機織りから裁縫
初期どくだみからの回収話。
健と真一の役割が食い違い発覚。健が防御役だった(汗
耐久力にたようなもんだし、いいか…。
真一は盾持ち遊撃って事で
さて、真一が内職していた機織りなんだが、結構な数が溜まっているらしい。
ある日、「ちょっと、服屋さんに売り込みに行ってみる」と出掛けて、夜遅くまで帰って来なかった記憶は確かにある。
その辺りから、売り込みの結果は語らずに、徹夜明けやハッスルしてる日が増えたから色街っいい出会いがあったのかと思っていた。
けど、ちょっと相手が違ったらしい。
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年も明け、雪降らずとも霜柱と氷の張る寒さ。
健は、本格的に暇を持て余し、どこからともなく持ち込んだ枯れ草で草履や編み笠を編まんと、囲炉裏の脇で土間の床のカサ上げに研鑽する続いていた※編めてるとは言ってない。
オレも、家事以外の時間が出来。室内だけなら、買い足した女性向けのズボンで過ごすのに慣れた頃。
「…あ、またズボンの糸が解れてきてる」
「んお?それ、こないだ真一に紹介してもらった店で買った奴だよな。どっか引っ掛けたんじゃないのか?」
「う~ん。そうかも知れないけど、ちょっと縫製悪すぎないかな」
「俺らのズボンはなんともないし、職人が新人だったとか?」
「そうなのかな。珍しく高くないズボンだったし」
真一が帰ってきたら縫い直して貰おうと思いながら、軽くズボンに手をかける。
シュル…パッパッパパパパンッ!
「ほ?ひゃぇっ!?」
「ブハッ!?なんだ今のはぁっははははは!」
限界まで伸びたゴムが弾ける勢いで全ての縫製が弾け飛んだ。
健大爆笑。オレとっさのペタンコ座り。
思わぬ追撃に、精神的ダメージは絶大だっ!!
「あああっ!!アッタマきたっ!!絶対文句言いに行ってやる!!」
怒り心頭。袴に履き替え、愛刀(万能包丁)を手に踵を返しいざ出陣!
「影丞落ち着け、さすがに包丁はマズい!?」
「お放しなさい健様!今クレームを言わずしていつクレームを言うと言うのです!!」
「キャラ入ってる!?そういやコイツ、キレやすい令嬢とかウリにして遊んでたような!?」
「キィー!不本意ですわ!!理不尽ですわ!!」
「本気でまて、なんでそんなにブチ切れた!!」
「何でって言われても…」
「なんかイキなりテンション下がったな」
「…暇だから使命かなと」
「確かに暇は人を殺すとか言うが、暇だからで殺された方はたまったもんじゃねぇだろがっ!!」
叩かれた。
まぁ、勢い任せてみただけだからな。
でも、文句は言いに行く。言いに行かない道理はない。
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息を吸って、店内を覗き込み。
「ご…(めんくださ)…い」
意外な位小さな声が出た。
声を抑えて笑う健。お前にゃ未来が見えてたか…。
「バカだろ。人見知りが無茶をするから…」
健に、バッチンバッチンと頭を叩かれる。
知らない人への大声無理で、かの大声波動砲は死に技になるくさい。
無理尽だ…。
まぁ、これはいつもの事。
基本的に異世界が皆デカいのが悪いんだ。
外国人顔だし、下から見ると近所のお姉さんですら厳つく見えたりするんだ。輪郭くっきり劇画調って奴さ。怖くね?
