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プロローグ
ずっと見ていた。
高くて遠いステージの上から。
君はいつも端の方にいた。
後ろの方で1人佇む姿は、ノリに乗って騒ぐ人たちよりも余計にも目に留まったし、離れなかった。
君も、ずっと僕を見ていた。
君と話したいと思った。
君の傍に行きたいと思った。
けれど僕はステージを降りるわけにはいかない。
ギターを弾き、マイクに向かい、歌を歌う。
時に優しく、時に激しく、僕はギターをかき鳴らし歌を歌う。
盛り上がる会場。
その波を通り越して、僕は君を見ていた。
ライブの後で煙草を吸いに行く。
そんな時でさえ、君のことが頭から離れない。
外では出待ち組の騒がしい声が聞こえる。
その中に君がいないことを僕は知っている。
アンコールの後で、君はサッと姿を消す。
もう少しだけ、君を見ていたかったのに。
いつだって君は、手を伸ばす先からすり抜けるようにいなくなる。
吹かした煙が夜空へ消えていく。
寂しいくらいに綺麗な星空を、君も見ているだろうか。