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春は曙ブレ〇キ

ここ掘れワンワン、ここ掘れヤンヤン?


金銀財宝ザックザック!


鍬だとみんなメチャクチャに破壊していてしまいそうだからスコップで慎重にサルベージするのがいいと思います。


この世界の道具は、破壊力とか攻撃力増加の呪文が刻まれてるそうだから尚悪いね!


「そうね。スコップだから剣や槍に比べたら不格好だけど、何も無いよりいいと思うわよ?」


「いや、普通のスコップ持ち歩く方が気が楽っすから」


「でも、あなた達、着ている物はアレだけど、昨日渡された短剣すら持ってないじゃない」


「…そういや影丞、道具ん中に短剣とか長い刃物入ってなかったか?」


あ、なんか使い古した感じの鉈みたいの入ってたから鎌と一緒に道具部屋に戻してきたね。


「いや、“みんな借り物”って話しだったからさっき返してきたけど…」


返却口は別の人だったな。錆浮いてて年代物みたいだったからあれも草刈り道具だと思ってたんだけど。


「…影丞悪い」



え、なんでお前謝ってんの?


「あれ別口で支給してくれた奴だ」


「…いまさら謝られましても?」

ポパーイいまさらホウレンソウとかやめて?


「そう、一日で返却したんだ?」


「さーせん」


健が軽く謝るけども、お姉さんの顔が怖い事になってます。


「…明日また、探しておくけど必要かしらね?」


「あざっす!お願いします」



ペコペコと頭下げてるけど、受付嬢のコメカミに血管が浮いているのが見えるようだよララァ。


ほんと、ノリが軽いというか…度胸あるよお前。


「だいたい、なんで返却するの、普通はすぐ使えるように持ち歩くようにしておくものよ?」

あー、まあそうなんですけどね。

二人ともインベントリに色々入ってるから気にしてなかったんじゃないかな…。

けど、健の考えは少し違った。


「え、だって草原って魔物居ないんすよね?」


意外そうな顔でお姉さんに聞き返してんぞ?

確かに向こう側は居ないらしい話はしてたけど、手持ちの武器があるから余裕と考えてたんじゃないのか?


「あのね。柵があっても牧場の牛は狼襲われたりするでしょ。生息環境が明確に線引きされてる訳じゃないんだから、普段はいない草原だって安全じゃないのよ」


お姉さんプンプンだ。


「じゃ、やっぱり武器下さい」

とかいいながら、ケチケチすんなとばかりに手を出すな。

そもそも、お姉さんは二人の格好を見て元々使ってる武器が有りそうだと考えてるんじゃないか?

昼間から、騎士と蛮族だからね。

時折見かける冒険者の装備と比べても立派過ぎて、駆け出しにも満たない15才が着て歩くモノじゃないよ。


「どの道、影丞の武器ほしいよね」


「オレ、武器よりご飯たべたい」


「「あっ」」


会話に隠れて聞こえないけどオレのお腹は鳴ってます。



街の中で、星が沢山見えると言うのは結構怖い。

降るような星空とか良くある表現だが、街中に居ながらにして空に呑まれていく気分を味わうとは思いもしなかった。


「…綺麗と言うよりもはや怖いよ」



「流石に日本より星が沢山だからね」


「あー、分かるから前みて歩けよ」


「歩いてます歩いてます」


先頭に真一、オレの肩を掴んで健が殿。

中世的な世界観となると、9時を過ぎれば、もう深夜と言い換えていい時間だ。


だと言うのに、後ろから横道から走ってきた人が、人通りの絶えた道にこれ見よがしに呻きながらうずくまる不具合。


幸いイベント的な美少女はいないのだが、薄汚いオッサンやガラの悪そうな人らだから不自然すぎて恐ろしい。


しかも、レンガが敷き詰められゴミ一つ落ちてないのに、バキバキバキと太めの枯れ枝を砕くような音が響く。


外なのにラップ現象多発とか、街の成り立ちについて深くは考えない方がいいのだろうか?


とにかく、そうこうしている内に、目的地である肉球のマークがついた宿屋についた。


深夜に近いからか、食堂の中は静まり喧騒の残り香と言うべき熱気が冷めていく所だった。


厨房の方からシャコシャコザバサバと鉄っぽい物を洗う音が絶望感を与えてくれる。


―カンバンって奴?


