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創世戦記「第七話から始まる、読者の異世界ファンタジー」  作者: 川嶋マサヒロ
第一章「チートでニートな戦士の異世界ファンタジー、ニートの魔王と引きこもりのオレと……」
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第四話「戦士の軍団」

 通報はないが今日は森に入った。


「戦士ハウスにいてもやる事がないしな~~」


魔雑魚を狩りながら。いつもより森の奥に進む。


「おっ、魔人発見!」


 体長は二メートル以上あり今まで見た魔人より大きい。こちらに背中を向けている。名刺代わりに弓で攻撃する事にした。狙いを定めて放つと、矢は右肩に当たり肩と腕を吹き飛ばした。


「外れかあ~~」


 魔人が振り向きこちらに突進してきた。僕は剣を抜く。


「ローションの練習もしないとね」


 こちらに突っ込んで来る魔人に突っ込み返し胴体に一撃を加える。魔人は倒れたがまだ姿を保ったままだ。


「あれれ、バラバラにならないぞ。おっかしいなあ~~」


 一度うずくまった魔人は起き上がり、また襲いかかってきた。


「ならっ!」


 下段から剣をかち上げて残った左腕を切断、返す剣で魔人の首を切り落とした。


「サイズがデカイと簡単には死なないのかな?」


 地面に転がっている魔人の首に、持ち上げて止めていた剣を振り下ろす。


「やっぱり頭を潰せば死ぬんだ。人間と同じだね」


 頭部に続き胴体もバラバラになった。魔人は体格に比例して力も強くなるようだ、。いつものように魔雑魚を処理する。


「さて、今日はもう帰ろうか、戦士ハウスに戻ってから酒場にでも行くかな~」



 今日の酒場は客も少なく静かだ。一時大勢見かけた流れ者たちの姿もない。地元の人が数人いるだけだった。

 カウンターのいつもの席に腰掛けると、いつものようにマスターがミルクを出してくれる。


「マスター。異世界生活は長いんですか?」

「そうですね、もう十年目くらいになりますか」

「それじゃあ戦士の持っている武器なんて、どんなのを見た事がありますかね」

「剣は普通ですか……、弓矢に槍も時々見ました。斧などは見た事はないですね」

「武器はだいたいそんなものかあ。何か戦いに役立つ便利な道具なんてないのかなあ」

「一度、羽の生えた魔人と空中で戦っていた戦士を見た事があります」

「空を飛べる戦士?」

「はい。マントにそのような力があったと聞いています」

「空飛ぶマントか……、なんとか手に入らないかなあ」


 それからマスターは、ここに来た旅人たちに聞いた話など、この世界の色々な事を教えてくれた。


 皇都で最近話題になっている女戦士。最強と言われる白銀騎士の話。他の街の話。普通の商人や闇の奴隷商人の話。伝説となった戦士の戦い。百年前には栄えていた魔法が封印された話。戦いを有利に進める結界の話等々。


