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創世戦記「第七話から始まる、読者の異世界ファンタジー」  作者: 川嶋マサヒロ
第一章「チートでニートな戦士の異世界ファンタジー、ニートの魔王と引きこもりのオレと……」
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第五話「対決! 魔王」

 魔王の住処と呼ばれる一帯に入り込んだ。魔王との距離はまだどれ程かは分からないが、気配を感じる。


 魔人と対峙した時に感じたそれ。まだ距離があるのにこの感じ。一体どれほどの力を持つ魔人なのか。


 気配のある方角へ進むと森が開けてきた。遥か前方に魔人。いや、魔王の姿が見える。


 周辺の木の高さから見て体長は二十メートル近く、六階建てのビル位の高さはある。あいつも僕の気配を感じているのだろうか? それを分かった上で決闘を約束した相手のように僕を待っている。


「嬉しいな!」


 そのまま真っ直ぐ歩き、魔王までの距離が百メートル程で、僕は剣を抜き駆け出した。


「最初はキチンと組みたいね」


 残り五十メートルを切った所でマントの力で少し浮き上がり、右に左に蛇行しながら徐々に速度を上げて接近。直前に高度を急激に上げて頭部めがけて切りかかった。魔王は左手を上げ何事もなかったように剣を軽く受ける。


「これくらいは余裕か!」


 ぶつかり合った反動で少し後ろに飛ばされ地面に降り立つ。次に仕掛けたのは魔王だ。凶悪な爪を持つ抜き手を次々と繰り出す。


 身をかわすたびに突き刺さる魔爪(まそう)を食らって大地が裂ける。前後左右にかわし、剣で爪を受け流しながら間合いを保つが、足を使って避けるのは限界だ。


 マントの飛行能力を使い、少しばかり浮遊しながら重力を操り無秩序に動きスピードを上げた。このマントは逸品だ、後退の場面でも目が付いているかのように勝手に木々を避けながら飛行する。


 僕の高さに合わせて水平に振られる魔爪に巻き添えを食らった木々が、割り箸が折れるようにひしゃげて倒れる。


「こっちを試すか」


 剣を鞘に収めて背中から弓矢を取り出し構える。大地からの重力を最大限にねじ曲げ瞬間、魔王の直上に身体を移して矢を放つ。命中した矢は白い光の粒になって消滅した。あの矢が全く通じない! 唖然とする僕を魔王は首を捻り見上げた。


 細く横に伸びる赤い目が見開かれると、顔の大部分が目かと思わせるほどに赤く大きかった。耳までつり上がった口が真っ赤に開かれる。


 この相手に矢は全く役にたたない。僕は弓矢を投げ捨てた。少しでも体を軽くするためだ。マントの能力には限界がある。僕は力を温存するため高度を落として地表に戻った。



「ふう……、ちょっと早いけどやってみるか……」


 剣を抜き両手で右下に構え意識を集中する。サンダーの名は伊達じゃあない。帯電し始めた剣からいくつも枝分かれした白い光の(つる)が、蛇のように大地にうねりながら伸びる。


 数日前に使えるようになったばかりの対魔王の必殺技だ。


 剣を大上段に構え直すと蔓は収束し始めた。


「よーーしっ! サンダーエクスプロージョンっ!!」


 斜めに振り下ろした剣に合わせて、蛇の頭部を思わせる雷撃が鼠に襲いかかった。袈裟懸けに魔王の体が火花を放ちバッサリと切り裂かれる。魔王の胴体が左肩から右わき腹にかけてゆっくりと離れ始めた。


「やったか!」


 が、二つに割れたそれぞれの切り口から魔人の手が複数伸び、互いを掴み合い引き寄せ合った。魔王は何事もなかったように立っている。


「くっそーっ、切り損だったな~~」


 さすがの僕も呆れた。こいつは不死身か?


