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創世戦記「第七話から始まる、読者の異世界ファンタジー」  作者: 川嶋マサヒロ
第一章「チートでニートな戦士の異世界ファンタジー、ニートの魔王と引きこもりのオレと……」
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第二話「戦士酒」

 ここは街とは名ばかりの小さな街だ。大部分は農地と農家の村が占め、中心部にいくつかの建物と店が並びマーケットは一つあるだけだった。


「僕のような戦士にはもったいないくらいの田舎だな~~」


 それからの僕は依頼があれば魔人を退治して、暇があれば街をブラブラする忙しい毎日が続いた。久し振りに武器屋へ行ってみる事にした。


「こんにちは~。何か新しい武器は入っていますか?」

「おお、戦士様。いらっしゃい」


 店主は思いっきり両手を広げて、愛想笑いを浮かべながら僕を迎え入れた。


「……」

「戦士様、今日は何をお探しですか?」

「特に何って事はないんだけど、強い武器があればと思ってね」

「そうですか、そうですか。それではこの弓と矢はいかがでしょうか?」


 店主は直立不動の姿勢をとってから腰を九十度に曲げ、手のひらに載せた弓と矢を頭上より高く掲げた。


「……」

「最強の弓矢でございます」

「弓かー、僕は使った事がないんだよな」


 僕は弓と矢を手に取って眺めた。


「随分小さい弓矢だなあ、ホントにこれ最強なのか?」


 僕は店を出た。仲間ができたらこの弓矢を渡して弓の名手になってもらおう。


「僕が英雄になるための捨て石にはお似合いのチンケな武器だしね」



【戦士ハウス】に戻ると、また魔人襲来の一報が舞い込んだ。


「忙しいなーー、魔人も働き過ぎだよ。これじゃあブラック魔人だよ」


 早く代わりに戦ってくれる仲間を集めないと、このままじゃ過労死しそうだ。


「僕にはマネジメント業務がお似合いさ。今のままじゃ、ただの労働者じゃん」


 僕は森に急行した。魔人が僕の前に立ちはだかる。僕の足はガクガクと震えた。その魔人は凶悪なオーラを撒き散らしながら、ジリジリと僕に歩み寄る。何と言う殺気だっ!


「僕の命もこれまでか……」


 この凶悪さの前に、僕の命は風前の灯火だ。今度こそ死ぬかもしれない。命を落としてしまいそうだ。


「こんな所で死ぬのかっ、クソっ!」


 僕は覚悟を決めた。生きるか死ぬか、人生の最大危機に直面したのだ。


 この間、武器屋でもらった弓矢を使ってみる事にした。


「弓なんてやった事ないよ。え~~と、確かこうやって、こうか? あっ……」


 指が滑って矢は一メートルほど飛んで地面にポトリと落ちた。


「ちえっ、使えねぇなっ!」


 仕方ないので矢を拾って魔人に向かって投げつけた。


「えいっ」


 ズバーン、ドドドドッ、ギャアーーーーーー!!  魔人が消し飛んだ。魔雑魚も残らない。凄い力だ。


「ほう、やるじゃないの」


 矢を拾い上げる。


「これは僕が使う事にしよう」


 今回の戦いもなんとか勝てた。


「さて、そろそろ帰るか」


僕の異世界戦士としての大作戦はこうして終わりを告げた。



【戦士ハウス】に帰り着くと、辺りはもう薄暗かった。


「ただいま~~」

「お帰りなさいませ、戦士様」

「今日の戦いは苦戦したな~。疲れた、疲れた」

「ご苦労様です。戦士様」

「お疲れ様です。戦士様」

「さすがですわ。戦士様」

「うん、今日はもう仕事は止めよう、君たちも帰っていいよ」

「ありがとうございます。戦士様」

「僕は戦いの傷を癒す為に酒場に行くよ」

「戦士様! どこか怪我をされたのですか?」


 ローゼが大げさに声を上げる。


「フッ、心のキズさっ」


 酒場に向かう途中、何処からともなく、おかしな歌が聞こえてきた。


◇◇◇◇◇

戦士酒

作詞:川島マサヒロ

ルルル~~ ル~~ ルルル~ ルル~~。

僕は戦士、最強の戦士さ。人は僕を戦士様と呼ぶ。

サイコーです! カッコイー! ステキー! 好きです。愛してるっ!!

僕の前で跪き、涙を流す奴隷たち。僕を見つめて、頬を染める少女たち。

だけど僕のこの胸にぽっかりと空いた穴は何? 去来する虚しさは何?

