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それが影丞

人通りが増えたので、路地の川縁から宿屋の裏手に避難。


「エースケ、ここじゃアチイだろうよ」


「路地裏より休まります」


宿屋の大将が気にしてくれるが、熱の大半はローブと仮面が遮断してくれるから、あちらの涼しさより穏やかに過ごせる場所でいい。


「そうか?あんま暑くなったら言えよ」


「うぃすっ!」


まぁ、暑いから清涼剤塗りたくって白い肌は真っ青。

お陰様で汗は出てないけど、邪悪過ぎて人前じゃ顔も出せないね。


「水浴びも気軽に出来やしないし…」


他の部屋の人々が、井戸で水浴びしますからね。

ちょっと強い人は、この時期はダンジョンに向かうそうだけど、長屋住まいの冒険者(若い男)はそうはいかない。


近くの討伐依頼をしたり、日帰りで町と森を行ったり来たりの毎日を送るお兄さん達ばかりだ。


たまーに、宿屋に泊まる新顔さんと長屋から出て来た所で鉢合わせると、顔を凝視された挙げ句に、胸を見て機能停止するんだから困ったものだが、普通の少女なら長屋なんか出入りしないから、何事かと思うんだろうね。


わたくし冒険者予備隊であります!!


でも、食えるみたいだから冒険者には成らないかもしれません。


帰る事考えたらならないと話にならないのだけど、そもそも帰れるのかすら予測不能。


二人に至っては帰らない方向もあり得るからな。


オレは二人に任せるしかない。

総合力が冒険者向きではないし、冒険途中で二人に置いてかれでもしたらお終いだからな。


薬師とかして生き延びられるだろうが、アレだって移動するときは二人のインベントリ頼みだ。


自分で、持ち歩ける物となると、子供の遠足にやや毛が生える程度だけだからね。


非力には変わりないが、被害さえ考えなきゃ、敵とかは撃退出来そうなのが幸いであるよ。


痴漢とか盗賊とか人攫い?


街中に居れば、騎士団だの警備隊だの自警団だのに、ある程度は守られる。


最近、路地裏に人が集まってるせいか、かっけー騎士がよく通る。


その後をつける若い女衆もよく見かけるが、あれらは若い女の皮を被った、若い男に飢えた肉食の野獣共ですな。


―騎士様逃げて?


言ってみたかっただけ。



夕飯時。


「とりま。ローブ着てれば大丈夫だろ」


「弓道の胸当てと肩パットも作ってみたよ」


健はともかく、真一はなぜトゲトゲのヒャッハー肩パットまで作って渡してきた。


「サラシだけで限界ならこれしかないかなと…」


「男ならトゲトゲパットは基本だしな」


「ローブ・トゲトゲ肩パットの胸当てに、仮面を装備?」


―世紀末邪神官伝説?


奇跡の邪神様に魂の祈りを上げろー!!


ヒャーッハーッ!!


自分で言ってて意味分からんくなった。


見た目パンクにした所で何が変わるやら…。


「まぁ、とりあえず貰っとく」

「一人の時は付けとけよ」


「胸当てはローブの中、肩パットはローブの上だからね」



それじゃ、ヒャッハー肩パット付ローブに仮面か。


大差ないな。


いや、胸当て割に湾曲してるし、よく考えたら胸当てってブラみたいなもんか?


「…真一、ブラに慣れさせようとこんな手前かけるとか、お前何気にやるな?」


手練れの手腕に感心せざるを得ない。


「いきなり何の話?!胸当て欲しいって言ってたから作っただけじゃないか!?」


そりゃそうだが、形がエロくね?


