宅配です
出来る限りキルドを無視し、一般的に人通りが多い時間を歩く。
割と普通らしい生活をしていた。
そして、健と真一の“支度”が終わり、いよいよ海へ行けそうな気配になった頃。
商工ギルドから、ゴッツい強面が荷車引いてお届け物~。
火傷だらけの色ん意味でヤバい系の人にしかみえなくて、出迎え直後に健と交代して、そのままオレは奥に引っ込んだのだが、悪い人じゃなく、馬車に使われる鉄の部品を作る工房の親方で、テスト走行しながら届けてくれたんだそうだ。
健と真一が、リヤカーで驚かせようとしてたらしいんだが、運んできた人を見た瞬間の方が驚いたわ。
…で、リヤカーの方だけど、畳一枚よりちょっと長いくらいの屋根付きの街中で黒ニャンさんが引いてるようなアレに似てた。
内装はハンモックの二段ベッドで、風通しよくなるように、前後左右が開閉できて、カヤが張られ虫が入らないようになってた。
カヤというか、天蓋付ベッドのレースカーテンを流用したらしいんだけどね。
ハンモックの二段ベッドか、上で屁をコかれたら大惨事だなと思うが、海遊び中に寝泊まりするために、二人が発注してみたらしい。
余談になるが、お城に住むお姫様が天蓋付ベッドになるのは、石造りのお城だと、天井から石や欠片が落ちてきたりする可能性があるから頑丈な作りになってるそうだ。
勿論このリヤカーの屋根や壁の板は薄く、そこまでの強度はないです。
因みに、なんで馬車にしかったかは、馬の世話が面倒くさそうだから馬車と言う選択肢は最初から浮かばなかったそうだ。
実際、大変だろうしな。
リヤカーの中身が、がらんどうだから軽いらしいけど、案の定オレには無理な重さだった。
まぁ、“馬なみ”なのが二匹いるからそこらは任せればいい。
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リヤカーに引かれていざうみだーと三人で、ハシャぎまわった直後の事です。
「真っ白で何もみえない」
「「…………」」
石を拾ったなげたら、視界が霧に包まれました。
なんと言うか、石を投げたら手元から赤い光が生じて海が割れたと思いきや、衝撃波と共に霧が発生。
ー遠距離カンスト。
「山の天気は変わりやすいと言ってたけど、海もそうなんだね…」
「…いまのは影丞だよね」
「海の中ならまだしも、浜辺で遭難とか…」
二人とも目に見えてガッカリしてる。
正直済まんとしか言いようがない。
あれだ、前に大工の真似して投げた釘は、板に届くより先に蒸発とか消滅してたっぽい。
レールガンみたいな光の筋とか延びて衝撃波発生するとか、まさか音速超えてるんだろうか?
「影丞、これから遠投禁止な…」
「不本意ながら了解」
必殺技が在ることは分かったけど、手元と言うか陸に向かって投げてたらこの辺り一面どうなってた事やら…。とりあえず、160キロの壁は超えた。
音速も超えたっぽいから、もう弓もいらないよな空も浮けるし、これはもう“人”の成せる諸行じゃねぇ。
なんだかんだ言って、このアバ体謎仕様のままだ…。
いつかになれば、わかるかもしんないけど。そこはやっぱり、冒険しなきゃ無理なのだろか。
…こう座ってる時なんかに、“謎は全て溶けたっ!?”って感じで、突然閃いたりしないかな。
無理か。
とりあえず、周りは霧で遮蔽されてるけど、物理の遮蔽物がないから、デカい岩があった方に緊急避難。
「まぁなんだ。影丞が一番非常識だったんだが…」
リヤカーはインベントリに仕舞われた。
いや、使おうかと思ったけど見渡す限り霧だらけだから、ない方がマシな気がしたから使わない事にした。
日が落ちる頃に、霧は薄くなってきたけど、服が濡れて肌寒くなってきたので、インベントリから薪を出して火をおこし、交代で火の番人。
「…まさかの、まさかの大冒険」
「マジワロス」
三人で、アクシデントをネタにして笑いながら洞窟待機中だ。
夕方でも、霧がきえてくれなかったけど、二人が怒らなくて助かった。
夕飯は、パンと干し肉。
すいません。海に来たにもかかわらず収穫が0です。
本当にご迷惑をお掛けしております。
でも、今ならゴ〇ラ以外になら勝てる気がしてきた。ゴ〇ラには、メーサー砲も通じないから多分むりだけど、でも、ドラゴンなら音速超えてたらやれんじゃないかななんて甘いだろうか。
それ以前に、まだ健の芋虫以外の殺しはした時無いんだが…。
なんで、健は普通にあの芋虫を殺れてたんだ?
まぁ、二人は木こりをしてる時なんかに魔物撃退してるらしいから、それこそ今更な話かも知れないけどね…。