「合体魔人の究極があの魔王って訳だ」


 一体どれほどの魔人があの体の中にいるのか。もう一度、一撃目より力を上げて今度は左下から右上に向け雷撃を放つ。


 人差し指を立てている魔王の左手が突き出される。その指の爪に奇妙な突起が見てとれた。そして、渾身の雷撃がその爪に全て吸い込まれ、攻撃は失敗した。


 爪と思われた突起は剣の形をしていた。その剣が光を放つといくつもの稲妻の弧が放たれ、こちらに襲いかかって来る。


「! 吸収したエネルギーを放出したのか」


 マントの重力変動で高速移動をしてかわす。よく見ると魔王の全ての指先、爪と指の間から剣が突き出ていた。十指の先、全てが剣になっている。


 おそらくは今まで倒した騎士や戦士から奪った剣なのだろうか。もしかすると聖剣もあるかもしれない。多くの魔人を吸収し戦士の武器すら飲み込んで体の一部とする。


この魔王はまさに魔人の王だ。


 魔王は、今度は右手の中指を突き上立てた。こちらの指の先からも剣が突き出ている。


「何か仕掛ける気か……」


 僕は剣を構えて防御体勢をとる。サンダーエクスプローションの刃と空間の間に、小さな無数のアーク放電が発生し剣の前方にプラズマの障壁が形成された。


 魔人の突き立てた中指を中心に炎の渦が発生し指先の剣に凝縮すると、その火球がこちらめがけて吹き飛んで来た。スピードはたいした事はないが、次々と火炎の渦の中心で火球が発生している。


 火球は僕の剣が作り出す帯電衝角(ラム)の前で、右に左に割り弾かれ辺りに飛び散った。


 周りの森は猛烈な業火に包まれ、火災旋風が発生したので僕はまだ燃えていない森の中に飛び避難する。身体がひんやりとした空気に包まれ心地よい。


 魔人と一定の距離を保ちながら木々の間を縫って移動した。


 この間合いではお互い相手の気配は感じるが、近くにいると分かる程度のようだ。具体的な場所が特定出来る程ではない。


「参ったな……」


 最初の攻撃でいくつか魔雑魚が消滅する光を確認した。確実に力を削いではいるがこちらの消耗も馬鹿にできない。長期戦は不利だと分かっているが、それしか勝機を見いだせないのがもどかしい。


 魔王の姿を確認できる場所で止まり、木の影に隠れて様子をうかがう。魔王は辺りを見回しながら左手の親指を突き出す。指先の剣から青白い光が伸び、魔王はその先を辺りかまわず向け始めた。


「何をやっているんだ??」


 魔王が親指を向けている方向から遠雷のような音が聞こえてくる。指の先がこちらに向き始めると音源が急速に近づいて来た。


「うわっ!」


 思わず身を屈めると周辺の木々が頭上で切断され倒れ始めた。まるで鎌で草を断ち切るように森の大木がごっそりと刈り取られてゆく。青白い光は刃だ。


 木の切り口は焼け焦げてはいないので熱線ではない。光自体が鋭利な刃物になっているようだ。地面に伏せて頭上を往復する刃をやり過ごす。


 遠距離攻撃戦やはり不利だ。こっちは剣一本、あっちは十本。今まで三本使ってきたが能力不明の残りは七本。どのような飛び道具を持っているか分からない。


 ふと思った。あいつは空を飛べるのだろうか? 魔王は攻撃を止めて辺りを伺っている。


「誘ってみるか……」


 魔王が背中を向けた隙に飛び上がりマントの最大高度、三百メートル程度まで上昇した。


「さあ、どう出る?」


 火炎弾や白い光の刃の射程はここまであるのか? 魔王の両肩が盛り上がり人の形になり、翼を広げたニ体の飛行魔人がこちらに向かって来た。


「今更そんなの無駄だって」


 この高度まで結界の影響が及ばない事は確認していた。近付いてきた二体の魔人を巨大な剣圧一撃で切り裂き消滅させる。結界の助けを借りずとも、もうこの程度の敵はまったく脅威にはならなかった。


「普通の魔人なんて……、もう出る幕ないよ……」


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