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僕とお母さん

作者: 飯野こゆみ

早くしなさい、何やっているの、アホちん、いいかげんにしなさい、もう知らないからね


これがお母さんの僕への言葉ベスト5だ。

大抵の会話はこれの後ろか前に何かがくっつく。


例えば

早くしなさい、皆待っているよ。

これは、誰かと約束した時に多いかも。


何やっているの、ちゃんと良く見て。

これは、遊びに行く時に道路を横切ろうとした時かな。


このアホちん。

テストが返ってきた時とかお母さんから見て、飛んでもない答えを書いた時だ。

だけど、僕は至って真面目に書いた答えも多い。


いいかげんにしなさい、何度いったらわかるの。

これは、いろいろありすぎて書ききれない。


もう知らないからね。

この言葉は、他のベスト4の言葉にくっつく事が多い。

僕には最終通達みたいな時に使われるらしい。


お母さんは、僕の事好きじゃないのかな?

そんな事を思った事も一度や二度ではない。

僕だって、お母さんに褒めてもらいよ。

でも、中々上手くいかないんだ。


でもね、最近あることに気がついたんだ。


僕の名前を呼びながら優しい声で話しかけてくれるお母さんがいた。

それは、僕が布団に入ってからの事。

つまり寝てからだ。


昼寝をしてしまったせいか、寝つけなかったあの日。

階段を上るお母さんの足音が聞こえた。

僕が起きていると解るときっとまた、早く寝なさいだの、何やっているのだの、怒られるに違いない。そう思った僕は目を瞑りうつぶせになって顔を隠し寝た振りをした。


静かにドアが開く音が聞こた。

通り過ぎてくれればいいのに、お母さんは僕の枕元で足が止まりそっと僕の布団の脇に座り始めた。お母さんの冷たい手が僕の頭に触れた。

僕はその冷たさとバレルのではないかという不安から身を縮ませた。


冷たさとは反対に、お母さんの手は優しく僕の頭を撫でてくれた。

ごめんね、今日も怒っちゃって。お母さんはけいちゃんの事大好きだよ。いっぱい大好きだからね。

お母さんは何度も頭を撫でて、何度も大好きだよ。

と言ってくれて、また来た時と同じように静かにドアを開けて階段を降りていった。

本当は頭を触られるのは好きじゃない僕だったけれど、今日はそれでもいいやって。

何だか、気がついたら枕がぬれていた。

お母さん、僕の事嫌いじゃなかったんだね。


いつの間にか寝てしまったようで、翌朝いつものお母さんの大きな声で目が覚めた。


「いいかげんにしなさーい。いつまで寝ているの、もう知らないからねー」


朝起きたら、いつものお母さんだった。

あの優しいお母さんは夢だったのかな。

そんな事を思いながら、階段を駆け降りた。


今日は、お母さんに怒られないように頑張ってみよう。

顔を洗った僕は鏡に向かってそう呟いた。

そこに、またお母さんの叫び声。


「早くしなさいって言っているでしょ。まったくもう」


道のりは遠そうです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつもお世話になっております。イリです。作品拝読させていただきました。 とても和む作品でした。誰もが一度は抱いた事のあるような母親に対する感情が、上手に織り込まれていてわかる、わかる、と…
[一言] 何かしら共感したぞよ♪ ゆかヲタのお母さんのベスト5わ…携帯ばっかりしなさんな、勉強しなさい、家のこともちったぁしろ、あーいえばこーいう、兄弟仲良くしなさい……ですかね(笑) もう私生活丸…
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