邪神官となれ
先日に引き続き投稿
闇の中、白面は乾燥させた草を擂り鉢に投げ入れた。
―ごりごりごりごり。
擂り粉木で、多々ひたすら繊維を崩し長き時をへて粉末にしてゆく。
「…あれ、乾燥が足りてない?」
本来であれば、サラサラの粉末になるべく物が、汁っぽいダマができている草の残骸に首を傾げる。
摘みあげ、指で確かに粉々になっているのを確認すると、少量のポポ水を入れてから、再び擂り粉木を動かした。
独特の粘り気を帯び始めると、草の緑色は紫色が混じり始める。
「…てれってれー。塗り薬失敗したかも。」
仮面をとり、影丞は器の中身を木の皿に移す。
「ローブ着と仮面もつけたら、ほとんど失敗作になんのか…」
毒々しい半日の成果を積み上げ、影丞は作業の手を止める。
卵の仮面の効果ではない。薬師が少なく、本来は、効果の高いものが非常に難しいのだと本当の意味で理解できた。
件の回復機能は、回復薬を作る時に精製をサポートしているようで、漏れをカバーしてしまうと、オレ本来の腕前で作れる物にしかならないのだ。
「さぁ、困ったぞ」
スーパーのレジ袋ほどある産業廃棄物を瓶に詰め地面に埋める。
一応正式な処分の手順で、一週間くらい発酵させて色が濃くなると臭いが強くなり、農業の虫除けの薬の素材になるから売りに行ける。
毒々しいだけで毒ではないが、この薬メインで生計をたてるとは不可能。
今度は、仮面とローブをつけず、肌着とズボンだけで作業を始める。
「品質段違い」
高級塗り薬ができた。
「…ローブがあって何も出来ない状態が素なのか、も」
回復付与機能の恐るべき効能は、間接的に効果を与える事か。
「万能薬撒き散らし歩いてるようなもんだって、二人が言ってたもんねぇ」
それが、薬に混ざり等級の高い効果を作り出すわけだ。
薬師は薬。聖職者は聖水を作るのに、聖域とかの結界で外気を遮断してから作るらしいが、漏れ出す“氣”はお構いなしに機能向上。
―元気ですかー!?
因みに、魔力を帯びない草も育ちがよくなるから、宿屋の庭の雑草抜きはマメにやってる。
ほっとくと、盛大に繁茂してやがりますかからね。
ー元気ですかー!!?
〇気があればなんでも出来る!
いくどー!!
いちにのさんぱーい!
オレが原因で街中W大草原Wとか最悪でしかないわ。残骸を竈にいれて燃やすと煙凄いし、放置しても青臭い山ができるだけだし。
除草剤かなんかないのか。無いなら作ればいい。名案だ!
だがこのオレにそんな便利な知識などない!!
「…作れなくても、やってみる価値はあるかな?」
とりあえず、こっちの世界の有害物質でも集めて見るか?(物騒過ぎ)
海とかは、塩水で草育たなくなるんだから大量に撒いときゃ、雑草くらい生えなくなるかも?
試験的に、割と生えやすい通路脇に撒いといてみて、塩田とか出来たりダメなら止めよう。
手桶で足りるか?
―毎日塩水まいた結果―
中庭にパッションピンクな件の岩のり生えてきた。
海から持ち帰ってきたから塩だとしても、普通は生えないそうだ。
藻類にも影響がでるとか予想外過ぎた。
流石はオレ。前人未到のやらなくて良いことばかり能力が発揮される。
言うなれば、脇道のパイオニア。