「うわ、なんか入りづらい…」

「影丞、最悪あきらめて宿だけでもいいか」


「…諦められたらな」


ミイラがミイラ取り…いや、ミイラ取りがミイラか。


宿代飯だい稼ぐつもりが、欲張り過ぎたせいで、宿代だけで終わりとか言われても腹の虫が納得行かねぇ。


「とにかく入る「ごめんくださいまだ飯ありますか?」


―いつか、健の勇み足が酷すぎる件について検討をしたいと思う。



「火は落としちまったけど簡単なもんならかまわないぞ」


厨房から出て来たのは、身の丈二メートルはあろうかという熊のような大男だった。


コック服そっくりな物を着ているのだが、肩口や袖に赤黒い飛沫が飛んでいた。


「なんでもいいんで、とにかく三人分お願いします」

「…あ~、そんじゃパンと冷めかけたシチューだけでもいいか?」


「肉もお願いします」


「…影丞無茶いわない」


反射的に注文つけたら真一にはたかれた。


「ちっちゃい嬢ちゃんは肉食いたいのか、ハムくらいなら出してやるよ」


「やった、ありがとう!」


「全員分だしてやるから安心しろ」


「あざっす。」


「わかった、適当な場所に座ってまってろ」


「あざっす、影丞そこ座るぞ」

ちな、会話中はずっと健に両肩掴まれてたんだけど、手近なテーブルにオレが座ると健がやっと手を離してくれた。


「…これで一安心だ」


「なんかすぐ見失いそうでドキドキしちゃったよ」


二人が一息ついているが、ここに来てなにが二人をそこまで警戒させたのか理解しかねる。


豆粒ほど小さくは無いはずなんだがね。



「あと、飯の後でそのまんま宿もお願いたいんすけど空いてますか」


「お~、部屋はあいてるけど、一晩銀貨一枚で先払いだが大丈夫か?」

「うっす。三人部屋とかありますか?」


「四か二か一しかないぞ。四人部屋は一晩銀貨四枚だ」


「じゃ、二人部屋と一人部で頼んます」


「わかった。おおいマリー泊まりの客だ頼めるかー?」


『はーい』


「すぐうちのカミさんくるからまってろ」


テーブルに、サラダやパンを運んで来た熊の声に答えたのは、若い女の人の声。


奥さんがいるらしい。


出てきたマリーさんは、20後半くらいの短い茶髪の女の人だった。


宿の名前は昔から“小熊亭”なのに、店内を見渡しても小熊らしさは何処にもない。


後で話しを聞いたらクマの大将の名前はベルカ婿養子で、頭が上がらないらしいんだけど、美女と野獣を地でいく夫婦だった。


―小熊は食われてしまったに違いない。


そうしてやっと夕ご飯。


見た目がやたら綺麗なサラダにハムにパンとか、なんかモーニングセットみたいな感じの夕食だけど、ほんとはパンよりご飯が食べたいよねぇ。


パンはおやつこれテストにでるよ?


「そして、いがいとお腹に入らないと言う罠…」


あれほど、鳴り響いたにと言うにもも関わらず、拳大の丸いパンを一つと、シチューを半分平らげた所で腹に程よい満腹感がやってきた。

確かに腹は満たされたけど、いつもに比べて少なすぎる。


「そんなん、体小さいからじゃないか?」


確かに一回り小さいけど、いくらなんでも脳と体の内容量に差がありすぎで頭が満足出来てないんだよ。


「いらないなら残り貰うよ」


言うが早いか、真一はサッサと残りのパン二つとサラダを自分の方へ引きずっていった。


まぁ、無理して食べたくはないけど返事を待たずに持ってくのはどうなんだ?


夜中に腹が減りそうだから、あわててパンを一つだけ取り返し懐に入れた。

「…今のお前、リスとか子猫みたいな動きしてたぞ」


健に指摘されたけど、そんなん知らないよ。


なんか、この体だとおなか空くサイクル早そうだし確保しとかないと後がないもん。


「コンビニもないからかえないじゃん」


「…俺もそれやろ」


「ボクもとっとくかな…」


二人して鎧の隙間にパンをねじ込んでるけどインベントリに仕舞えば良くないか?


「…追加で頼んどいたら?」


「それもそうか。さーせん!パン二三個追加してください」


「…一斤食って足りないとか、お前ら二人はよく食うな」


カウンターにいたクマの大将には一部始終をガッツリ見られてたのはご愛嬌。


大将の言いようだと、健と真一は、追加追加を繰り返してる間に食パン一斤分づつたべてしまたようだ


「もし夜中に欲くなったら、街の真ん中に行きゃあ一杯引っ掛けられる屋台ならいくらでもあるぜ?」


「いや、俺らまだ15なんで酒は飲めないっす」


「…そのナリでか?」


「うっす」


「わかった。二人部屋に三人入れるようにしてやるからまってろ」


健と話していた大将がオレをチラチラ見て何やら決めてくれたが、一体どんな答えを導き出したのか…。

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