平原を歩こう
暖かな春は近いが、見渡す世界は枯れ野原。
まだ肌寒いが、日差しが漸く暖かいと思えるようになってきた。
「…すげ、何にもない」
街道沿いに移動し、魔の森と呼ばれる場所の中間地点にやってきた。
リヤカーとテントを拠点に、数日間はここらを拠点に活動する予定だ。
「カマドはこんなもんかな?」
真一は、石と泥で竈を作り炭と薪で焼き固め、調子が上がった健はテントの周りの土を掘り返し、土嚢を積み上げ壁を作っている。
インベントリあるからいいけど、素材どうすんの?
オレはオレで、枯れ草を集めテントを覆い隠していく。
なんせ、ちょっと離れた場所に件の森が見えているが、オレ達の真の目的地はそこだ。
街道から離れた場所に隠れ家に、健と真一が魔物狩りを決行するのだ。
テントを隠すのは、盗賊対策だが盗賊がいるとは聞いた事もない。
だが、対策は必要だ。
低く平たいテントだが、掘り下げてあるので中は意外に広い。リヤカーは、骨が組まれ中央に据えられているが、これはテントを支える柱でもある。骨には事前にハンモックがかけられるように工夫がされている。
野営じゃないな。
オレは、インベントリから吐き出された炭とお留守番だ。
なんせ、今回の目玉は憧れの取れたての魔物肉だからなー。
上手い肉期待してんぜ?
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地図を作業台に広げ、最終確認。
「現在地はここで、活動は目印になる小川近辺のみでいいな」
「今日は、小川沿いに上がってみて、日が落ちる前に戻ってくるよ」
「了解」
フル装備で二人は歩きだす。
オレも川沿いに生えている雑草の中に見覚えのある草がないか確認していく予定になっている。
暖かくなり始めたから、ツクシや菜の花が出てきてないかと言った所。
似たような光景の、富士山演習場は県道沿いは山菜の宝庫らしいから、山菜生えてないかな。
どくだみは群生してるから問題ない。
公園に生えてる姫サヤエンドウとツクシも生えてるは、さっき確認した。
姫サヤは、種の入ったサヤさら集め。
ツクシは傘が開いてない奴だけを集めていく。
ツクシは甘露煮で、姫サヤは塩茹でして食べよう。
まだ寒いからか、川の中に生き物は居ない。カジカとか小魚いたら佃煮や天ぷらが出来るんだけどね。
姫サヤとツクシでカキアゲにしてみるか。
デカイミミズが沢山居るんだけど、試すべきでしょうか?
でも、下処理が大変そうだよね。よし、ミミズと昆虫食は最後の手段にしよう。
日暮れ前に、コンビニ袋一杯分の姫サヤと、バケツ一杯のツクシが採れた。
下茹でして二人を待とう。
姫サヤは、水洗いして茹でるだけ。
つくしは、バランみたいな“袴”を外して、茹でて水に晒して灰汁抜き。
ゼンマイとか灰汁抜きに灰の水使うから、灰をちょっと入れて一晩様子みよう。
即日で作れたかな。
結局、姫サヤだけか?
少ないから、ご飯炊いて二人が帰るまでの間に追加で採取しよう。
ご飯に刻んだ姫サヤ入れて豆ご飯。
いや、サヤご飯か?
ここは、据え膳姫はじめですな。
なんかつらくなってきた。
暗くなるからゆっくりしよう。
案の定帰ってきてない二人