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大変な事に

どうやってかは知らないが、ギルドに“遊びほうけて暗い帰り道がおっかなくなったお馬鹿すぎるガキ共がいる”と連絡があったと受付のお姉さんに困り顔で告げられた。


―返す言葉もございません。


無事街へ帰還し、現在ポポタンの査定待ちである。


オレがギルドのトイレを借りてる間に、健は受付のお姉さんと二人で裏手にある解体所に行ってインベントリの中身をぶちまけて来たらしい。


ん、トイレ行きましたよ?

下水道完備らしく和式に近い水洗トイレだった。

女形アバ体に関してわざわざ特筆するような点はございませんでしたが、トイレに藁半紙みたいなちり紙が一つだけおいてあったのに助けられた…。


ブルブル振って終わるのって楽だったって話し。


まだ、こっちに来てからご飯食べてないから大の脅威に晒されていないけど、大をしたくなる前にトイレットペーパーになるものを買おう。


―手とか縄にこすりつけるとか無理過ぎる。


一日も24時間らしいし、タイプライターみたいな近代的な物や黒電話らしき通信機が存在しているらしいから、昔のファンタジー世界みたいに現代との文化の開きが極端ではないみたい。

藁半紙より上質な紙で、張り紙されるくらいには紙の製造技術が進んでいるらしいし。



ホールの片隅に時計の時刻が午後五時を指して、暗くなるのが早かっただけらしくまだまだ時間的には早い時間と言える。

解体所の方で、持ち込まれたポポタンのせいで、てんやわんやの大騒ぎをしているらしい。

ポポタンにおいて、過去に類を見ない量の持ち込みだったらしい。

健がインベントリを解放した瞬間に解体所そのものが“パンク”して、居合わせた受付のお姉さんが膝から崩れたなんて言いながら笑ってた。


あの草原にしても、河原みたいなもんで、野球場何個分かしかなかったんだから、いくら何でもそこまでは生えてなかったと思いたい。


「だいたい、そんな大きな音してないし?」


「いやマジで嘘じゃねぇって」


「それじゃ、一山いくらの単価にされちゃうんじゃないか?」


「ないない、全部量ってみせるって息巻いてたから大丈夫だって」


ごく稀に、こいつの何気ない一言が、相手のプライドを傷つけけたりする事あるんだけど、ギルドの人にふっかけておらんよな?


「いや、もしこの量を量るのが面倒なら、買い取れる分だけで構わないからって話はしたけどよ」


うん、軽くケンカ売ってる。

ギルドの人的に予想外の量だとしても、まだ常識の範囲内だったってとこかね。


「いや、あれは常識の限度はこえたんじゃないかな?」


真一まで…。


そんな誇らしげにしなくてもいいんじゃないかな?


土嚢袋みたいなズタ袋一個で三千行くのがやっととか言ってたんだから、そう大したことないんじゃないかな?


「あれは期待していいと思う」

作業になってたからそれなりの量はあったかも知れないけど、期待し過ぎると後でガッカリするんじゃないか?



《くきゅ~》


八時を回った受付ホール。


管楽器とも弦楽器とも判別つかぬ音が鳴り響く。


《キュルルルル…グゥ》


テーブルに額を当て、お腹を押さえたオレによる腹のソロ演奏会。


―羞恥で死にそう。


「さすがに腹減ったわ…おぉ?」


「なんで、こんなに時間かかんだろ―ね。ギルドのたいまんかなー?」


テーブルの差し向かいに座った二人も、机に伏して腹を抑えたり、真一が健にちょっかいだしたりと忙しい。


真一が、棒読みで話してるのは笑いをこらえてるからだと思われる。

《くきゅ…》


ちな、二人がオレほど切羽詰まってはいないのはポポタン採取中にドクダミを大量摂取していたからで、オレより早くに限界が来ていたから、フレッシュ感極まりないドクダミに手を出したのだと。


あー、ポポタンばかりじゃなくてドクダミも持ち帰ってくればよかった。


《くぅ~》


余計な事考えても考えてなくても反応すんな。


「…ぶはっ」


「ぐっ…げほ、気管にげほっ」


お腹がなる度に二人が笑いを押し殺したり吹き出したりしている。


笑うと余計に腹が減るからと言う理由らしいけど、もういろんな意味で限界だ。


「あのさ、お腹止めれない?」


「無理…」


この空腹は止められぬ。


「そこを何とかー」


「そう思うんなら、なんか食わせて…」


「そう言われたっても、食いもんなんか…」


「あ、硬くて太いのなら一本あるけど…」


「そういや、俺もメガフランクが一本あったわ…」


「ふふ、ボクはギガだけどね?」


「く、後から付け加えるのは汚ねーぞ」


「うるせぇよ、お前ら二人とも火星のアメリカンドッグだろが、てか下ネタ要らねえ」


人がいないとはいえ公共の場で、体に生えた一本を人身御供に何恥ずかしい口論言い初めてるんだよ。

元々はカワッカムリの癖に、アバ体になったら人外になりやがって、クソバカにもほどがあるわ。

「…堅いよ?」


「真一そのネタやめぇ」

お腹鳴るのって腸が動くせいだと思ったけど、何も食べてないのに、なんでそんなにお腹ばかり元気なの?


《くぅくぅ…くぅ~…》


ご飯食べたいのは解るけど、自己主張強すぎませんかアナタ?


「腹減った…」


「あ、おっぱいが《ゴッ》…イテェ」


「変な事言わない!」

健よ、自分の乳を吸えと申すか、乳牛じゃないんだから無茶いうな。



「牛乳でないし…」


「いや、もう少し動いたら乳出そう《ゴッ》イッテ!?」



「健はもう黙ってろー」

そんなやりとりを二人が気になり、テーブルに伏していた顔を上げると二人の顔はテーブルより尚低い位置にあったため表情をみる事ができなかった。

そういや、ファンタジーらしく魔法道具とかの照明のおかげでテーブルの下まで明るかった。

お腹に気を取られ、服装と体勢に頓着していなかったから二人の意識が胸元に集中していた可能性が高い。


確かにもう少しで乳がポロリと出る所まで来ていたよ。


チラリと覗き込むと、二人とバッチリ視線が合った。


「やっぱ、飯が優先だよな―」


「そうだよ、勘定まだかなー」


「…そか、なるほど」


マズいと思ったらしくこれ見よがしに話題を変えてきたが、俺は気にせず体勢を戻す。


覗き放題で羨ましいとは思ったが、流石に何も言わなくても大丈夫だ。


さっきまで男だった奴の乳見てコーフンするのか、否か、どっち?


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