「バカ言ってねぇで、ドンドン入るぞ」
「心の準備が!心の準備がぁっ!?」
抱え上げられながら人気のない店内入店。
薄暗い中に反物や糸が並べられて薄気味悪い。イメージとしては田舎の小学校脇にある文具店。
こっちじゃ、照明なんかないし明るい店なんか少なくて、昼間から暗いのがデフォルトなんだけどね。
窓や入口を大きくすると、商品の劣化が早いから、余程商品の入れ替えが激しくないと、こんな形に落ち着くんだそうだ。
風化と光による脱色だねー。
百円バケツを、空の状態で外に置いとくと、ピンクが白くなって壊れやすくなるし、押し入れ入れとくと、使わないのにいつまでもソコにあるから、押し入れ開ける度に邪魔になるからな。
うん。わかるわかる。
とりあえず、健が声をかけてるが、店に人が出てくる気配がない。
奥の、作業場らしき方に人は居るみたいなんだが…。
キャーに、ハートマークつきそうな感じの勢いの悲鳴を上げなから大騒ぎしてる。…のかな?
「…チチクりあってる真っ最中か?」
「ガチでアレすかね。何かを穴に差し込むような?」
「…出直すか?」
「いや、そこは見てみないとわからないよ?」
「…無駄に元気になったな」
デバガメ覗きは兵の華と言うではありませんか。
「…よし。俺から行こう。指示に従え」
「イエッサー!」
「バカ者。声が大きい」
「イエッサー」
「…よし、続け」
見えないライフルを構えた健と、見えない拳銃を舘ひ〇しバリの体勢(左手は胸に置いて)で構え、静かに歩き始めた。
微妙に、弓構えてる感じがするんだが、摘まんで弾いたらどうなるんだ?
乳首消える?
そうして、我々男女混成特殊部隊は、敵のアジトへと足を踏み入れたのだった。
―10秒後。
え、早いと言われても田舎の文具店サイズしかないんだから、かなり時間かけた方よ?
子供時分ならともかく、あんなん二三歩あるけば終わるっしょ?
扉に手をかけた健が此方を振り向き小声で話しかけてきた。
「隊長、突入の合図を」
―お前隊長じゃないんかい。
「…とりあえず中の様子を」
「あらほらさっさー」
「…くぷっ!?」
吹き出しかけたオレを見て満足げに拳をにぎる健。
それがやりたかっただけか!?責任問われたくないからリーダー委任した訳じゃないよな?!
「よし、ごめんくださーい」
「ちょおっ。おいっ!?」
立ち上がって、普通に開きおった。今までのフリは何だったのってくらい。
開いた先には、店員さんと会話をしていたらしき真一がこちらを見ていた。
「…あれ。健と影ちゃんじゃん。何しに来…」
すぱーんっ!!
光の早さで健が閉めた。
「「……………」」
その顔は心なしか青ざめている。
色とりどりの下着がテーブルに並んでいたのだが、それはいい。何より問題なのは、真一がカラフルなブラを自らに当てポーズを取っていたのだ。
「影丞。真一はもうダメかも知れない…」
「かもで済んでるだけマシだと思う」
諦めるな。更正の道はなくても…ないからもうダメだ。冷や汗所か油汗がでてきたわ。
「あっれー。興味ないかと思ってたのに、いきなりどうした?」
なんの動揺もなく普通に扉を開けて話しかけてくる真一の姿に涙を禁じ得ません。
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「補正下着の開発…」
「まぁ、自分に当ててたのは正直ウケ狙いなだけだから。でもあのタイミングで来るのも笑えるね」
事情説明されても、あたしゃ乾いた笑いしか出ませんが?
針子さんを巻き込んで、新作発表会とかファッションショーに備えた予行演習をしていたと言う。見えない位置には、モデルに雇った女の人がいて、彼女たちにポーズの指示をだしてた最中らすい。
ブッ飛んでんな?
「コストかかって高くなるし、一般的に普及するのは難しいから、色街のお姉さんに売り込みに行くための仕込みだから、手抜かりは許されないよ」
うん。とても朗らかな表情の真一。お前どこ向かって進んでるんだ?
「せっかく作っても、影ちゃんは絶対着てくんないし、どうせなら、誰かに活用して欲しくなるでしょ?」
職人か?もうイミフだよ。




