つくしの甘辛煮は…
エグかった。
灰汁が抜けてなかったのか作り方が悪かったのか分からないが…。
―土筆がエグかった。
無理して食べた健が、外でエヅいてる位にエグかった。
尋常じゃねっす。
「半日くらいは置かないとたべれないのかもね…」
「苦いとかそんなレベルじゃなかったな…」
ただひたすらにエグい。もしかしたら種類が違ったのかもな。
「残りは廃棄して、明日は姫サヤだけ集めるよ」
「…そうして、流石にもう食べる気になれない」
真一と二人で、ツクシは片付け姫サヤの炒め物を食べる。
「…おぉへぇ」
「健大丈夫か?」
「なんとかな。まさか、エグさも不味さもオオバコ超えるとは思わなかった。無理して食べると後に引くとか厳しすぎたぜ…」
顔を青くして健が嘆く。健がゲロッたの二日酔い以来二度目か。
「…もう何も食べる気になれねぇから横になるわ」
「わかった」
「また、無理するからそんな目にあうんだよ」
「イケるんじゃないかっておもえたんだけどなぁ…」
どの辺が?とは言えない。作った本人だし、オレもイケルかもなんて考えたから、テーブルに並べたくらいだからな。
茣蓙を敷いて横になる健。
使わないんだリヤカー。ハンモックは揺れるから仕方ないか。
土掘ってるけど、ゲロ袋代わりっすか。
土かぶせた後知らずに通ったら下呂塗れになる仕組みですな。
そしてなぜか茣蓙を移動する健。
「…なんか。土ほったらクソでけぇミミズが出てきた」
見ると指先ほどの太さのミミズが蠢いているのがわかった。
移動するなら、せめて土かぶせて隠しておくれ?
「地面で寝たら、変なもんに寄生されたりする所とかもあったりすんのかな。あったら怖ぇよな?」
「寄生生物は知らないけど、山ビルとか普通に居るらしいから、気をつけないとね」
「周り炭撒いてあるから大丈夫じゃない?
床も、アルコールファイヤーで消毒してあるし」
「アルコールファイヤー?」
アルコール撒いて火を点けて歩きました。ある程度土が乾いてるのはそのせいですな。
煮炊きしてる間に、燃え尽きた炭も捲きまくったしな。
「オレが、被害者その1最大候補になるんだから、変な事いうなよ」
てか、なんで健は腹這いでコッチに移動してきてんだ。
「ワリィ。影丞なら絶対無事だと思うわ」
「影ちゃんだと、なんだかんだ最後まで生き残って、最後に相打ち狙いの一撃で、敵を根こそぎ倒しかねないよ」
どんな自爆装置積んでたら可能ですかね?
「オレには自爆ボタンなんかついてないわ」
「胸に二つくらいついてるんじゃね?」
「乳クリックしたら暴発するから押さないけどね」
「乳首クリックされたら、そりゃオレでも怒るわな?」
乳首クリック、略してチクリックか、ビックリするからチクビックリ?
アホな事考えた。
「脇あっ「んだぁっ!?」ぎゃぶっ!!」
脇 つ い ば ま れ た
脇ありっじゃねぇよ!くすぐったいとかじゃなくて、摘まんで引っ張るからクソ痛ぇっ!
「テメ久々にやりやがったな!?」
その犯人。反射的に投げつけた皿を被ってひっくり返った健を後ろ足でふんずける。
「…影ちゃん。もう十分報いは受けてるよ」
「アラ不思議?」
端によけたハズの、つくしの佃煮で口いっぱいになった健が、目を白黒させていた。
「残さず食え」
煮汁が溢れるように、ギチリとつくしを押し込む。
「ほぉがもぉへぇ!?」
可愛くないハムスターになった健は、奇声を上げながらテントを飛び出した。
『………………………えぼぉぇぇっ!?げばばばばっはぁぁっ!?ぐらっはっぶべべべべっ!』
なんかの儀式でもしてるのかね?
「…ああ、脇痛い」
「影ちゃんも、コッチきて容赦なくなってきたよね?」
「人が大人しくしてんのに、余計な事ばっかするからだよ」
人は経験を経て強くなれるってヤツ?
目下の所、身内相手にしかしてないから、内弁慶でしかないけどな、健は日常的に暴走するし、真一は真一で行動がおかしいし。
まぁ、機織り機のあるロフトに、作業台置いたら、人前で作業しなくなったからよしとしよう。
そういや、今日は結局魔物一匹会えなかったらしいし。
冒険者への道のりは長いと、言ってごまかしておく。
今日の収穫は姫サヤだけだ。
明日は肉を…。てか、生き物の解体なんかできるのか?オレ…。