第01話 べんてん
『 むかーしむかしあるところに大きな湖があって
キレイな女神様が住んでおられる美しい小島があったそうじゃ
その女神様の姿は蝶のように気品高くそして母のようにだれにも優しい
地元の民にたいそう愛されておったそうな。』
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♡ハイッ、丁寧なナレーションありがとう。
キレイは認めるけど私そんな優しくないよ
みんなが期待するような聖人君主で慈悲深い神様じゃないからね。
「したいことをして、したくないことはしない!」
神様連中からはハネっかえりとか、じゃじゃ馬とか言われるけど
悠々自適に暮らしていけたらそれでいいの。
まぁ、せっかくだから軽〜く私の自己紹介しようか
私、弁天島に住む「弁財天」天から降りてきて
この島でかれこれ1500年くらい神様やってま~す。
えっ!私を知らない?マジで!…
人間は「べんてん様」って呼んでるわね、そう言えばわかるでしょ
神様やってるとさ、みんなわざわざ時間と高い交通費払ってまで
ウチにお願いに来るわけよ。
◎ロクに努力もしないのに、きれいになりたいとか
◎クジが当たって大金持ちになりたいとか
◎一番うっとおしのが、私の気をひくために大げさにアピールしてみたりとか。
気持ちはわかるんだけどさ…
そんなの聞いてたらキリがないわけで、まぁ、せっかく来てくれたんだし
せめてあなたの未来に幸運がくるといいわねって思うくらいで。
時にさぁアンタ「キセキ」って信じるタイプ?
ときおりね人間に「キセキ」を授けることもあるの
いちおう神様だから。幸せのピックアップってやつ?
大勢の人間の中に本当には応援したい子もいるってこと。
ほら見てごらんあそこ、あの子のように、ってかもう…20後半の女なんだけどね。♥
(**´ >ω<)゛ 「はっくしゅん! あれ?あたし風邪ひいちゃったかな?」
♡ふふふっ、噂をしたら「くしゃみ」しちゃって
寂しげな最終列車の中でキャリーケースにもたれかかって
ぼーっとしている幸薄そうな彼女。
生まれてこの方、損クジばかりで良いことなんか
ひとつもなかったこの子には
「幸せになってもらわななきゃ」って思って
私の近くに呼んだの。♥
「ご乗車ありがとうございました、次は終点「竹生、終点竹生です。」
♡最終列車、現在23時35分「♪北に向かう人々はみんな無口で〜♪」
なんてフレーズ聞いたことあるわね。
電車を乗り継ぎ勢いでローカル線に乗ったまではいいんだけど
その結果、ど田舎の終点駅になっちゃって、《《ザンザカ》》雨降る駅から
締め出されちゃって、この街をさすらうことに。
薄暗い街中を荷物でパンパンのキャリーケースを
傘もささずにズルズルと引っ張り歩いている、降りた駅は、歩けども歩けどもど田舎。
真夜中に今夜泊まれそうな宿も見つからず途方に暮れちゃって。
鼻息も荒くムスっとしちゃってさブサイクな顔になってるよぉ、でも、ちょっと可哀想かな。
白いワンピースに赤いヒール。
栗色の内巻きくるくる髪をふわふわと揺らせている。「ゆるふわ」キャラ、そう彼女が私が
「キセキ」をおこしたいターゲットその子の名前は…
「高島マキノ」
えっ?この先どんな話かって。
ん~そうだなぁ、ざっくり言うと…
ひとりの女性がたんぽぽ種のようにふわふわと空を飛んで
着地したところにしっかり根を張り
自分の居場所を切り開いていくお話なんだけど。
さて、どんな未来を迎えるのか?
よかったら彼女の人生の一部を私と一緒に覗いてみない?
あっ!大事なこと忘れてた!
私かなりおしゃべりだから覚悟してね。♥