「影丞用だからだろ」


「なんでだよ」


「乳がデカいからだろうが」


「胸当てってそんな形変えるようなもんか?」


「玉と一緒で、破裂するほど締め付けても苦しむだけだろうし、そんなもんだろ」


「破裂したら苦しむ程度じゃすみませんがな」


まぁ、胸当ては着けてみるか。

「う〜ん、似合うって言ったほうがいいのかな」


「…いやそんな配慮はいらんだろ」


「あれ、ちょっと動き安いぞ?」


明らかに腕の稼動域?可動域?が広がった。


「おいっちにーさんしー」


腕振り腕振り腕上げて


「掛け声はともかく、見た目と釣り合って無くはないな」


「割といいなら、予備もいくつか作ってみるよ」


「サンキュー真一。擦れないし足元も見えやすい」


「…どんだけ邪魔だったんだろね」


「知るかよ」


「オレとしては、今勃起してるのに正座を強要されるくらいじゃないかな?」


起立しながら座らされたる感じじじじじ。



「「わかりにくい」」


そか。


何はともあれ、扇子を取り出し喜びの舞。


「どうする。アツモリっポイ動きとか相当浮かれてんぞ」


「どうしよう。こんな影ちゃん始めてみた」


「黒田のパロディ舞の削り節のつもりだったんだけど…」


ダシはのまのま、のまならば〜

「どおりで床をゴリゴリすると」


「舞い散るのは紙吹雪じゃなくて削り節?」


「いいえ汗です(キリ」


だって夏だし。


「でも、結構蒸れるからダメかもしれない」


扇子で谷間に風送り。


「それは胸当てのせいじゃない」


「調子に乗って動きすぎだ」


二人とも、団扇でパタパタ扇いで下さるとか優しい。


仰げよ扇げよ。


「…部屋が汗臭くなるし」


「甘ったるくなるとかな…」


健さんが、パパパパパッ!と小気味良い音を立てて扇いでくれてるけど何か焼いてんすか?


「影丞がウナギに見えてきた」

「そりゃ髪は黒くてながいけど。ナマズかお玉尺子の間違いだとおもうよ?」


頭でっかとしりつぼみー。


「なるほど、食欲はなくなるな」


「…こっちって、ナマズいるかな?」


「ウナギもみないからな。居ないのか食べないだけなのか…」


「んじゃ、今度みんなで生態系調査しに行きますか?」


街から離れれば、川沿いの沼地やら結構あるらしいからね。


「帰りに影丞の不法投棄で大量虐殺。死の川の出来上がりか」


「それ言い始めたらもう下流には何もいないわ」


毎日脚を着けてるが、さすがに街の外まで影響ないとは思う。

てか、帰りに影丞の不法投棄って何。

乳母捨て山かなんかかよ。


密かに首に縄回した事はあるが、投身自殺までを図った事ないわ。


だいたい、魚が浮いたとか言う昔の農薬じゃあるまいし、普通の小魚やザリ系は居るんだから生態系壊すことなんかないよ。


「ここらの川の主ときたら魔物だろ?異世界だから、死滅してる可能性は否定してやるな」


「何、オレの責任? 」


「大丈夫、今は解らなくともいずれ歴史が証明してくれるさ」


真一は真一で、テロップロール流れそうなセリフ聞かせるのやめて?


「…魔物がいなくなりゃ、魚取り放題かもしれねぇしな」


「魔物って魚食べる?」


「魔物が食べなくても、楽に取りにいけんじゃねぇか」


「それもそうか」


なるほど納得。

漁とか釣り人の安全は高まる訳ね。


「普通の焼き魚も食べたいし、また湖のとこに行きたいね」


食べ慣れた色と味の奴ね。


湖か、ゴブリンはいるが魔物じゃないし、三四キロなら余裕で歩いて行ける距離ではあるよね。


これまた健達が解体する納屋から戴いてきた、良さげな釣り竿もあるし、オレは暇なんだし、一人で釣りしてきてもいいよな。


「影丞行きたそうなかおしてるけど、基本的に町に住む未成年者は、複数でないと街から出れないからな」


「ボク一回一人で行こうとしたら、入口で止められたんだよね。なんで正直な年齢はなしちゃったんだろ」


一人での外出禁止なのはゎ行方不明になるか発見が困難になるからだそうだまが、冬にならないとオレら成人しない状況ですし、めんどくさいですわね。



まあいいや。



「街の中で釣り出来る場所ないか探してみるよ」


溜め池や城門前の堀なんか狙い目だと思う。


「まあいいが、あんま目立つ事すんなよ」


「いや、目立つのは構わないけど、人気のない所にとかに行くのは絶対ダメだからね」



珍しく意見割れした??


「日本じゃないんだから治安それなりに悪いから、帰ってきたら街崩壊してたら嫌だし」


「ああ、嫌で済むレベルじゃないからな」


なるほど、二人が心配してるのは、不埒物に抵抗した挙げ句の失敗ではなく、不埒物に抵抗した挙げ句の余波で街に被害が出る事かよ。


ないわ。


「言われなくとも、変なとこまでいかないよっ!!」


娘様を危険にさらしてどうするよ。


「なんか、プリプリ怒り出したよ」


「なんか変な影響残ってんな…」


何の影響か知らんが、オレはそんな軽率じゃない。


危ない橋は見て怯え、転ばぬ先に座る。


叩きも杖もいらぬわ。

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