今日もポイントは低空飛行。ブクマは外され感想欄は誤字報告。

嗚呼、そうさ、僕は底辺の戦士。

あ~~あ、あ~~、戦士の哀歌。今日も酒場で一人、悔し涙の酒を飲む。

ルルル~、ル~、ルルル~、ル~~、

◇◇◇◇◇


 酒場の前に着くと不気味な歌は聞こえなくなっていた。


「なんだこりゃ、異世界の神が歌っているのか? センス悪過ぎだよ、アホか!」


 酒場に入りカウンターに座る。


「マスター、ミルクを下さい」

「どうぞ、戦士様」

「ありがとう」


 マスターが僕の前にミルクの入ったグラスを差し出す。後ろのテーブル席から大きな声が聞こえた。


「おいおいおい、おいっ。酒場でミルクだってよ」

「ギャッ、ヒャッハーーーーー。酒が飲めねえガキはお家に帰ってお寝んねの時間だぜ」

「ウワッ、ハッハハハ~~」

「マスター、何なのあの三人?」

「彼らは流れ者です。この街での戦士様の御威光を知らないのでしょう」

「ムカつくな~。未成年者の飲酒は法律で禁止されているんだよっ!」

「戦士様、どうかこの場での争いは……」

「分かっていますよマスター、知らんふりで無視するから。相手はどう見てもザコキャラじゃん。表に出ろなんて面倒くさいし」


 ザコ三人の流れ者グループは調子に乗って続ける。


「まだまだママのおっぱいが恋しい年頃だろう」

「ウワッ、ハッハハハ~~」

「早く家に帰ってチュウチュウ吸ってな」

「ウワッ、ハッハハハ~~」

「僕ちん、ちん、もやりたいな~~」

「ウワッ、ハッハハハ~~」


 も~~、しつこいな~~。今時は女子中学生だって凄いんだから、ママの胸なんかどうでもいいよ。


 ちょっと待てよ。僕のアシスタントは三人とも巨乳だし、明日頼んでみるか。僕は戦士だし断ったりはしないだろう。よーーしっ。


「マスター帰ります。いや、今日は良い話が聞けました」

「戦士様、またのお越しを。ありがとうございました」



 翌朝、アシスタントたちにチュウチュウの話をしてみた。


「という訳でチュウチュウ吸ってな、と貴重なアドバイスを頂きました」

「それは出来ません。戦士様」

「えーー、何で? 何でよ~~」

「そのようなサービスは組合の規定で禁止されております」

「組合? 規定? 何それ??」

「R15の規定です」

「……」

「ですのでそのようなサービスはできないのです」

「もういいよ。ちょっと出かけてくる!」

「あの、戦士様、魔人退治の依頼が来ておりますが……」

「そんなの後回しだよ。僕は忙しいんだっ!」


 僕は外に出て看板を見た。


「【戦士ハーレム】にすればよかったな……」


 とにかく、あの組合のアシスタントは当てにならない役立たずだ。要は街で相手を探せばいいんだ。


「よしっ!」


 僕はいつもブラブラしている街中を、巨乳を探して歩き回った。それにしても……。


「いざ探すと巨乳っていないもんだね~~」


 どこか巨乳が群をなしている場所はないものか……、などと考えながら歩いていると、道の曲がり角で誰かとぶつかって尻餅をついてしまった。


「痛たたたたっ」


 お尻をさすりながら立ちあがる。


「申し訳ございません、急いでいたもので、大丈夫ですか?」

「ほうっ……」


 年は僕と同じくらいの女の子だった。中学生か? なかなか可愛い。胸は年を考えれば大きい方だろう。立派な発展途上乳だ。


「大丈夫、大丈夫。君、それよりこの近くに住んでいるのかな? 僕は……」

「ご免なさい、失礼いたしました」


 乳女子は走り去って行った。


「逃げられちゃったよ~~」


 あイタタ、痛い、痛い、痛い。骨が折れた。どうしてくれるんだ。僕は戦士だぞ。魔人が街に押し寄せて来たらこの街は地獄になってしまうぞ。責任とれよっ! どうしてくれるんだっ! って言えばよかった。


「失敗した、失敗した、失敗した」


 当てもなく街をさまよっても仕方ないので【戦士ハウス】に帰る事にした。



「ただいま~~」

「お帰りなさいませ。戦士様」

「うん、さっき言ってた魔人退治の依頼はどこなの?」

「はい、北の森に近い農家からの通報です」

「わかった。これから行ってみるよ」


 僕は北の森へと向かった、せっかくなので魔人が目撃された場所を目指しながら森の中で弓の練習をする。

何度か繰り返すうちに矢もまともに飛ぶようになってきた。


「戦士が弓を投げつけてたら、かっこ悪いしね」


 歩いている最中に魔雑魚を見つけては的にして何度か試す。なかなか良い感じだ。十メートルくらいなら二、三回に一回は魔雑魚に命中した。


「弓なんてやってみるとけっこう簡単だね」


 近くの農家で話を聞いた場所に着い。辺りを見回す。


「えーと、この辺だと思うけど……。いたいた、魔人発見!」


 いつも見かける魔人と同じような大きさの魔人だ。僕は背中から弓矢を取り出し魔人に狙いを定めた。


「そりゃ」


 矢は目標を捉え、魔人はパタリと倒れてバラバラになる。練習の成果だ。


「僕が弓の名手になってもなあ、弓なんて手下の仕事なのに」


 魔雑魚を処理して矢を拾う。


「魔人より巨乳少女のハートを射止めたいよな~~」


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