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創世戦記「第七話から始まる、読者の異世界ファンタジー」  作者: 川嶋マサヒロ
第二章「第七話から始まる、読者の異世界ファンタジー」
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第十五話「新たな力」

 シンジたちはまた温泉施設に一泊する。この時間からでは夕暮れまでにスーリフまで帰り着けない。それにせっかくの温泉だ。


 夜の露天風呂に照明はないが、夜空に浮かぶ雲が青白く光り足元を照らしていた。


「ふ~~ ひと仕事した後のお風呂は最高だなあ。スーリフの街にも温泉があればいいんだけどね」

「以前はあったのですが閉鎖されてしまいましたわ」

「そうなんだ。あれか……、再開してくれないかなあ……」


 僕は閉鎖された異世界温泉の話を思い出す。


 ナタリアとアナはまた泳いでる。


「あの()たちったら」

「まあ、いいじゃない」


 僕とローゼはお湯から上がり近くの岩に腰掛けた。


 空に蛍のような光の点が薄い線を引きながら飛んでいる。


「ねえ、ローゼ、あれは何?」

「あれは妖精です。初めて見ましたか?」

「うん、この世界には妖精までいるのか……」

「現実の世界で亡くなった赤ん坊の魂と言われていますわ」

「ふ~~ん、人は死んでもこの世界で生き続けるのか……」


 二人がバシャバシャとしぶき水飛沫を上げこちらに走ってくる。


「ローゼも泳ぎましょうよ~~」


 胸が上下にぶるんぶるんだ。僕は立ち上がる。


「シンジ様、もう上がっちゃうんですか?」

「うん、またのぼせそうだよ~~」



 翌朝、皆でスーリフの街への帰途についた。ナタリアとアナは周辺の景色を見ながら遅れ気味だ。僕はローゼと並んで歩く。


「魔人たちはなぜあの街から離れないのかな?」

「人々が戻って来るのを阻止しているのです。本来なら私たちが奪還して周辺の魔人も駆逐しなければいけないのですが……」

「そこまでやるのは難しいのか……」

「はい……、あの街には魔人の発生源があります。そこにいる何かを倒さなければ奪還は無理ですわ」

「ボスキャラって訳だ……」

「少数の魔人が街から出て、スーリフの周辺にも来ているかもしれませんわ」



 無事にスーリフの街に戻った翌日、特に通報もなくあの街での戦いもあったので僕は一日休日にした。


 ローゼに誘われてマーケットへ行く、今日のスイーツ当番は彼女だった。珍しく和菓子が手に入り彼女は御満悦だ。


「以前、キョート旅行で頂いて以来、和菓子ファンになってなってしまいました」

「ふーん、僕はあんまり食べた事ないけどね」


 日本人があまり食べないないなんておかしな話しだけど、人が外国のスイーツにハマるのは万国共通かとも思った。


「ちょっと待っておくれ、そこの戦士様」


 突然声を掛けられ、振り返ると小さなテントの下にお婆さんか座っていた。


「はい、僕ですか? お婆さん」


 マーケットの出店なのに台の上には何も置かれていない。


「あなたのような戦士が現れるのをずっと待ってたよ……」

「僕を?」

「この剣を使ってみないかい?」


 老婆は麻の袋の中から剣を取り出した。


「私の息子が百年前に作ったんだよ。ぜひ見ておくれ」

「はい」


 僕はその剣を受け取り抜いてみた。握る部分の上から刃の根元に女性の彫刻が施されている。裏側には奇妙な窪みがあった。


「ローションより長い、標準の形かなあ……」


 ローゼがニコニコしながらこちらを見ている。


「ローゼ、見て」


 剣をローゼに渡す。


「とても美しい装飾ですわ。精霊の姿が刻まれていますね」

「息子に色々と助言をしてくれた精霊さ」

「北の精霊フェンリルです。彼女が人間に助言をするなんて初めて聞きましたわ」

「ふーん精霊かあ……。あれ?!」


 気が付くと、老婆とお店は消えていた。


「あのお婆さん、シンジ様との出会いを百年間待っていたのですわ」

「百年か……、待てよ!」


 僕はリーワーフで手に入れた、青い金属片を取り出す。柄の部分の窪みに当てるとそれはピタリとはまり貼り付いた。


「こんな事って……」


 僕は青い奇跡のレアメタルが装着されている剣を手に入れた。



 帰り道、アナが話しかけてくる。


「シンジ様、よい剣が手に入って良かったですね」

「うん、ただ、まだどれくらいの力があるか分からないけどね」

「以前、旅の途中に私のいた街へ立ち寄った、ある騎士様のお世話をさせて頂いた事がありました」

「騎士か……」

「騎士様はこう言われました。戦士と剣の新たな出会いは、この世界では新しき運命を切り開く……」

「この剣は僕の運命なの?」

「はい、シンジ様」

「その騎士って……」

「白銀の騎士、ロレンツ様ですわ」


 ロレンツ……、あのキャラクター紹介にあった名前だ!


「いくつもの街を救った英雄です」


「以前から使っていた剣はナタリアに譲ろうかと思っているんだ」

「まあ、喜びますわ。戦士になるのが彼女の夢です」

「うん、でも女の戦士なんてありなのかなあ?」

「大きな街には女性の戦士もいるらしいですわ」

「そうなんだ、女戦士か」


 女戦士の紹介もあった。名前はレイ……。


「ローゼ、今日の事は分かっていたの?」

「はい、少し予感がいたしましたわ」

「そうか、僕をマーケットに誘うなんて何かと思ったけど。ありがとう、ローゼ」

「いいえ、戦士様をお導きするのが私たちの務めですから……」


 【戦士ハウス】に帰ってサンダー・エクスプローションをナタリアに渡すと彼女は飛び上がって喜んだ。


「本当に私に譲ってくれるの?」

「うん、もちろんだよ」

「やったあー、ありがとうシンジ様」


 ナタリアは僕に抱きついてきた。もっとも身長差があるので抱きつくと言うより彼女胸が僕の顔に押し付けられる形になった。


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