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創世戦記「第七話から始まる、読者の異世界ファンタジー」  作者: 川嶋マサヒロ
第二章「第七話から始まる、読者の異世界ファンタジー」
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第十六話「人類の最後」

 翌日、魔人出現の通報もないので、ナタリアと二人で武器屋とマーケットを回る事にした。彼女用の装備を調達する為だ。


「武器屋さんに行くのも久し振りだなあ」

「あの武器屋のオヤジさん。武器の見立ては確かだから、シンジ様の新しい剣も見てもらうといいよ」

「うん、ローションが君に合うかどうかもね」


 二人で店に入る。


「こんにちは~~」

「これは、これは。お二人ともご無沙汰しております」

「実はナタリアが戦士見習を始めるので色々と装備が欲しいんだ。それと、この剣も見て欲しいんだけど」


 僕は剣を鞘ごと腰から外して店主に渡した。


「なるほど、青い金属が着いていますね。これはオリハルコです」

「オリハルコン?!」


 よくは分からないがどこかで聞いた事がある名前だ。僕は意味も分からず興奮する。


「よしっ! この剣の名前はオリハルコンにしよう!」


 店主は鞘から剣を抜き眺めた。


「この剣はどちらで手に入れたのですか?」

「マーケットの店にあったんだ。お婆さんが僕にくれた。息子さんが百年前に作ったとか……、」

「なるほど、これは聖剣級ですね。使いここなせれば騎士にだってなれますよ」

「本当?!」

「凄いじゃない、シンジ様」


 店主は僕に剣を返しながら続けた。


「ただ、今は本来の力が封じられた状態です」

「封じられた状態? どうすれば本来の力が発揮できるの?」

「例えば腕の良い研ぎ師に託すとか、相性の良い小物などとの相乗効果が発揮された場合ですね」


 店主は奥から色々な小物を持って来て説明する。


「ただし、やはり最後は人の力です。このような小道具を必要としない圧倒的な力があってこそ聖剣の使い手なのかもしれません」

「そうですか……」


 僕はけっこう落胆する。続けてナタリアの装備について相談した。



 午後は練習も兼ねて二人で森に行く。ナタリアはいつものスカート姿とは違いパンツ姿で、半袖の革の上着にいくつかの装甲を装着している。やる気満々だった。


しばらく辺りを探して魔雑魚を見つける。


「これを剣で刺してみて」

「うん」


 ナタリアが剣を抜き魔雑魚に突き刺すと、それは白くはじけながら消え去った。


「コイツは弱いけど集まれば魔人になったりするから侮れないよなあ」

「うん」

「それから絶対に触らないように、何かおかしなものが体に入って来るようなヤナ感じに襲われるよ」


 一度飛び散った魔雑魚が手に着いた事があった。


「戦士様たちのお世話をしてきたから、大丈夫。よく分かっているから」


 十メートルほど先に魔雑魚が浮かんでいる。素早く矢を背中から抜き弓を構えた。少し移動して射線を変えて魔雑魚の後ろに木を入れて放つ。


 矢は魔雑魚をバラバラにしてから木に突き刺さった。


「お見事、シンジ様」

「うん、この弓矢は遠距離攻撃には向かないけど……」


 矢を木から抜く。


「中、近距離から如何に連続して放てるかがポイントだね」

「ふーーん、色々考えているんだ」



 それから魔人退治にはナタリアも同行した。共同で何体かの魔人を倒してナタリアも戦いのコツを掴んできたようだ。


 彼女は聖女として自ら結界を駆使しながら戦いを組み立てている。



 ある日、【戦士ハウス】で地図を見ていて気が付いた。街から森を通り山に続く小さな道が表示されている。


「この道は何なのかな?」

「以前はよく利用されていた道……ですかね~~?」


 アナがスマホを覗き込む。


「昔、森の奥に人が住んでいた村があったと聞いた事がありますが……」

「そこの村も放棄されたって訳か……」

「そうですわ」

「一日で往復できる距離か。行ってみようかな?」

「何もないと思うけど、どうして?」


 ナタリアが首を傾げる。


「うん、機会があればこの世界の事を色々と知っておきたいんだ。今どんな状態になっているか見てみたい」



 翌日、僕とナタリア、そしてアナも付き合ってくれる事になり三人でその村に向け出発する。留守番のローゼが見送ってくれた。


「山岳部に近い場所です。三人とも気を付けて下さいね」

「結界で周辺を探りながら進もう。敵が多いようなら引き上げるよ」



 何度も魔雑魚と魔人退治で通った北への小道を進む。道は行き止まりとなるが獣道程度が奥へと伸びていた。


「魔人は近くにいる?」

「ううん、いないわ?」


 ナタリアは首を横に振る。


「魔雑魚の気配は感じるよ~」

「道の近くなら退治しようか」


 途中、近場に雑魚の群生地を見つけた。中心部に特に大きな塊がある。


「もうすぐ魔人になるって感じね」

「うん、処理しよう」


 アナが見守る中、二人で目に付く範囲の魔雑魚を消滅させる。



 しばらく先に進むと少しずつ森が開けてきて、村の建物が見えた。


 石造りの小さな家が三十ほど通りの両脇にならぶ。どの家も朽ちかけていた。


 家の中に入るとテーブルの上には食器が並んでいる。床には手作りの人形が転がっていた。村人たちは急いで避難したという感じだった。



「街に住む事もできるのになんでこんな森の奥で暮らそうとしたのかなあ……」

「開拓者精神って言うのか、あの山に登っていた人も昔はいたらしいの。そんな人たちの拠点にもなっていたのかしらね」

「あの山に登る人がいたのか……」

「向こうに何があるか確かめたいんだって」


 森の更に奥には山頂に雪化粧を施した巨大な山脈がそびえ立っている。


「こんな村は沢山あるのかなあ?」

「うん、昔はもっと大勢の人が山の方で暮らしていたとか聞いた事があるよ~」

「少しずつこんな場所が増えているみたいね」


 この世界で人が生活できる場所は狭くなってきているようだ。理由はもちろん魔王と魔人の存在だった。


「シンジ様! 大型の魔人、数体が東からこちらに向かってきます」

「全部、五メートルくらいはあるよ」


 東側から西に向かう群れのようだ。スーリフの街に接近はしないだろう。最近よく見かける魔人の行動だった。


「帰ろうか……」


 この世界の人の終わりを感じさせる、無人で打ち捨てられた村が人類の末路のようで寂しく感じた。


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