「あくまで伝説、噂話、どこまで本当の事か今となっては分かりませんけどね」

「うん。でもこの世界に奴隷なんて本当にいるのかなあ?」

「都市伝説のような物ですかね。この世界に来た子供をさらって売り飛ばすとか……」

「物騒な話だなあ」

「この世界にやって来るのは善人ばかりではなく、悪人もいるでしょうし……」

「それにしても魔法を剣に封印した話しは面白いなあ。僕の剣にも魔法が封印されていれば色々楽しめるのに」


 ひとしきりマスターと話をしてミルクを飲んで店を出た。今晩は空飛ぶマントを想像しながら寝よう。



 翌朝、僕は【戦士ハウス】のクローゼットを開けた。


「おっ、出来てる、出来てる」


 中から青いマントを取り出し、テーブルに置きローゼに見せた。


「どうかな、これ? 昨日の夜に想像してみたんだけど」

「マントですか……」

「うん、上手く創造できたよ」


 鎧と剣を装備してマントを羽織る。


「まだ、どんな力を持っているか分からないけどね、早く試したいんだ。じゃあ魔人退治に行ってきます」


 以前に一度、魔人退治をした場所に着いた。体がいつもの奇妙な感覚に包まれる。


「これが結界だったんだな。つまりそろそろ魔人登場という訳だ」


 ほどなくして、大きめのニ体の魔人がこちらに向かってくるのが見えた。


「二体とは珍しいね」


 いつも通り弓矢で先制攻撃をする。中心に命中するも前回同様に魔人は半身を吹き飛ばされただけだった。このサイズの魔人を倒すにはすでに威力が不足しているようだ。


 半身を失った魔人は、もう一体の魔人に取り込まれ、体長ニメートルから三メートル程にサイズアップした。 


「合体魔人か……」


 魔人の背中から横に飛び出した突起が広がり、蝙蝠のような翼に変化した。魔人は翼を羽ばたかせ空中を舞う。


「じゃあ、もう一度矢だ」


 放たれた矢は、もう高度上げた魔人には届かなかった。


「ちえっ、それなら……」


 抜いた剣を片手で振りかぶり、意識をマントに集中した。青いマントが風に煽られたようになびく。


「よしっ!」


 瞬間移動したかと錯覚するほど速度で僕の体は、魔人のそばまで運ばれた。


「残念、魔人さん」


 剣を振り下ろすと魔人は真っ二つに割れて消滅した。


「ふーん、この高さだと結界の力は届かない? いや来たな、向こうも混乱しているみたいだなあ」



 ある日、【戦士ハウス】を戦士志望の少年が訪ねて来た。


「僕は戦士になりたいんです、戦士様」

「君は何か武器を持っているのかな?」

「まだ何も持っていません……」


 彼をよく見た。まだ子供じゃないかっ! 僕と同い年くらいだな。


「まあ、皆で話しあうので明日また来て下さい」


 と言って追い返した。


「しっしっし」



 【戦士ハウス】で作戦会議を開く。


「と言う訳で新たな戦士の採用に賛成か反対か意見を聞かせて下さい」

「戦士様、武器がなければ魔人とは戦えません」

「僕も最初はそう思った。ただの役立たずだってね」

「戦士でなければ魔人とは戦えません、戦士様」

「うん、でも良いアイデアを思い付いたんだ。丸腰の彼がおとりになって僕が超安全に魔人を倒す。な~~んて作戦もありかと思うんだよね」

「しかし、戦士様ほどの実力があれば普通に魔人を倒せるのでは……?」

「わかってないな~~、今、世の中は異世界転移ブームなんだよ。これからも続々と、ごく普通の小学生や中学生たちがこの世界に転がり込んでくるんだ。僕はこのムーヴメントに乗るつもりさ」


僕は拳を振り上げた。


「戦士たちの軍団を作りあげるんだ」

「……」

「【戦士ハウス】の戦士軍団クラスタがこの世界を救うんだ。僕はその頂点に立つつもりなんだよっ!」

「……」

「僕の踏み台になるような、捨て駒同然の戦士を集めるんだ!」

「……」


 僕はこの巨大プロジェクトの大成功を確信した。しかしながら……、一週間たってもあの戦士志望の子供は姿をみせなかった。


「何なのかねっ!」


 僕の軍団計画がぶち壊しだ。


「ゆとり教育の弊害だなっ。学級崩壊だよっ!」


 僕はこの野望をあきらめたりしないぞ、そう意気込んでみたものの、当面は地道に魔人狩りを続けるしか方法が思いつかなかった。


「はあ、今日も魔人狩り。明日も魔人狩り。僕は田舎暮らしのスローライフ戦士だよ」



 その後【戦士ハウス】に一通の投書が舞い込んだ、東の山に凶悪な魔人がいるらしい。


「さて、今日集まってもらったのは他でもないよ。投書にあった凶悪魔人について何か知らないかい?」

「今まで多くの戦士がその魔人に倒されましたと聞いています」

「この世界の魔人たちを束ねる魔人の王。魔王と呼ばれています」

「そいつを倒せばこのゲームも終わりって訳だ!」


 パチン! 僕は右手の指を鳴らした。


「ところで魔王を倒したら、僕にはその先に何があるのかな?」

「……」

「……」

「……」

「何もないのかよ~~」

「大きな街から騎士団への誘いがあるかもしれません」

「騎士? 僕が騎士になれるの?」

「はい」

「ほ~~、イイね!! なんか急にやる気出てきたな。ついに本気出すよ、マジだよ」



 その日から僕は森の中で特訓を始めた、巨木を前に剣を振るう毎日だ。その時は唐突にやって来た。閃光、轟音と共に魔王に見立てた巨木が真っ二つに裂け燃え上がり倒れたのだ。


「ついに完成した。僕の必殺技がっ!」


 僕は魔王との対決を決意した。



 ついに決戦! 運命の日の朝。僕たち四人は【戦士ハウス】の前にいた。


「それじゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃいませ、戦士様」

「お気をつけて、戦士様」

「ご武運を、戦士様」

「うん」


 三人のアシスタントは深々と僕に一礼した。


 戦場へ向かう途中、またしても、例のおかしな歌が聞こえてきた。


◇◇◇◇◇

異世界挽歌

作詞;川島マサヒロ

ピューー、ピィーー、ピュ、ピューー、ピーー、ヒュウ、(口笛調)

今日も一人、森をさまよう俺、異世界迷子さ。

今日も一人剣を振る俺、最強の男さ。

誰の為? 何の為?

なぜ分からないの? 愛の為に、夢の為に、理想の為に俺は戦うよ。

さらば、昔の俺よ。さらば安寧の日々よ。さようなら、愛する人よ。

嗚呼、愛しき君よ。

嗚呼、戦士の挽歌よ。

ピュ、、ピィーー、ピュ、ピューー、ピーー、(口笛調)

間奏

「愛してるって、言ってくれよ?」(セリフ)

ヒューー、ヒューー、ピューー、ピィ、ヒュヒュヒューー(口笛調)

◇◇◇◇◇


「だから、バカかっ。この世界の神は何なの?」



 魔王のいる場所は以前に魔人退治をした場所のさらに奥で、だいたいの位置は分かっていた。街を抜けて森に足を踏み入れると、強力な魔の気配を感じる。


「ブッ倒してやるよ、魔王!」


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