一瞬我を忘れた。
「え?ああそうだけど。」
なんかリアルでキルって言われるのは、初めてだな。
「よろしければ、サインをいただけないでしょうか?」
と言って俺に色紙とペンを渡してきた。
え? 今どこから出した? なんで、色紙とペン持ち歩いてるの? てか、サインなんて書いたことないんだけど、でもユリウスの居場所教えてくれたし書いてあげるか。(もちろん書いたことないから適当に)
「いいよ、かして。」
こんなんでいいか。
「はい、どうぞ。じゃあ、俺はこれで。」
これ以上あの人に振り回されないうちに逃げよ。あの人見ていると話しの終わらない近所のおばさんを思い出いだすなぁ。
なんやかんやあってようやくユリウスがいるであろう執務室に到着した。
やっぱここはドアをノックするべきだよな。ふう、なんか緊張する。
コンコン
「入れ」
ゆっくりドアを開けると、そこには昨日あったこの国の王ユリウスと赤く燃え盛るような髪と体のラインを強調した服を着ている女性がいた。
「なんだ、お前か。」
「あら、久しぶりですね。キル」
「ゲ!テイン。」
そう彼女こそ七大英雄の一人にして、俺の悪友? とでもいうべき存在テインだ。こいつは群衆の前だと凛としていて美人なんだけど対面してみるとものすごいリスキーだだ。
「ゲってなんですか? ゲって」
笑いながら片手に炎を出しながら言ってきた。
「そんなすぐキレんなって燃やしたがりが!」
「おやぁ、そんなことをか乙女に言っていいのかしら?」
ほら、こんなこと言って、どこが乙女だ! ほんとこういうところが苦手なんだよな!
「どこが乙女だ! ゴリラの間違いだろ!」
「え? 焼死させますよ?」
「やってみろやぁ?」
「相変わらず仲がいいね」
「「どこが」だ。かしら?」
「ほら、それとか」
こいつと仲がいいとか虫唾がする
「さて本題に入ろうか」
「そうだ。テインが目覚めたのっていつ頃?」
実はこれが1番気になる。ユリウスが3年前だとして、こいつはいつ目覚めたのだ?
「そうです。私が目覚めたのは、今から2年ぐらい前ですね。」
「2年か、ユリウスが3年前で俺が昨日だとするとかなりの時差だな。」
「そうだね。こればっかりはしかたないよ。」
だとしても2、3年はでかいな。それにしても一つ気になることがある。
「あのさ、気になることがあるんだけど、いいか?」
「いいけど、なんだい?」
「なんで俺がこの国に来ることがわかった? 俺はただ警備所に連れてかれただけだぞ?」
事実、俺は警備所に連行された。でも、それだけだ。目立つようなことはそれしかしてないし、たったそれだけで国王にまで報告書が行くか? しかも、数時間で、ありえない。
「ああそれはね、僕たちプレイヤーはこの世界に入る時に目覚めているフリオンのフレンドに通知が来るんだ。初めてこのことが判明したのはテインがこの世界に来た時に僕に通知が来て、そのあとほかの七大英雄たちの通知も来たからだね。」
通知? なぜ通知が来る? フリオンの名残? いや、この世界とフリオンは似ている。だがそれだけだ。フリオンにあったメニューやトークは、ないし、そんなシステムを作るやつなんていない。だとすると通知はなぜある? 考えられるのは
「通知かまるでプレイヤーを協力させるためみたいだな。」
「流石だね。僕も同じ考えだ。実は僕たちがこの世界に来る前に大きな大戦があったみたいだ。」
「大戦? それにみたいだ? 確証はないのか?」
「ああ、僕も目覚める前だったからね。その大戦の名前は魔神大戦と言われていて、10年前魔神族とその眷属たちがこの地上を襲ったとされている。それを止めるべく戦った人類と人類に恩恵を与えた神により、敵であり魔神族の親玉である魔神を封印することに成功したみたい。」
「それで、それと通知にどんな関係があるんだ?」
「僕の予想だけど、魔神っていうのはとてつもなく強大な存在なんだと思う。神の恩恵を受けた人々でさえも殺すことが出来ず、今も封印した魔神の影響により魔に属するものが活性化している。魔物の被害も過去最多を記録しているんだ。だから、僕たちが来たんだと思う。」
「魔神の影響? それになんで俺らなんだ、ほかにも何億人ってプレイしてる人がいるんだぞ?」
「実は、僕たちの国以外ていうか、この世界自体がフリオンとすべて一緒なんだ。だから、他国に在籍しているランカーたちは全員この世界に来ているみたいなんだよね。」
つまり、俺ら以外のフリオンのトップに君臨している人間が全員この世界に来たということか。それにこの世界がフリオンと全て一緒ということは、俺ら七大英雄の存在も知れているということか?
「なあ? 俺ら七大英雄の存在って知られているのか?」
「ああ、もちろん知られている。」
そういって彼は、まるで待ってましてといわんばかりの顔をして俺を見てきた。
こういう時はいつも無茶ぶりを言ってくるので嫌いだ。でも、のらりくらりと躱そうととするとなにかしら因縁つけられて結局やらされるので引き受けるしかないのだが……………
「なんか、言いたそうな顔だな」
「おお、よくわかったね。実は、この国に在籍している未来予知者と科学者の共同研究により、このままだと5年後には魔神が復活し先の大戦がもう一度起こってしまうと研究結果が出たんだ。だから、君にはこの世界に散り散りになっている七大英雄たちを見つけ出して欲しいんだよね。」
ほら出た。あいつらは自由奔放だから見つけることなんて何年かかるやら、だいたいなんで俺なんだ?
「なんで自分が?って思ってるでしょ、顔に出てるよ。」
っげ!こいつエスパーかよ。
「君に任せる理由は、君が素性が知られていないこと。まあ、存在は知られているけど」
そうだった、俺はフリオンの世界では仮面をかぶっていたんだ。まあ、城門の関所では、さすがに被ってなかったけど。なぜ仮面を被っているかって? かっこいいからに決まってんじゃん。は? ふざけてる? HAHAHA、ふざけてないさ、正体不明の存在ってかっこいいじゃん。......うん? そういえばなんでこいつ俺が嫌そうな顔してるの分かったんだ? 怖っ!!
「それに、君は我らがクルシュナ王国が誇る【神殺し】にしてフリオンの個人ランキングの頂点に立っている存在だからだ。」
窓越しに手を広げて俺に行ってくる。
「まじでお膳立て上手いなお前...はぁ」
「あっばれた? でもさ、君が最強なのは本当じゃん。だってさ、これでテインを行かせて何かあったらどうするの? それに君なら何かあっても大丈夫だと信じているよ。」
そう、何を隠そう俺はフリオンにて個人ランキング第1位なのだ。
個人ランキング
それは、個々の能力をパラメータ化し表示したもの。簡単に言うなら、その個人の平均的な強さのことだ。また、ほかにもパーティーランキング、 国力ランキングなどいろいろある。
「まあ、そうだが………………はあ、わかったよ。俺が探せばいいんだろ。」
「うむ。理解が早くて助かる。」
くっそ王様ずらしやがって、まあ王様だけど、殴りてぇ。




